世界に誇る東京の伝統文化を発信している「江戸東京きらりプロジェクト」はアーティストの舘鼻則孝(たてはな・のりたか)さんをクリエイティブディレクターに招いて、オンライン展覧会「江戸東京リシンク展 – 旧岩崎邸庭園で見るアートが紡ぐ伝統産業の未来-」を3月31日(木)まで開催しています。レディー・ガガ愛用のヒールレスシューズをデザインした舘鼻さんが放つ現代アートと伝統産業事業者によるコラボレーションは必見です。(記者:エシカちゃん)
「組紐」や「小町紅」を活用したヒールレスシューズに注目
ファッションブランド「NORITAKA TATEHANA」のクリエイティブディレクターを務めている舘鼻則孝さん。花魁(おいらん)の高下駄にインスパイアされたヒールレスシューズのデザイナーとして世界中で支持を得ています。
そんな舘鼻さんがリシンク展でコラボしたのは、古くから伝わる技術を受け継いできた伝統産業事業者です。展示会のコンセプトである「Old meets New」にふさわしく、舘鼻さんの創作プロセスに欠かせない「Rethink(リシンク)」という概念を通じて、伝統の持つ魅力を新たな切り口で伝えています。
今回の展示会には「東京くみひも 龍工房」、「伊勢半本店」、「江戸木版画 高橋工房」、「江戸切子 華硝」、「江戸木目込人形 松崎人形」、「和太鼓 宮本卯之助商店」、「木目金 杢目金屋」、「金唐紙研究所」(特別協力)といった8つの伝統産業事業者が参加しました。
ここではコラボアートの一部をピックアップしてご紹介します。ヒールレスシューズに、帯締めや帯揚げなどを手掛ける「東京くみひも 龍工房」と、1825(文政8)年から口紅「小町紅」を作り続けている「伊勢半本店」の技術を融合させた出展品。「東京くみひも 龍工房」はヒールレスシューズのために着物の裏地から着想を得た「角紐」を考案。「角紐」には「伊勢半本店」の紅で染めた絹糸を裏面に使い、差し色として活用しています。革新と伝統が見事に調和した作品です。
リシンク展ではコラボアートに加えて、事業者が保有している歴史的資料を重要文化財に指定された旧岩崎邸庭園で撮影・記録し、3月24日(木)から「江戸東京きらりプロジェクト」のオフィシャルサイトで公開しています。旧岩崎邸庭園内にある建築物のモダンで見事な内装と、伝統技術の粋が結集した出展品の組み合わせは息を吞むほどです。公開は今週31日(木)まで。お早目にサイトをチェックしてみて下さい。
江戸東京リシンク展 – 旧岩崎邸庭園で見るアートが紡ぐ伝統産業の未来-
日程:~3月31日(木)(※開催期間終了後もアーカイブを閲覧可能)
https://edotokyokirari.jp/news/life/edotokyorethink2022
江戸東京きらりプロジェクト オフィシャルサイト
最後にリシンク展にあてた舘鼻さんからのメッセージを紹介します。
”私はこれまで“Rethink” という言葉を冠した展覧会をいくつか開催してきましたが、本プロジェクトのコンセプトである“Old meets New” と“Rethink”という概念は多くの共通点を有していると考えています。“Rethink” が意味するところを簡略化して言うなら、途切れることなく続く日本の伝統、あるいは文化を、現代においてそのまま再現するのではなく、現代的な意味を加えて表現するということです。そのため、私の作品はすべて、日本のこれまでの歴史、文化があってこそ、成立しているとも言えます。時代は変わっても変わるべきでないもの、時代が変わるからこそ変わるべきものを見極め、伝統を次の100年に残していくために、今、私たちが何をなすべきか。伝統をどう現代的な意味づけをして打ち出していくか。今回の展覧会は、東京の魅力を伝える場であるとともに、私たち自身がリシンクするための機会でもあるのです。”
舘鼻則孝
1985年、東京生まれ。歌舞伎町で銭湯「歌舞伎湯」を営む家系に生まれ鎌倉で育つ。シュタイナー教育に基づく人形作家である母の影響で、幼少期から手でものをつくることを覚える。2010年、東京藝術大学美術学部工芸科染織専攻を卒業。遊女に関する文化研究とともに、友禅染を用いた着物や下駄を制作する。「イメージメーカー展」(21_21 DESIGN SIGHT, 2014)、「Future Beauty」(東京都現代美術館 ほか国際巡回, 2012)、個展「呪力の美学」(岡本太郎記念館, 2016)、個展「It’ s always the others who die」(POLA Museum Annex, 2019)、個展「NORITAKA TATEHANA: Refashioning Beauty」(ポートランド日本庭園, 2019)他、ニューヨーク、パリ、 ベルギーなど世界各地で作品を発表。また、2016 年3 月にパリのカルティエ現代美術財団で文楽公演を開催するなど、幅広く活動している。作品はメトロポリタン美術館、ヴィクトリア& アルバート博物館などに収蔵されている。
記者:エシカちゃん
白金出身、青山勤務2年目のZ世代です。流行に敏感で、おいしいものに目がなく、フットワークの軽い今ドキの24歳。そんな彼女の視点から、今一度、さまざまな社会課題に目を向け、その解決に向けた取り組みを理解し、誰もが共感しやすい言葉で、個人と世界のサステナビリティーを提案していこうと思います。
ーーBackstage from “ethica”ーー
このたびethica編集長がリシンク展の会場になった旧岩崎邸庭園を訪れ、舘鼻さんと5年振りに対談を行いました!「現代アート×伝統産業」による新たな価値をテーマにお話を伺っています。エシカで対談内容を近日公開しますので、お楽しみに!ちなみに前回の対談企画はこちらです。
私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp