エシカル消費の未来
大谷: エシカル消費は、今後どのように変化していくと思いますか。
永渕: これは難しい問いですね。エシカル消費という言葉自体にも、課題があるのかなと感じています。かつて話題になった言葉であるだけに、いま見ると時代を経てしまったような感じがします。エシカル消費の抱える課題をどうやって自分事にしていくのか。たとえば「サーフィンをするから水に関することは大切にしたい」など、どの領域であればほかの人よりも熱心に取り組めそうなのか。それが意識できると責任分担ができるようになり、社会課題が少しずつ改善されるのではと個人的には思っています。僕自身もキャンプとか山に行くことが多いので、森林など自然に対することは意識していきたいですね。
大谷: 現在は課題の細分化が進んでいますが、今後は企業も生活者も深堀していく段階に来ているのでしょうか。
永渕: 深堀していくほうが近道だと思っています。たとえば、車が好きな人は、車について責任が持てる範囲で考えよう、ということ。生活者にとって、マスメディアよりも、自分が好きな分野の専門家に言われたほうが理解しやすい。ファッションやアウトドア、音楽など、カルチャー(文化)が入ると、ライフスタイルは変わりやすいと思っています。
大谷: それぞれが深い内容に取り組んでいるからこそ、価値がありますね。
永渕: これからは各領域の専門家が活躍する時代になると思っています。社会課題の構造を変えようとした場合、コミュニティをどう引き付けていくかが大事になってくると思います。たとえば、海産物の課題であれば釣りやサーフィン、児童に関する課題があれば子どもの教育系のコミュニティが必要になってきます。一人ひとりが3、4つのコミュニティに関心を持って入れるように、どうマネジメントをしていくのかが問われています。
大谷: オンラインサロンやzoomなどいろいろなツールが登場しています。ソーシャルなコミュニケーション事例や今後取り組みたいことなどはありますか。
永渕: たとえばスケボーをしているようなストリートな人たちの場合、彼らにとっては有名になれるチャンスがあるけれど、一方では社会からは「商店街を壊す」といわれることもある。変わるチャンスがあるということは、協力してくれる可能性もあるということ。そういう人たちとのコミュニケーションを、誰がどういうモチベーションでまとめていくかが難しい場合もあります。現在取り組んでいるのは、そうしたコミュニティのリーダー格にある人と企業との対話です。コミュニティをリスペクトしながら、お互いの方向性をどう結び付けていくのか。協力してもらう上では、そのコミュニティにとってのメリットをどう見つけていくのか。難しさを感じることも多いですが、丁寧に対応するようにしています。