第8章 挑戦の哲学
第1節 予想外の展開
今回からは新章「挑戦の哲学」です。4月を控え、新しいことが始まる予感が少しずつ街に増えてきました。「春になったらやりたいこと」を温めている人も多いのではと思います。
そんな私はハイキングに行きたくてうずうずしています。冬のハイキングも気持ちいいですが、山に緑が戻ってきた春のハイキングは1年のうちでも格別なものがあります。ただし、ハイキングはただ楽しいだけのものではありません。どんなに低い山でも、相手は自然。いつでも予想外で対処の仕様がないことが起きます。それ自体は避けられるものではありませんから、そこで問題になるのはマインドセットです。
私は一度、ベトナムでハイキングをしたとき、予想外の豪雨に遭ったことがあります。しかも「軽い運動程度」と聞かされていたのに、実際は往復で5時間以上もかかる登山でした。さらには、森にはヒルが大量発生。泥の中に潜むヒルは肉眼では視認できず、どんなに気を付けていても30分歩けば必ず足にかみついています。おかげで足の至る所から出血して、靴下は血だらけ(ちなみにヒルは吸血中に血液の凝固を阻止する物質を出すので、一度かまれるとしばらく出血します)。
そんな状態では、普通自然を楽しむなんて余裕はありません。ハイキング参加者は全体で30人ほどいたと思いますが、半数以上はその過酷な状況に今にもギブアップしそうな表情でした。肌着までびしょびしょに濡れ、足からは出血、あとどれだけ歩けば帰れるのかもわからない状況では、無理もありません。