今回の連載では、ライフスタイル全体にわたって、持続可能性についての行動喚起や意識改革につながるビジュアルについて考えてきました。最終回では、今までご紹介してきたポイントのおさらいをしたいと思います。
人間目線の身近なサステナビリティがビジュアル化されているでしょうか?
植物持つ手、煙突から出る煙、シロクマなどといった、お決まりの表現を日々よく目にします。このようなビジュアルを見る際、私たちは環境問題を連想はしますが、これらは人間と関係のない、抽象的なものとしか映らない可能性が大きいです。 本当に環境のことを考えて、行動喚起につなげるためには、もっと消費者の心に響く表現が必要です。例えば、家庭菜園や、家にソーラーパネルの設置を行ったり、自分で袋や容器を持参して日用品の買い物をしたりなど、身近な持続可能な努力が描写されているでしょうか?
環境に変化をもたらす解決策がビジュアル化されているでしょうか?
代替肉の開発、水耕栽培、電力や水力を節約するエコフレンドリーなデザインの建物、再生可能エネルギーを活用する生産の現場などを実際に消費者が目にすることにより、行動喚起につながると言えます。
持続可能な社会の実現に向けた最新テクノロジーの普及がビジュアル化されているでしょうか?
例えば、テクノロジーを利用して電力や水力等を節約するスマートホーム、太陽光発電、風力発電など、新しいゼロエミッションに関するイノベーションが実生活にどのように溶け込んでいるか、誰もがその使用方法やメリットを簡単に想像できるように描写されていることも大切です。
自国や地元のコミュニティの支援を後押しするビジュアルでしょうか?
コロナ禍で、日本の大多数の消費者が、地域社会を支援する方法として、なるべく地元の小規模企業から購入したいと回答しました。 地元で買って、消費すれば二酸化炭素排出量の削減にも有効です。
サーキュラーエコノミー(循環系経済)がビジュアル化されているでしょうか?
「Take(資源を採掘し)」「Make(製品を作り)」「Waste(捨てる)」という従来の経済システムのなかで「廃棄」されていた製品や原材料などを「資源」と捉え、廃棄物を出すことなく循環させる、サーキュラーエコノミーがビジュアル化されているでしょうか?
サステナブルで倫理的なビジネスがビジュアル化されているでしょうか?
社会や環境に配慮した倫理的かつ責任ある方法によって原材料を調達し、製品が製造され、消費者の元に渡っているのかがビジュアル化されているでしょうか?製品やサービスが、労働者の福利厚生に考慮した環境で生産されていることが描かれているでしょうか?
コミュニティを内側から支えている人たちの活動がビジュアル化されているでしょうか?
例えば、公園や海岸のゴミ拾い、フードバンク、募金活動、芸術活動やスポーツの指導など、人々が自分たちのスキルや、時間をどのように提供しているのか考えてみましょう。
多様な人々の心の豊かさがビジュアル化されているでしょうか?
様々な人種、年齢、体型、セクシュアリティ、ジェンダーアイデンティティ、宗教、能力、社会経済的グループの人々の生活が反映されているでしょうか? コロナ禍 において、消費者は、心の健康を表現するビジュアルに反応することがGetty Imagesの調査でもわかっています。これから先、誠実さ、優しさ、安心、平和、といった価値観をビジュアルで示すことが重要になってきます。
国や企業だけでなく、我々消費者がどのような行動をとっていくか、今後10年間は、未来の地球に直結するターニングポイントだとされています。Getty Imagesでは、自然環境の維持やそれに配慮した行動に関するビジュアルを通して、持続可能な消費や倫理的な生活の意味を引き続き伝えていきたいと考えます。
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寄稿連載「ビジュアルコミュニケーションから学ぶ」全6回にわたってお届けしました。
遠藤由理
ゲッティイメージズジャパン株式会社 クリエイティブインサイト マネージャー
10代後半からアメリカ、スペイン、チェコ、韓国で過ごす。映画制作とデジタルメディアデザインに重点を置いたビジュアルメディアの学歴を持ち、国際映画や日本映画のプロモーション、セールス、買収、配給などの仕事に従事。 2016年からはゲッティイメージズ、ならびに、iStockのクリエイティブチームのメンバーとして、世界中のクリエイティブプロフェッショナルによる利用データ分析と外部データや事例を調査し、来るニーズの見識を基にCreative Insights(広告ビジュアルにおける動向調査レポート)を発信。意欲的な写真家、ビデオグラファー、イラストレーターをサポートし、インスピレーションに満ちたイメージ作りを目指している。
私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp