――新・文化庁に対して、どんなことを期待していますか。
文化庁は、京都のためだけに移転してくるのではありません。世界に通用する京都というブランド力を活かし、日本の文化力を発信する価値を見出したからこそ、京都に移転してくるのだと思っています。
どんなに素晴らしい精神性を誇る文化的な営みがあったとしても、それを受け取る人がいなければ、心に響きようがありません。文化庁には、我が国の文化政策の司令塔として、伝統文化のみならず、アートや現代芸術などに親しむ人の裾野を広げる役割を期待しています。
2004 年に観光や文化に携わる人に向けて「京都検定(正式名称:京都・観光文化検定試験)」を京都商工会議所が創設しましたが、今や、全国から受験者が集まる試験へと成長しました。このことからも、地域特有の文化や歴史に関心を持つ人たちの裾野を広げていく上でのポテンシャルは十分にあるのではないかと感じています。文化庁の職員の皆さんには、ぜひご自分の足で京都のまちを歩いたり、お祭りや行事などにも積極的に参加したりするなど京都の奥深さを肌で感じていただきたいです。
――文化庁の京都移転にあたり、京都の文化醸成に対してどんな動きをしていきたいですか。
新型コロナの影響が少しずつ低減し、海外との往来が回復しています。伝統産業の新たな市場として、海外販路の開拓を再開していきたいと考えています。また、海外からの観光客の受け入れが本格化するなかで「京都の観光地を見る」だけでなく「京都の文化にふれる」ことができるように、人材育成などにも力を入れていきたいと思います。
――文化庁が京都に移転した後の展望について、お聞かせください。
文化庁移転を支援する事業の一環として、最後の文人画家と言われた富岡鉄斎(とみおか・てっさい)の邸宅を改修し、「文化と産業の交流拠点」として整備を進めています。国内外の関係者を呼び込むきっかけを作ることで、文化庁移転後の我が国の文化の発展に少しでも貢献できればと考えています。