実は、私のせいろデビューは今回が初めてではなく、さかのぼること数年前。
蒸し料理が大好きで、せいろのある暮らしに憧れる気持ちと、一方、どの程度自分が活用できるか疑う気持ちもあり、当時とりあえず購入したのは、お手頃なメーカーの杉のせいろでした。
はじめこそ頻繁に使っていましたが、安物ゆえか、お手入れがきちんとできていなかったのか、数回使っているうちに、留め部分がはずれ、内側の板がはがれパラパラと崩壊してゆき、気がつけばまるで台所のディスプレイのように……。
ただでさえかさばるせいろ。素材を蒸すだけなら手持ちの無水鍋で代用できるし、蒸しパンも薄くお湯を張ったフライパンで問題なく蒸せるといえば蒸せるし、まぁ絶対になくてはならないものではないよな……と、あるとき断捨離の対象に。以来、またせいろを欲しいなぁと思ったこともありましたが、ちょっぴり苦い経験が頭をよぎり、そんな気持ちに蓋をしていたのでした。
だったのですが。
家族でお出かけをしたとき、とあるお店で食べた、せいろ蒸しのお料理はやっぱり格段に美味しくて。
「おやさい、おいしいなぁ!」
娘もいつも以上にいい食べっぷりです。
それに、ふたを開ける瞬間、湯けむりとともに現れる、きれいに並べられた素材を目をキラキラさせて見つめる娘の姿を見て、そんな楽しみ方もあるよなぁと、心新たにせいろを迎えるにいたったのでした。