読者対話型連載「あなたにとってウェルビーイングとは何か」 第7章:旧正月とベトナム編(第1節)
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読者対話型連載「あなたにとってウェルビーイングとは何か」 第7章:旧正月とベトナム編(第1節)

新企画「あなたにとってウェルビーイングとは何か」を担当します永島郁哉と申します。早稲田大学で社会学を学びながら、休日には古着屋に行ったり小説を書いたりします。

この連載は、ストレス社会に生きる私たちが、ふと立ち止まって「豊かさ」について考えるきっかけとなる、ささいな休憩所のようなものです。皆さんと一緒に、当たり前だと思っていた価値観を一つ一つほどいていく作業が出来たらと思います。

第7章は「旧正月とベトナム」と題してお送りします。旧正月をお祝いするベトナムには、ウェルビーイングのヒントとなる出来事が溢れています。

第7章 旧正月とベトナム

第1節 旧正月とは

実は、日本は東アジア圏で旧正月を祝わない、数少ない国のひとつです。

多くの人にとっては、中国の春節の様子をテレビで見るぐらいではないでしょうか。

かく言う私も、数年前まで、旧正月?春節?太陰暦?というハテナ状態で、大して興味もなかったのですが、数年前にベトナムで旧正月を体験してからは、2月になるとなんだかソワソワしてしまいます。

第7章では、ベトナムにおける旧正月に見られるウェルビーイングを読者の方と一緒に探していきたいと思いますが、今回は導入として、旧正月全体の雰囲気を皆さんと共有したいと思います。

軒先で焚く炭。お祝いの一部。

「旧正月」というくらいですから、基本的な雰囲気は日本のお正月と変わりません。カウントダウンがテレビ中継され、どこかで花火の上がる音がし、お年玉が配られ、近くの寺院にお参りし、親戚に挨拶に行く。軒先にはお正月の飾りが踊り、お正月料理が振舞われます。

なんだかもっと違うものを想像していた私は、その時点で少し期待外れというか、拍子抜けしてしまった記憶があるのですが、それでもベトナムの旧正月はとてもエネルギーに溢れていたのは印象的です。

例えば、親戚の集まりにしても、ベトナムは若年層の人口が多いこともあって、人数が何十人にも膨れ上がることがあります。いざ、お家についたら、中からどんどんと人が出てきたり、あるいは外から新しい人がやってきたりで、リビングに人が入り乱れて、それはもう大変な騒ぎでした。ある人は何やら料理の下準備をしていたり、部屋の角ではギャンブル(ベトナムには伝統的な丁半賭博が存在する)が始まっていたり、子供たちは走り回っていたり、あのカオスは忘れられません。

市場などに行ってみると、今度は色彩の暴力にやられます。日本のお正月は紅白で統一されていて、特に「目に悪い」などと感じたことはないですが、ベトナムでは極彩色の飾りつけがあちこちにあって、文字通り目が痛くなります。面白いのは、寺院までもがイルミネーションの飾りつけをやっていることで、傍からするとテーマパークにしか見えません。

あるいはショッピングモールなどでは、初売りとして高級車が並んでいたりします。多くの人はただ見物して写真を撮って帰っていくだけですが、奥にはきとんと商談席があって、高そうなスーツを着た人が待機していました。

寺院のイルミネーション

もちろんこれらはコロナ前の話なので、今はもっと違う様相なのかもしれませんが、お雑煮を食べて、羽子板をする日本に比べれば、「お祭り」という表現の方がしっくりくる新年でした。どちらが良いか、悪いかは個人の好みでしょうし、ここで「ベトナムのエネルギッシュさを見習おう!」などと言うつもりも毛頭ないですが、私は旧正月への関心がもっと広がれば良いなと思っています。なぜなら、私たちのとても近くにそれをお祝いしている人がいる、ということを素直に喜ぶことができれば、私たちはもっと他者との距離を縮めることができると思うからです。「隣人愛」と言うと大げさですが、そうした共感力は自分のウェルビーイングを高めることにもなると感じます。

なんだかとても楽しそうで、私も嬉しい。そんな感覚を芽生えさせれば、私たちの日常にはもっと多くのウェルビーイングが転がっているはずです。今年の旧正月は、2月1日。皆さんも、少しだけ祝ってみてはいかがですか?

家の軒先に飾られた提灯

今回の連載は如何でしたでしょうか。バックナンバーはこちらからご覧頂けます。

[読者対話型連載]あなたにとってウェルビーイングとは何か

永島郁哉

1998年生まれ。早稲田大学で社会学を学ぶ傍ら、国際学生交流活動に携わる。2019年に公益財団法人イオン環境財団主催「アジア学生交流環境フォーラム ASEP2019」に参加し、アジア10カ国の学生と環境問題に取り組んだ他、一般社団法人アジア教育交流研究機構(AAEE)では学生スーパーバイザーを務め、ベトナムやネパールでの国際交流プログラム企画・運営を行っている。2019年9月より6か月間ドイツ・ベルリン大学に留学。

——Backstage from “ethica”——

今回の連載は、読者対話型の連載企画となります。

連載の読者と、執筆者の永島さんがオンラインオフ会(ZOOM)で対話をし、次の連載の話題や企画につなげ、さらにその連載を読んだ方が、オンラインオフ会に参加する。

という形で、読者との交流の場に育てていければと思います。

ご興味のある方は、ethica編集部の公式Facebookのメッセージから、ご応募ください。

https://www.facebook.com/ethica.jp

抽選の上、次回のオンラインオフ会への参加案内を致します。

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

ethica編集部

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