初日の夕食で出てきたのが、ダルバートカレー。ダルとは豆をつぶしたスープのことで、バートとはライスです。一つの皿にライスといくつかの野菜、ダル、カレーが乗ったプレート料理です。食べるときは全てかき混ぜて食べるらしく、スープもカレーも全て米と絡めて食べます。カレーに強い香りがついているので、ダル自体の味付けは薄め。日本のインド・ネパール料理店のようなカレーを想像していた私は、その全く新しいカレー料理に舌鼓を打ちました。
そして翌朝、朝食として出てきたのはダルバートカレー。やっぱりかと思いつつ、まだ2食目ですから飽きる気配はありません。昼食もやっぱりダルバートカレー。プレートに乗っている野菜のバリエーションは少し違いますが、基本的には同じです。もちろん夕食もダルバートカレー。その日はカレーの中に骨付きチキンが入っていました。それでもカレーはカレーです。3日くらいは何の問題もなく行けるかと思っていましたが、それは「カレーパン」や「カレーうどん」のように料理にもバリエーションがあると踏んでいたからでした。ところがこうも4食連続ダルバートカレーとなると、話は別です。ひとまず翌朝に期待しようと思い、その日のダルバートカレーも平らげました(味はとても美味しい)。
迎えた翌朝出てきたのは、ダルバートカレー、ではなく小麦粉の生地を焼いたナンのようなもの。救われたと思ったと同時に、そう思ってしまった自分はカレーとの戦いに敗れたのだと悟りました。その生地の甘味を嚙みしめながら、幼心に抱いた毎日カレーの幻想の愚鈍さをひしひしと感じました。と、同時に私は気づきます。たとえ私がカレーとの戦いに負けたとしても、旅は続くのだということに。つまりそれでもカレーはこれから毎日出てくるのです。