(第42話)一度は手放してみたけれど。やっぱり嬉しい、せいろのある食卓【連載】かぞくの栞(しおり) 暮らしのなかで大切にしたい家族とwell-being
独自記事
このエントリーをはてなブックマークに追加
Instagram
(第42話)一度は手放してみたけれど。やっぱり嬉しい、せいろのある食卓【連載】かぞくの栞(しおり)

心身ともに健康で、社会的にも満たされた状態であることを意味する「well-being」。

一人ひとりがwell-beingであることが、社会や環境をより良くしていくことにつながるのだと思います。

では、「私にとって良い状態」ってどういうものなんだろう?

そのヒントは、意外と何気ない日常の中に散りばめられているのかもしれません。

新しく何かを始めるのも大切だけど、まずは身近な人や自分が「ごきげん」でいることから。

家族と過ごすなかで感じる、そんな一瞬一瞬を切り取って、綴っていけたらと思います。

せいろのある暮らし

先日、わが家に迎えた白木のせいろ。

妹に誕生日プレゼントは何がいい? と聞かれ、いい年をして遠慮なくリクエストさせてもらったものです。

 

サイズはさんざん悩んだ結果、魚やお肉をお皿ごとでも蒸せるようにと、どーんと大きい直径27cm! わが家の小さなコンロに置くと、めちゃくちゃ存在感を放っています。

 

届いたら早速、白身のお魚と春の葉野菜を重ねて蒸したり、蒸しパンを作ったりと、せいろにすっかり夢中に。一見手間がかかるようにも感じる蒸し料理ですが、蒸しあがるタイミングと、下のお鍋のお湯が切れないようにさえ気をつければ、大きく失敗することもありません。

 

いつもと同じ素材でも、せいろで蒸すだけで魚やお肉はふわふわしっとり、野菜は旨味がぎゅっと凝縮され、蒸しパンはきれいにぱっくりと割れて、なんだか料理が上手くなったかのよう。色白で美しい木肌のせいろが目に入るだけでも嬉しく、台所に立つたびにホクホクと気分が上がる今日このごろです。

実は、私のせいろデビューは今回が初めてではなく、さかのぼること数年前。

蒸し料理が大好きで、せいろのある暮らしに憧れる気持ちと、一方、どの程度自分が活用できるか疑う気持ちもあり、当時とりあえず購入したのは、お手頃なメーカーの杉のせいろでした。

 

はじめこそ頻繁に使っていましたが、安物ゆえか、お手入れがきちんとできていなかったのか、数回使っているうちに、留め部分がはずれ、内側の板がはがれパラパラと崩壊してゆき、気がつけばまるで台所のディスプレイのように……。

 

ただでさえかさばるせいろ。素材を蒸すだけなら手持ちの無水鍋で代用できるし、蒸しパンも薄くお湯を張ったフライパンで問題なく蒸せるといえば蒸せるし、まぁ絶対になくてはならないものではないよな……と、あるとき断捨離の対象に。以来、またせいろを欲しいなぁと思ったこともありましたが、ちょっぴり苦い経験が頭をよぎり、そんな気持ちに蓋をしていたのでした。

 

だったのですが。

 

家族でお出かけをしたとき、とあるお店で食べた、せいろ蒸しのお料理はやっぱり格段に美味しくて。

「おやさい、おいしいなぁ!」

娘もいつも以上にいい食べっぷりです。

それに、ふたを開ける瞬間、湯けむりとともに現れる、きれいに並べられた素材を目をキラキラさせて見つめる娘の姿を見て、そんな楽しみ方もあるよなぁと、心新たにせいろを迎えるにいたったのでした。

今、使っているのは、照宝の白木の二段せいろです。白木にしたのは、杉は香りが強すぎるなぁと感じたのと、より長く使えるように、強度があるものをと思ったことから。

モノが良いのはもちろんですが、前回の反省から、せいろの活用方法や正しいお手入れの仕方をちゃんと予習した成果があってか(!?)、今のところ快適に使えています。

 

経験から、押さえておきたいと思ったポイントは「蒸し板を使う」「お湯が沸いてからせいろを乗せる」「さっと洗ってしっかり乾かす」「保管は通気性のいいところで」。

 

慣れてしまえば、使うひと手間はなんてことなく、味はもちろん栄養もたっぷり、見た目にも美味しい蒸し料理は忙しい毎日の助けになってくれます。

 

家族みんなのお気に入りは、ざく切りにした好みの野菜の上に、塩麹に漬けたお肉や魚をのせて蒸したもの。そのままでも、ポン酢やオリーブオイル、柚子胡椒などを合わせて、いろいろ味の変化を楽しむのもまた良し。

 

蒸し料理が一品、それにごはんとお味噌汁があればばっちり! ということで、楽しくラクに料理をするのに欠かせない、わが家の一員となったせいろなのでした。

今回の連載は如何でしたでしょうか。バックナンバーはこちらからご覧頂けます。

【連載】かぞくの栞(しおり)

季子(キコ)

一児の母親。高校生のころ「食べたもので体はできている」という言葉と出会い食生活を見直したことで、長い付き合いだったアトピーが大きく改善。その体験をきっかけに食を取り巻く問題へと関心が広がり、大学では環境社会学を専攻する。

産後一年間の育休を経て職場復帰。あわただしい日々のなかでも気軽に取り入れられる、私にとっても家族にとっても、地球にとっても無理のない「いい塩梅」な生き方を模索中。

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

季子(キコ)

このエントリーをはてなブックマークに追加
Instagram
【ethica Traveler】  静岡県 袋井市の旅 おいしいもの発見!
独自記事 【 2025/3/20 】 Work & Study
日本列島のほぼ真ん中で、駿河湾を囲むように位置する静岡県。その中でも、太平洋に面する西の沿岸部に近いところに袋井(ふくろい)市があります。東西の交流地点として、古くから人や物や情報の往来を支えてきた袋井市は、高級メロンやリゾート、由緒正しき寺院など、未知の魅力がたくさんあるユニークな場所です。今回は、そんな袋井市の中で...
【ethica Traveler】 連載企画Vol.5 宇賀なつみ (第4章)サンフランシスコ近代美術館
独自記事 【 2024/3/20 】 Work & Study
「私によくて、世界にイイ。」をコンセプトに2013年に創刊した『ethica(エシカ)』では、10周年を迎える節目にあたり、エシカルでサステナブルな世界観、ライフスタイルをリアルに『感動体験』する場を特集しています。 本特集では、カリフォルニア州サンフランシスコ市のエシカルな取り組みを取材!エシカ編集部と共にサステナブ...
冨永愛 ジョイセフと歩むアフリカ支援 〜ethica Woman Project〜
独自記事 【 2024/6/12 】 Love&Human
ethicaでは女性のエンパワーメントを目的とした「ethica Woman Project」を発足。 いまや「ラストフロンティア」と呼ばれ、世界中から熱い眼差しが向けられると共に経済成長を続けている「アフリカ」を第1期のテーマにおき、読者にアフリカの理解を深めると同時に、力強く生きるアフリカの女性から気づきや力を得る...
持続可能なチョコレートの実現を支える「メイジ・カカオ・サポート」の歴史
sponsored 【 2025/3/19 】 Food
私たちの生活にも身近で愛好家もたくさんいる甘くて美味しいチョコレート。バレンタインシーズンには何万円も注ぎ込んで自分のためのご褒美チョコを大人買いする、なんてこともここ数年では珍しくない話です。しかし、私たちが日々享受しているそんな甘いチョコレートの裏では、その原材料となるカカオの生産地で今なお、貧困、児童労働、森林伐...

次の記事

読者対話型連載「あなたにとってウェルビーイングとは何か」 第10章:雨ニモマケズ(第1節)
TBS秋沢淳子さん鼎談(第1話)アジア最大級の短編映像フェスティバル「DigiCon6」

前の記事

スマホのホーム画面に追加すれば
いつでもethicaに簡単アクセスできます