子供の頃、夏のプールサイドや家のお風呂場で、誤ってハチを踏んでしまい、よく足の裏を刺されたものです。ビリっと痺れるようなあの痛さは、注射針なんか比べものにならないくらい強烈で、2、3日は腫れがひかず、ずきんずきんと脈打つような痛みが続いて夜も眠れなかったことを覚えています。
夏から秋にかけては、ミツバチたちの活動がピークになる時期。都会では目にすることが少なくなりましたが、ここ八ヶ岳にはまだまだミツバチが飛び回る豊かなフィールドがあちこちにあります。お隣の長野県富士見にある富士見高等学校には、創部12年の養蜂部があって、地域のみなさんと一緒にミツバチの保護活動を行なっているそうですよ。
ヒマワリやクチナシ、ラベンダーやエキナセアといった季節の花を次々と訪れ、おしべを抱えながらクシュクシュと蜜を吸うミツバチの姿を目にすると、ホッと心が癒されます。
ハチと聞くだけで「怖い」「刺されたくない」と敬遠する人も多いようですが、ハチの中でもミツバチは性格がおとなしく、こちらが危害を加えない限り襲ってくることはないと言われています。
ミツバチの針には、ノコギリの刃のような「逆棘(かえり)」がついていて、一度刺すと針が抜けないため、刺したミツバチも腹部がちぎれて死んでしまいます。昔から「ハチのひと刺し」とよく言われますが、一度刺さしたら死んでしまうのは、ハチの中でもミツバチだけなのだそう。
また、ミツバチは他の昆虫や動物と違って“生き物”を食べません。花の蜜と花粉を食べて生きています。花の蜜の糖度は、一般的には5〜15%ほどですが、ミツバチはその花の糖度を80%ほどに濃縮して巣の中に保存します。
いまだに謎の多いミツバチの生態ですが、ミツバチのコミュニケーションの方法を、40年以上かけて究明したオーストラリアの動物学者、カール・フォン・フリッシュ(1886-1982)は、『ミツバチのダンス研究』という著書によりノーベル医学生理学賞を受賞。ダンスによって花と蜜のありかを仲間に伝えていることを突き止め、世界初の新発見として話題になりました。
さらに、もうひとつはっきりとわかっていることは、ミツバチは私たちが大好きな果物や野菜、ナッツなどの生産にとても重要な役割を果たしているということ。私たちが毎日のように口にする約100種類の作物のうち、70種以上がミツバチの受粉に支えられているというデータ(2011年・国連環境計画報告書)もあります。あのアインシュタインが「ミツバチが絶滅したら、4年後には人類も滅びる」という言葉を残したほど、地球の環境保全に欠かせない存在なのです。