コミュニティの可能性と未来 日本生活協同組合連合会 峰村 健史
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コミュニティの可能性と未来 日本生活協同組合連合会 峰村 健史

日本生活協同組合連合会 デジタルマーケティング部 部長 峰村 健史 Photo=Eijiro Toyokura ©TRANSMEDIA Co.,Ltd

グローバルで活躍するサステナビリティのリーダーが集うコミュニティ・イベント「サステナブル・ブランド国際会議2022横浜(SB 2022YOKOHAMA)」。ethicaはメディアパートナーとして参加しており、今年も数多くのセミナー、ディスカッション、ワークショップが繰り広げられました。この記事では、石井造園株式会社、株式会社ヤッホーブルーイング、日本生活協同組合連合会(以下、日本生協連)が参加した「ファンづくり、コミュニティづくりから広げる共感マーケティング」と題されたセッションから、ファシリテーターを勤めた高島太士氏(一般社団法人NEWHERO)と日本生協連の峰村健史氏のディスカッションをレポートします。(記者:エシカちゃん)

コミュニティをどう広げていくか

――共感マーケティングとは、顧客がファンになって、それが結果的にコミュニティになっていくことだと理解しています。似ている言葉であるSNSが「広く伝える」のに対して、コミュニティは「深く伝える」ためのものであるという違いがあります。まず、コミュニティの活用事例やコミュニティがどのような未来をつくっていくのかについて教えてください。

生活協同組合(以下、生協)の特徴は、組合員のみなさんに加入・出資をしてもらい、みなさんに利用してもらうこと。歴史的には、19世紀の産業革命時代のイギリスで「お互い手をつなぎ、自らの手でより良い社会を生み出そう」と「ロッチデール公正開拓者組合」が設立され、その影響をうけ協同組合がイギリス国内各地で設立されました。それにならい日本国内では、1879年に最初の生協が誕生し、その後1960年代後半からは共同購入という取り組みが始まり、これをきっかけに発展・拡大していきました。現在の組合員数は約3000万人となります。

利用者の年齢別に見ると、参加している人たちの年代は高齢にシフトしていて、若い人たちが少ない。その大きな理由として宅配事業に関して「週1回の宅配サービスだと利用しづらい」「ほかのサービスだとすぐに届くのに」という声もあります。こうした課題を解決するために、いろいろな取り組みを講じています。

たとえば、生協の商品について語り合うコミュニティをオンラインで設けて、生協のことをさらに好きになってもらう取り組みを行っています。また、デジタルトランスフォーメーション(※1)にも着手しており、若い人が面倒だと感じていることを一つひとつ解決するようにしています。

まずは「広く認知してもらう」という目的から、インスタグラムやYouTubeなどを利用して、今まで生協のことを知らなかった人への広報も行っています。「加入しないと利用できない」のではなく、加入前に「お試し購入」で利用いただく試みも行っています。私自身はデジタルマーケティング部の部長をしているので、まずは担当している領域を中心にお話します。

※1:デジタルトランスフォーメーション……IT技術の浸透により、人々の生活をより良いものへと変化させること。

日本生活協同組合連合会 デジタルマーケティング部 部長 峰村 健史 Photo=Eijiro Toyokura ©TRANSMEDIA Co.,Ltd

――生協のコミュニティについて「事業自体が、もともとコミュニティだった」ともいえるのではないでしょうか。

「イギリスの産業革命時代に始まった」というきっかけでも触れましたが、同じ問題意識を持つ人たちが集まってコミュニティを作り、食品などを購買するようになりました。その意味では、ゴールから始まったということになるかもしれません。そのなかで、小さなコミュニティがどんどん立ち上がっています。

――ヤッホーブルーイングの佐藤潤さんから「お客さまの声をどのように取り上げて、どう生かしているのか聞きたい」というお話がありました。

株式会社では株主総会がありますが、生協の場合は総代会というものがあります。総代は組合員から選ばれた人のことで、総代会によって次年度方針などを決定します。それとは別に、多くの方々にご利用いただいているので、毎日たくさんの声が届きます。宅配の配達員は「担当制」になっていて、利用者の声が最も多く届くのは、組合員と宅配の配達員のコミュニケーションのなかです。こうした声が組織のなかで循環し、運営に生かせるように取り組んでいる生協が多いです。

――労力と手間がかかりそうだと思いましたが、人とのつながりを大切にされているということですね。

もちろん、労力はかかります。届けるだけで精一杯という場合もあります。やり切れている部分とそうでない部分があります。

コミュニティづくりを始めるには

――会場に参加されている人たちのなかにも、「コミュニティを作ってみたい」「実際に取り組んでいる」という人もいるかもしれません。コミュニティを形成するために、何から始めるといいのでしょうか。

デジタルマーケティング部で仕事をしてきた経験でいえば、商品を軸にしてコミュニティが形成されると思っています。商品について「語りたい」「ほかの人の意見を聞きたい」と思っている人が多い。2010年頃から、「くらしと生協」という生協内ECサイトでは、口コミ機能として「レビュー投稿」の取り組みを始めました。レビュー投稿に対して、ほかの組合員さんが「いいね」を付けたり、生協の職員が返信できるようにしました。商品を軸にして簡単なコミュニケーションが生まれ、コミュニティらしいものが成立していく。単に「良かった」ではなく、「(次に購入する人に対して)いつもSサイズを買うけれどMサイズのほうがいいよ」といった投稿もあったりする。もし特別なオンラインのコミュニティを作るのが大変であれば、レビュー投稿を活性化することによって、コミュニティづくりができるのではと経験から感じています。

日本生活協同組合連合会 デジタルマーケティング部 部長 峰村 健史 Photo=Eijiro Toyokura ©TRANSMEDIA Co.,Ltd

コミュニティの可能性と未来

――ファンづくりやコミュニティづくりは、規模感がなかなかわかりにくい。「コミュニティづくりをすると、サステナブルな取り組みが進めやすい」ということはありますか。

生協においても、サステナブルな取り組みは数多く行っています。コミュニティとして人が集まっているので、そのなかで新しい価値観について共感できれば、多くの人が同じ価値観を持って次の取り組みを進められます。近年電力事業を始めていますが、この背景にはコミュニティが関わっています。多くの組合員さんがいて、各地に生協があるからできることです。結集しているからこそ、新しい取り組みがしやすいと思っています。

――コミュニティがあることによって、どんな未来があると思いますか。いまの時代にコミュニティやファンづくりが必要であるのかどうかも含めて、展望をお聞かせください。

展望としては、必ずいい方向に進むと思っています。社会や世界を変えていくためになくてはならない原動力です。自分が関わっている仕事の話としては、若い人たちに生協のことをもっと知ってもらうこと。「生協は便利だ」という組織の価値を感じてもらうのは、結婚して妊娠したときや子どもが小さくて買い物になかなか行けないときなど。そこから始まって、生協の理念やミッションに共感してもらい、商品のコミュニティとして口コミなどを投稿し、できればリアルのイベントにも参加してもらいたい。単身や夫婦のみで暮らしている若い人たちであっても、食材を計画的に購買して、賢く楽しむ方法もある。「ミールキット(※2)」などを利用すれば、調理の時間を削減してほかのことに時間を使える。若い人に寄り添った価値観を提供したいと思っています。SNSを活用するなどして、まずは認知してもらうことを意識していきたいです。

※2:ミールキット……食材とレシピが一緒に入っている料理キット。カット済の食材と調味料などが必要な分だけ入っている。

今回の「サステナブル・ブランド 国際会議2022横浜(SB 2022 YOKOHAMA)」レポート記事は如何でしたでしょうか。

注目すべきセミナー、ディスカッション、ワークショップの様子を引き続きethicaで連載していきますので、お楽しみに!

バックナンバーはこちらからご覧頂けます。

[連載企画]サステナブル・ブランド国際会議2022横浜

記者:エシカちゃん

白金出身、青山勤務2年目のZ世代です。流行に敏感で、おいしいものに目がなく、フットワークの軽い今ドキの24歳。そんな彼女の視点から、今一度、さまざまな社会課題に目を向け、その解決に向けた取り組みを理解し、誰もが共感しやすい言葉で、個人と世界のサステナビリティーを提案していこうと思います。

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

エシカちゃん

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