「旧正月」というくらいですから、基本的な雰囲気は日本のお正月と変わりません。カウントダウンがテレビ中継され、どこかで花火の上がる音がし、お年玉が配られ、近くの寺院にお参りし、親戚に挨拶に行く。軒先にはお正月の飾りが踊り、お正月料理が振舞われます。
なんだかもっと違うものを想像していた私は、その時点で少し期待外れというか、拍子抜けしてしまった記憶があるのですが、それでもベトナムの旧正月はとてもエネルギーに溢れていたのは印象的です。
例えば、親戚の集まりにしても、ベトナムは若年層の人口が多いこともあって、人数が何十人にも膨れ上がることがあります。いざ、お家についたら、中からどんどんと人が出てきたり、あるいは外から新しい人がやってきたりで、リビングに人が入り乱れて、それはもう大変な騒ぎでした。ある人は何やら料理の下準備をしていたり、部屋の角ではギャンブル(ベトナムには伝統的な丁半賭博が存在する)が始まっていたり、子供たちは走り回っていたり、あのカオスは忘れられません。
市場などに行ってみると、今度は色彩の暴力にやられます。日本のお正月は紅白で統一されていて、特に「目に悪い」などと感じたことはないですが、ベトナムでは極彩色の飾りつけがあちこちにあって、文字通り目が痛くなります。面白いのは、寺院までもがイルミネーションの飾りつけをやっていることで、傍からするとテーマパークにしか見えません。
あるいはショッピングモールなどでは、初売りとして高級車が並んでいたりします。多くの人はただ見物して写真を撮って帰っていくだけですが、奥にはきとんと商談席があって、高そうなスーツを着た人が待機していました。