一度おばあちゃんに聞いたことがあります。どうして勝手にお皿に料理を盛るのか、という不躾な質問でしたが、おばあちゃんによれば「それはゲストの人がお腹いっぱいなって欲しいからに決まってるじゃないか」とのこと。それでも私が「おかわりしたい人が自分で申告すればいいのでは?」と食い下がると、おばあちゃんは一息置いてからこう言うのです。
「ゲストの中には気を遣っておかわりをしない人がいる。でも、こっちはお腹いっぱいになって欲しくて料理を出してるからね。皆が確実にたらふく食べられるように、ストップって言われるまで勝手に盛り続けるんだよ。それで満足してくれれば、私も嬉しいし、ゲストも幸せでしょ。」
なるほど、あの強引に見える盛り方もゲストとホストの双方の幸せを考えた結果なのです。言われてみれば、もし少量の食事しか皿に盛られなければ私はおかわりをしなかったかもしれません。村が自給自足なのを知っていたし、カバンにはスナックが入っていたので、お腹いっぱいにならなくても良いと考えたかもしれません。ところがそれはある意味で独りよがりな意見です。勝手に気を遣ってする善意が、実は相手を不安にしてしまうこともあります。ゲストにお腹いっぱいになってほしいし、私もお腹いっぱい食べたい。その双方の願いのために、あの一連の行為が繰り返されているのです。
それを聞いてからは私の食欲にも火がついて、もりもり食べました。横から見ればお腹が出っ張って見えるほどにネパール料理を堪能し、毎回満たされた気持ちになりながら、おばあちゃんも今きっと幸せだろうなと思うのです。