読者対話型連載「あなたにとってウェルビーイングとは何か」 第5章:フリータイムの哲学編(第4節)
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読者対話型連載「あなたにとってウェルビーイングとは何か」 第5章:フリータイムの哲学編(第4節)

旧南ベトナム大統領官邸にて

新企画「あなたにとってウェルビーイングとは何か」を担当します永島郁哉と申します。早稲田大学で社会学を学びながら、休日には古着屋に行ったり小説を書いたりします。

この連載は、ストレス社会に生きる私たちが、ふと立ち止まって「豊かさ」について考えるきっかけとなる、ささいな休憩所のようなものです。皆さんと一緒に、当たり前だと思っていた価値観を一つ一つほどいていく作業が出来たらと思います。

第5章は「フリータイムの哲学」と題して、全5節にわたりお送りします。東南アジア各国それぞれに、フリータイムをめぐる哲学があります。それらを基に、皆さんと共にウェルビーイングについて考えていけたらと思います。

第5章 フリータイムの哲学

第4節 日常性の写真

年末になり、今年を振り返ることが増えてきました。「今年はあれをやったなぁ」とか、「あれって今年だっけ?」などと写真フォルダを眺めるのが楽しい季節です。

私は写真アプリのハイライトを見るのが癖ですが、この間それを見ていてあることに気付きました。やたらとベトナムやネパールの写真が多いな、と。まあ、海外という非日常ですから写真をたくさん撮るのは当たり前なのですが、それにしてもヨーロッパに半年いたときよりも、ベトナムやネパールでの2週間の滞在の方が、圧倒的に写真量が多いのです。

そうなると他の理由があるに違いない。そう思って色々と写真を眺めるうちに、自分の中で完全に忘れていたことを思い出しました。ほとんどの写真は私が自発的に撮ったものではないのです。誰かから送られてきた写真を保存しているだけでした。では、誰から送られてきたのか。それは現地で交流した学生たちです。

ベトナムのストリートを飾る傘のアーケード

今思い返すと、彼らは(誇張抜きに)四六時中スマホで写真を撮っていました。グループ写真なんかはもちろんのこと、ただ誰かが並んで歩いている様や、ご飯をほおばる姿を撮ることも多かったと思います。なぜそんなに写真を撮るのか疑問に思った私は、それを聞いたことがありますが、答えは「思い出に残るから」というシンプルなものだった気がします。

思い出に残るとは言っても、そんなにランダムに撮った写真が本当に「思い出」として後で見返すものになるかな、と当時は思っていました。ところが、今ならわかります。こうして年末になり写真フォルダを見返す度、あの時の光景が解像度の高い形で思い出されるのです。記憶というのは、カメラに向かって身構えたときだけに生成されるものではありません。その前後に膨大な日常の連続があって、実はその瞬間を追体験することこそノスタルジック感情を呼び起こしたりするのです。

彼らが送ってきた写真はそういう「日常」を切り取ったものでした。暇を見つけては写真を撮るというのは意識しないとなかなかできませんが、彼らはそれをとても自然にやっていました。しかも、撮った写真を決して自分だけのものにせず、他人と共有するのです(だからこそ、私の写真フォルダにはそういう写真がいっぱいあった)。もはや、「写真」と「思い出」の価値をつなげる“プロ集団”のようです。

川辺での休憩時間

私が連載を通して、アジア各国で見てきた価値観をこうして共有できるのも、彼らのおかげです。写真を見返す度、あの日常がよみがえり、そしてそこに内在する価値観がフワッと現れてきます。私はそれを丁寧に描写することで、こうして読者との交流を続けています。そう考えると、自分が今抱える価値観や考えを未来の自分に、あるいは自分以外の誰かに伝えるために、「日常性の写真」を撮ろうかなと思ってきます。何年後かに、私が今見る景色を誰かが追体験することで、そこにある価値観に“価値”を見いだしてくれれば、それほど嬉しいことはありません。

たくさんの写真を送ってくれた彼らに感謝してもしきれません。今度はこれを読む読者の方も、「自分と世界の付き合い方」を写した写真を撮ってみるのはいかがでしょうか。

小学校でのアクティビティ後に下校を見守る

今回の連載は如何でしたでしょうか。バックナンバーはこちらからご覧頂けます。

[読者対話型連載]あなたにとってウェルビーイングとは何か

永島郁哉

1998年生まれ。早稲田大学で社会学を学ぶ傍ら、国際学生交流活動に携わる。2019年に公益財団法人イオン環境財団主催「アジア学生交流環境フォーラム ASEP2019」に参加し、アジア10カ国の学生と環境問題に取り組んだ他、一般社団法人アジア教育交流研究機構(AAEE)では学生スーパーバイザーを務め、ベトナムやネパールでの国際交流プログラム企画・運営を行っている。2019年9月より6か月間ドイツ・ベルリン大学に留学。

——Backstage from “ethica”——

今回の連載は、読者対話型の連載企画となります。

連載の読者と、執筆者の永島さんがオンラインオフ会(ZOOM)で対話をし、次の連載の話題や企画につなげ、さらにその連載を読んだ方が、オンラインオフ会に参加する。

という形で、読者との交流の場に育てていければと思います。

ご興味のある方は、ethica編集部の公式Facebookのメッセージから、ご応募ください。

https://www.facebook.com/ethica.jp

抽選の上、次回のオンラインオフ会への参加案内を致します。

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

ethica編集部

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