前編に続き、みんな電力の取り組みについて、パーソナル事業部 個人営業チームの髙橋智里さんと社長室 広報チームの中村麻季さんに「ethica」編集長・大谷賢太郎がお話をうかがいました。
それぞれの企業スタンス、それぞれの立場での意見
大谷: 今のところでいうと、私たちも脱炭素社会についてのいろいろな取材が増えていて、それぞれの企業さんのスタンスをお聞きしているんです。この春くらいから新聞でも数々の記事が盛んに出ていて、それぞれの立場での意見があるんですよ。
CO2の削減は世界的に加速していて、菅総理も2050年に向けて発信して日本国内で脱炭素社会を実現しようとして動いています。その中で再生可能エネルギーと呼ばれる、いわゆる風力や太陽光、地熱とか、あとは、例えばユーグレナさんがそうだと思うんですけど、バイオマス燃料みたいなものが僕の中では再生可能エネルギーという解釈になっています。
今触れた中でいいますと、カーボンオフセットとか、今ならカーボンニュートラルというのは、まさに二酸化炭素なので、二酸化炭素の排出の相殺を含めてゼロにしていきましょうよ、排出した分は、どこかでちゃんと埋め合わせをしましょうよということ、そして、クリーンエネルギーということでいうと、原発というのも二酸化炭素という意味では、出さないという見方もありますし、逆に、それはそれで放射能の問題とか、そっちの方はどうなんだろうということもあって、それぞれの立場で見解が異なっています。そこで、御社のスタンスをぜひ聞かせていただきたいです。
中村: 「ethica」さんの読者さんだと、最近、再生可能エネルギーのことが気になってはいるけど、どうしたらいいのかよくわからないという方が多いと思うんですけど、そういう方たちにまずお伝えしたいのは、簡単に会社を変えて電力を切り替えることができるよということと、各社の電源構成と呼ばれる、どういう電気を調達しているのかという根幹、その会社の理念が宿るようなものがあるので、ぜひそれをチェックしてみてくださいとお伝えしたいなと思っています。
例えば、今、髙橋が話していましたけど、ここの割合が本当に再生可能エネルギー、太陽光や風力などで発電している電気が、弊社ですと約8割仕入れています。
FIT(フィット)制度は、再生可能エネルギーの導入を進めるために、再生可能エネルギーで発電した電気の買い取り価格を国民が補填するという電気になります。厳密に証書をあてたりとか、そういったルールがあるんですけど、ここが本当にどういう割合になっているのかというのは、気になっている電力会社があれば、ぜひ一度チェックしてみてくださいというのは、私たちが意識して、きちんといっていくべきかなと思っています。
髙橋: お客様から聞く声として多いのは、地球にやさしい電気だと思って選んだのに、知識が増えてきてよくよく調べたら、電源構成の2割しか再生可能エネルギー由来の電気が含まれていないんだけど、非化石証書をあてて実質的な再生可能エネルギーと謳っていた。火力発電を応援したいわけではなかったのに、そこが変わっていなくて残念といった声をよく聞きます。お金の落としどころを再生可能エネルギーの発電所の発展みたいなところにフォーカスしたいのだったら、やっぱり電源はちゃんと確認したほうがいいですよというお勧めはしたいですね。
大谷: オーガニックコスメだと思って買ったら、全然オーガニックじゃなかったなんてこともありますもんね。
髙橋: 確かにそれとよく似ていますね。
中村: そういう意味でいうと、一歩踏み込んで調べてみることを面白がっていただくというのもいいなと思います。
「FIT電気」と「再エネ」に違いはあるの?
大谷: このFIT電気と再エネと分かれているんですけど、それぞれについて、こういうものだよと教えていただくと嬉しいのですが。
髙橋: 発電方法は一緒です。例えば、先ほどお見せした千葉県市原市のソーラーシェアリングも、発電所を作ると最初は国が一定の金額で電気を買ってくれるんですよ。その時期はFIT電気といいます。その国の買い取り期間が終わると再生可能エネルギーと呼ぶという、その違いですね。
大谷: なるほど。そういうことですね。
髙橋: それで、このFIT電気については、CO2ゼロっていってはいけないんですよ。
大谷: それはなぜですか?
髙橋: 国民も買取価格を負担していることにはなるので、その分、非化石証書をあててカーボンオフセットしなくてはいけないという、ちょっとわかりずらいと思うんですけど、そういうルールがあって、FITを卒業して再エネになった時は、晴れて再エネ単体でCO2ゼロといえるんです。この辺は国の制度との絡みがあるんですけど、発電も電気も一緒です。
中村: 国が再エネを普及させたいということで始めた制度に紐づいている発電ということですね。
大谷: 発電所ができてから何年間ぐらいがFIT電気の期間なんですか?
中村: 家庭用が10年で、事業用が20年ですね。FIT制度が始まったのは2012年なので。今、世の中で再エネといっているのはFIT電気がほとんどですね。
今、私たちが仕入れている中では、発電所の数としては太陽光が一番多くて、電気の量としては発電量が大きいので風力ということになりますね。
大谷: それ以外の地熱やバイオマスなど再エネで括られるその他諸々に関しては、どのくらいの割合なんでしょうか?
中村: みんな電力全体の電気の仕入れでいいますと、19年度の実績でFIT6割、再エネが太陽光、風力、水力で2割、地熱は今年の秋くらいから徐々にFIT電気としての買い取りが始まる予定です。
バイオマスの種類
大谷: バイオマスにもいろいろと種類があると思うのですが?
中村: 弊社の場合は群馬県の川場村というところで、その地域には森林という財があるので、それを使って何かできないかというプロジェクトの一環で発電というのがあるんですよ。間伐材を利用してバイオマス発電をするというものですね。
ただ、一概にバイオマス発電といっても、海外から森林破壊をして仕入れたものだと循環という意味では課題があるよねという中で、弊社としては森林を生かして地域に貢献したいと思っています。
髙橋: 弊社は価格で競争したいとは全然思っていなくて、きちんと自分のお金をこうした再生可能エネルギーに支払いたいという方が選んでくださる会社ですね。いかに安く、1円でも安くという売り出し方をしている会社もあるとは思うんですけど、弊社は価格ではなく、電気料金の透明性や契約発電所の魅力などを価値としていきたいと考えています。
大谷: その他の19.6%というのは、どんな電力なんでしょうか?
髙橋: ここに関しては、電気というのはその日によって使用量が変わりますので、予測した量よりも足りない分を市場から仕入れているその分なので、インバランスです。ですから、その分は全てが混ざっているというか、判別ができない電気ということになります。
大谷: ということは、再生可能ではないものも含まれているということですか?
髙橋: ええ、そうです。
中村: 前日に予測値を立てるんですけど、どうしても次の日にどのくらい太陽が照るかによって100%合わすことができずに最後の調整をしている分が、だいたいこれぐらい入ってくるということです。再生可能エネルギーは気象条件に影響されるので、どうしても2割程度はインバランス分が発生してしまうんです。
大谷: 仕入れ件数でいうと、太陽光が一番ということでしたが、個人の方が電気を作る際に一番入りやすいのは、やはり太陽光ですか?
髙橋: ええ、そうですね。
大谷: 風力とかバイオマスを個人で取り組んでいらっしゃる農家の方もいらっしゃるんでしょうか?
中村: 確かに風力ともなりますと設備が大掛かりになりますので、個人では難しいかもしれないですね。個人で意志を持ってやるとなると、やはり太陽光がオーソドックスですね。
大谷: 例えば、ある地域で太陽光の発電がうまくいっているということで、その地域で発電所が次々に建っていったということもあるんですか?
髙橋: それでいくと、先ほど申し上げた千葉は、たぶんメッカだと思います。
中村: 千葉県の匝瑳市なんかだと、ここは耕作放棄地などでいろいろな農家さんがソーラーシェアリングをしていて、見渡すと結構な数のソーラーシェアリングが建っているなという地域がありますね。
全国各地から発電所見学に来くるケースも
大谷: 契約の流れですが、各地の農家さんから、うちも始めてみたいといった感じで、まずは問い合わせが入って、じゃあ、建てるのをお手伝いしましょうとか、そういった流れになっているんでしょうか?
中村: はい、発電事業者様のサポートも行っていますし、気になった方は直接発電所の方に聞きに行くケースもあります。昨日取材した上総鶴舞にも全国各地から見学が来て、20件以上も発電をやる人が増えたというふうにおっしゃっていたので、直接、発電事業者様同士でつながっているみたいです。
あとは、その地域の大学と連携して研究したりもしているので、そういう形で増えているのではないかと思っています。
大谷: なるほど。ここ数年で広がってきたという感触はありますか?
髙橋: 2011年以来、再エネ由来の電源の発電量は年々増えています。再生可能エネルギーの発電所は増えていますね。
(後編に続く)
髙橋智里 みんな電力 事業本部パーソナル事業部 個人営業チーム チームリーダー
秋田県秋田市出身。2019年7月みんな電力入社。個人のお客さま向けのWEBプロモーションを担当。みんでんカレー部・ねこ部に所属
中村麻季 みんな電力 社長室 広報チーム マネージャー
愛知県豊橋市出身。トヨタ系自動車部品メーカーでCSR活動の企画推進、企業広報を経験。2020年に2人目の広報としてみんな電力に入社。主に広報戦略の立案、メディアリレーション・プロモート、クライシス・コミュニケーションを担当。
聞き手:ethica編集長 大谷賢太郎
あらゆる業種の大手企業に対するマーケティングやデジタルの相談業務を数多く経験後、2012年12月に『一見さんお断り』をモットーとする、クリエイティブ・エージェンシー「株式会社トランスメディア」を創業。2013年9月に投資育成事業として、webマガジン「ethica(エシカ)」をグランドオープン。2017年1月に業務拡大に伴いデジタル・エージェンシー「株式会社トランスメディア・デジタル」を創業。2018年6月に文化事業・映像事業を目的に3社目となる「株式会社トランスメディア・クリエイターズ」を創業。
創業9期目に入り「BRAND STUDIO」事業を牽引、webマガジン『ethica(エシカ)』の運営ノウハウとアセットを軸に、webマガジンの立ち上げや運営支援など、企業の課題解決を図る統合マーケティングサービスを展開。
私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp