私がネパールを訪れたプログラムは、現地のネパール人学生と行動を共にするものでした。「トイレ以外はずっと一緒」と言っても過言ではないほど、べったりとネパール人学生と関わっていたのですが、実はトイレ以外にも彼らが「一人の時間を大切にする瞬間」がありました。
「電話」です。ネパールの人はとにかく、一日に何度も電話します。家族はもちろん、仲の良い友人とも頻繁に電話で話していました。
時には電波の届きづらい地域にも行きましたが、そこでも熱心にアンテナを探しては電話していたのが印象的です。
一方、日本人の使節団は、私の知る限り、二週間で一度か二度程度です。もちろん皆、LINEで家族や友人、恋人と連絡は取っていますが、電話はほとんどしていません。
見知らぬ外国の土地で、家族や友人との連絡をテキストで済ませる日本人。
実家から数キロの場所でも、家族や友人と電話で互いの声を聞くネパール人。
最初こそ、「ネパール人は電話が好きなんだな」などと単純に思っていましたが、ある学生にそのことを聞いてみると、実はそうではないようなのです。その学生は電話をする理由を次のように語りました。
「ネパールの人は電話が好きなんじゃなくて、返信が待てなくて電話しちゃうのよ。相手もそれで良いし、家族や友人からの電話に少しも出られない時なんてあんまりないでしょ。」
つまり、電話で相手の声を聞くことが重要なのではなく、電話をかけること自体が相手を気使っているというメッセージなのです。
思わず、ハッとしました。電話をかけないことは相手のスケジュールに気を使ってのことでしたが、むしろそれは相手を気使っていないというメッセージを与えてしまってはいないか、と。ましてや、「お互い都合の良い時」など、時差のある国同士では到底見つかりません。
もちろんその夜、私は日本の友人に電話しました。「突然どうした」という声は、心なしか嬉しそうだったことを覚えています。