日本では、プロが料理を作っていく様子を目の前で観察することはなかなかありません。レストランでは、注文をして待っていれば勝手に完成した料理が運ばれてくる。素材が元々どんな形をしていたのか、どうやって味付けされ、どうやってお皿に盛られたのか、私たちには知る由もありません。
もちろんそれで良いという人もいるでしょう。ところが私には、これがある種、産業化の病であるような気がしています。つまり料理だけはなく、私たちは、生活の中で物事がどのように変化し、今の形になるのかを見えないでいるのです。過程を省き、結果だけを得ることに私たちはあまりに慣れてしまっていますが、私たちの人生は決して過程をすっ飛ばすことは出来ません。さまざまな現象を知覚し、感情を抱くことで、私たちは今この場所まで生きてきたはずです。
物事の過程を見るということは、結果に対して適切な評価を下せることです。今この場所から今の自分を見ることは出来ません。常に、過去の自分から今の自分を眺めることが、自分というものを正しく捉える方法だと私は思います。
今の自分にとってウェルビーイングとは何か。何に幸せを感じるのかは、自分が何に幸せを感じてきたのかを見つめ直すところから始まります。あなたはこれまでどのように生きてきて、そして今どのように生きたいと思っていますか?過程をひとつひとつ拾い上げて観察することで、何か見えてくるものがあるかもしれません。