(第23話)さつまいも掘りと、娘の「ありがとう」【連載】かぞくの栞(しおり) 暮らしのなかで大切にしたい家族とwell-being
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(第23話)さつまいも掘りと、娘の「ありがとう」【連載】かぞくの栞(しおり)

心身ともに健康で、社会的にも満たされた状態であることを意味する「well-being」。

一人ひとりがwell-beingであることが、社会や環境をより良くしていくことにつながるのだと思います。

では、「私にとって良い状態」ってどういうものなんだろう?

そのヒントは、意外と何気ない日常の中に散りばめられているのかもしれません。

新しく何かを始めるのも大切だけど、まずは身近な人や自分が「ごきげん」でいることから。

家族と過ごすなかで感じる、そんな一瞬一瞬を切り取って、綴っていけたらと思います。

おいもさん、まいにちいっぱいたべたいなー!

娘は(私も)大のさつまいも好き。

焼き芋をしたら2本くらいはぺろりと食べる勢いで、さつまいもごはんや干し芋など、お芋メインのごはんやおやつを出した日には「わーい、だいすきなやつやー!」と大喜びです。

 

そんなさつまいもが旬な、この季節。

 

「おいもさん、まいにちいっぱいたべたいなー!」という娘の願いを叶えるべく(!?)、またせっかくなら、大好きな食べものがどうやって作られているか知ってほしいという母の思いも重なり、近所の観光農園へお芋掘り体験に行ってきました。

車で20分くらいのところにあるその農園。団体さんもたくさん来られるそうで、広大な畑に、さつまいもがのびのびと気持ちよさそうにツルを伸ばしています。

 

周辺には田んぼが広がり、重たそうに頭をたれた黄金色の稲の上を風がさらさら通り抜けていく景色に、心が洗われるような気持ちに。近所にもまだまだこんな景色があるんだなぁと嬉しくなります。

 

今年は梅雨の時期にしっかり雨が降ったため、例年なら一株あたりの収穫が3本くらいのところ、なんと5〜6本と大豊作だとか!

農園のおじさんがツルを刈り取って収穫の準備を整えてくれ、いざ、娘と持参したスコップで、お芋を傷つけないようにそっと掘り進めます。

 

フカフカの土は手でもすんなりと掘ることができ、気がつけば娘は靴を脱ぎ捨て、全身砂まみれになりながら、お砂遊びをするかのように黙々と芋掘りに熱中。

最後は「うんとこしょ、どっこいしょ!」お気に入りの絵本に出てくるセリフを口ずさみ、力を込めて引っ張ると、すぽん!

 

「やったぁー!!」

 

掘れたての鮮やかな赤紫色のさつまいもを両手に抱え、顔いっぱいに笑みが広がります。

 

その後も同じ調子で次々に引っこ抜き、最終的に2株の苗から大小12本のさつまいもを収穫することができました。

帰り際、農園のおじさんに挨拶をして車に向かおうとすると、ふと足を止める娘。

どうしたん? と聞くと「娘ちゃんは、まだありがとうって、いってないねん」。

 

(そういえば私の隣で黙って手を握っていただけだっけ……)。

 

じゃあ言いにいこっか! と急いで引き返し、「お。どうしたんや?」とまた笑顔で迎えてくれたおじさんを前に、娘は呟くような小さな声で「ありがとうございました」と伝えました。

 

普段、人見知りもあって人に何かもらった時など固まることが多く、お礼はこちらから何気なく促すことがほとんどだった娘。

 

だからこそ今回、娘が自分から感謝の気持ちを伝えたい、と思いを言葉にしたことは、私にとっては驚きで。

いつも食べている大好きなさつまいも。そのさつまいもを育ててくれている人がいるということが娘のなかでつながり、自然とおじさんへの感謝の気持ちが生まれたのかなぁと思わずにはいられない瞬間だったのでした。

収穫したさつまいもは、乾かしてから1〜2ヶ月ほど寝かせると水分が抜けてとっても甘く美味しくなるそうで。早く食べたい気持ちを抑えて、竹ザルに広げたさつまいもを日々見守っています。

 

旬の食べものが豊富で爽やかな気候が過ごしやすく、自然と足が外に向くこの季節。

 

家族でのお出かけの時間を、日々の食とのつながり、自然とのつながりを感じる機会として過ごしていけたらいいな。

あらためてそんなことを感じた一日だったのでした。

今回の連載は如何でしたでしょうか。バックナンバーはこちらからご覧頂けます。

【連載】かぞくの栞(しおり)

季子(キコ)

一児の母親。高校生のころ「食べたもので体はできている」という言葉と出会い食生活を見直したことで、長い付き合いだったアトピーが大きく改善。その体験をきっかけに食を取り巻く問題へと関心が広がり、大学では環境社会学を専攻する。

産後一年間の育休を経て職場復帰。あわただしい日々のなかでも気軽に取り入れられる、私にとっても家族にとっても、地球にとっても無理のない「いい塩梅」な生き方を模索中。

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

季子(キコ)

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