新企画「あなたにとってウェルビーイングとは何か」を担当します永島郁哉と申します。早稲田大学大学院で社会学を研究しながら、休日には古着屋に行ったり小説を書いたりします。
この連載は、ストレス社会に生きる私たちが、ふと立ち止まって「豊かさ」について考えるきっかけとなる、ささいな休憩所のようなものです。皆さんと一緒に、当たり前だと思っていた価値観を一つ一つほどいていく作業が出来たらと思います。
第9章は「人が去るということ(イントロ)」と題してお送りします。
新企画「あなたにとってウェルビーイングとは何か」を担当します永島郁哉と申します。早稲田大学大学院で社会学を研究しながら、休日には古着屋に行ったり小説を書いたりします。
この連載は、ストレス社会に生きる私たちが、ふと立ち止まって「豊かさ」について考えるきっかけとなる、ささいな休憩所のようなものです。皆さんと一緒に、当たり前だと思っていた価値観を一つ一つほどいていく作業が出来たらと思います。
第9章は「人が去るということ(イントロ)」と題してお送りします。
人は去っていくものだということを、私は簡単に忘れてしまいます。そのせいで、一方的な、ほとんど迷惑と言ってもいい喪失感を抱えて、何日間もあちこちを彷徨うことになります。数少ない友人に突然会いに行って、実際迷惑をかけたこともあります。
私は今回の記事を、人間関係の持続可能性に悩める人々のために書きたいと思っています。人間関係の持続可能性とは、一度築いた人間関係を長い間――その長さの基準は人によるかもしれませんが――持続できることです。つまり、1年前は仲の良かった友人と、今はもう全く連絡を取っていないような状態は、持続可能性がないと言えるでしょう。そして、人間関係を長く保持できないことに、不満足感や、空虚さ、喪失の感覚を抱えているとすれば、この一連の記事は、それを和らげないにしても、その輪郭を幾分か掴む機会になるかもしれません。私は読者の方と一緒にそれを考えたいと思っています。
乗客が絶えず入れ替わる列車のように
人は去るとき、決して絶望的で、劇的で、衝撃に満ちた場面ばかりを選ぶわけではありません。視界の端に映るものが、ふと「わたし」が首を回したせいで視界から消えるように、人は去っていくことがあります。つい返信を怠ったが故に、連絡がつかなくなってしまったり、あるいはもっと分かりづらい形で――「近々会おうよ!」という連絡がどういうわけか最後の会話になってしまったりします。
音もたてず、何の合図も出さずに、ただ忽然と消える。「消える」と言っても、このSNS時代、ほとんどの場合はフォロー/フォロワーとして繋がり続け、画面の向こうで「わたし」の知らない誰かと笑って写真に収まるその人を絶えず確認できるわけですが、「わたし」の世界と、その人の世界の重なり合いは消失してしまっています。
別にお互いが嫌いなわけでも、(少なくとも「わたし」は)相手への興味を失ったわけではないのに、ただ「世の中がそうさせた」としか説明できないような、不可抗力の波が2人を飲みこんだが故に、互いの世界は引きはがされてしまうわけです。そのときの得も言われぬ喪失感には、重く、鈍い痛みが伴います。
でも、どうして「痛い」のでしょうか? その「痛み」は私たちに必要なのでしょうか? 「痛み」は私たちに何を教えるのでしょうか?
乗車する人もあれば、降車する人もいる
この「痛み」を、今、ここに感じるからこそ、私たちは改めて「人は去っていく」ということを、しっかりと考え直さなければならない、と思います。しかもそれは、人が去ることそれ自体を嘆きたいから行うのではなくて、なぜ嘆きたくなるのかということを問うためにあるべきだと考えています。つまり、どうして私たちはそのように感じるのか、という社会学的問いの範疇で検討しようというわけです。
人が去るとは一体どういうことか。なぜ彼らは去るのか(あるいは去らないのか)。彼らは、あるいは「わたし」は、そのとき何を考えるのか。なぜ、それが「痛み」となって「わたし」を襲うのか。
私はこれらの問いを検証するために、しばらく連絡を絶っていた友人に連絡を試みました。この章でこれから皆さんと共有するのは、その友人との正直な対話の記録です。もし、これを読む人が人間関係の持続可能性についてなんらかの虚脱感を抱くのだとすれば、これから見ていくものはきっと自分に跳ね返ってくるはずです。
一体どうなるのか、私にもまだわかりませんが、読者と共にドキドキしながら、この試みの行方を見届けてみたいと思います。
冒険の始まり
今回の連載は如何でしたでしょうか。バックナンバーはこちらからご覧頂けます。
永島郁哉
1998年生まれ。早稲田大学で社会学を学ぶ傍ら、国際学生交流活動に携わる。2019年に公益財団法人イオン環境財団主催「アジア学生交流環境フォーラム ASEP2019」に参加し、アジア10カ国の学生と環境問題に取り組んだ他、一般社団法人アジア教育交流研究機構(AAEE)では学生スーパーバイザーを務め、ベトナムやネパールでの国際交流プログラム企画・運営を行っている。2019年9月より6か月間ドイツ・ベルリン大学に留学。
——Backstage from “ethica”——
今回の連載は、読者対話型の連載企画となります。
連載の読者と、執筆者の永島さんがオンラインオフ会(ZOOM)で対話をし、次の連載の話題や企画につなげ、さらにその連載を読んだ方が、オンラインオフ会に参加する。
という形で、読者との交流の場に育てていければと思います。
ご興味のある方は、ethica編集部の公式Facebookのメッセージから、ご応募ください。
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抽選の上、次回のオンラインオフ会への参加案内を致します。
私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp
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