新企画「あなたにとってウェルビーイングとは何か」を担当します永島郁哉と申します。早稲田大学大学院で社会学を研究しながら、休日には古着屋に行ったり小説を書いたりします。
この連載は、ストレス社会に生きる私たちが、ふと立ち止まって「豊かさ」について考えるきっかけとなる、ささいな休憩所のようなものです。皆さんと一緒に、当たり前だと思っていた価値観を一つ一つほどいていく作業が出来たらと思います。
新企画「あなたにとってウェルビーイングとは何か」を担当します永島郁哉と申します。早稲田大学大学院で社会学を研究しながら、休日には古着屋に行ったり小説を書いたりします。
この連載は、ストレス社会に生きる私たちが、ふと立ち止まって「豊かさ」について考えるきっかけとなる、ささいな休憩所のようなものです。皆さんと一緒に、当たり前だと思っていた価値観を一つ一つほどいていく作業が出来たらと思います。
「好きな感触」とはいったいどういうものを指すのでしょうか。例えば、ウールの柔らかな生地を撫でるとき、それを心地よいと思う感覚でしょうか。あるいは、冷たい石の表面のザラザラした感触に、指先が刺激される感覚でしょうか。
では「好きな感触」とは、ただ外からの刺激でしかないのかと言われると、それも違うような気がしてきます。触れたときに、指先から伝わってくる何かがそこに存在し、それによって自分が元気づけられているような気がするのです。
フワフワした手触りの苔
私は、木の肌に触れるのが好きです。でこぼこした表面に指を合わせると、ざらざらとした感触が伝わってきます。それと同時に、その木から生気のようなものが自分のなかに流れてくるような感覚を持ちます。その体感は、石ころや葉っぱ、犬、あるいは人からは得られないもので、木に特有のものです。
例えば、ハイキングは、たくさんの木に触れるとても良い機会です。自分の体を持ち上げるために、そばにある木に手伝ってもらうとき。木陰の倒木に腰を下ろして、休憩するとき。私たちは、木に触れ、その肌を撫でます。そして、なんだか自分のなかにある力とは違うものを感じます。
これが俗に言う「木のぬくもり」なのでしょうか。木それ自体に温かさはないのにもかかわらず、そこにあたかも「ぬくもり」があるかのように感じるとき、それは私たちが木の生気を受け取っている証拠であるかもしれません。
私の場合、これはたまたま木でしたが、その他のものを「好きな感触」だと思う人にとっては、そうしたものがまた、触れている対象に何かを伝えるのだろうと思います。そして、これは私たちが日常生活で感じることにも当てはまるような気がします。
石の凹凸
私たちは日常で、「落ち着く」とか「安心する」とか「居場所だと感じる」とか「生き返る」という言葉を使用します。このとき、私たちが持つのは、まさに、外界とのコンタクト(接触)によって、自分の中の何かが変容する感覚です。「好きな感触」とは、そのような、外的な刺激とともに、自分の中で新たに起こる感情や、自分のうちから湧いて出てくる力を含めた、総合的な感覚のことなのかもしれません。
ここから私たちは、次のことが言えるかもしれません。人間は人間とのつながりだけで生きているわけではなく、物ともつながって生きている。例えば、一人で部屋にいるとき、一人で自然のなかにいるとき、私たちは何とも関わっていないわけではありません。むしろ、そこにある事物との関わりのなかで、人は生きています。
実は、社会学においてこれは、「アクターネットワーク理論」と呼ばれています。「アクター=行為者」は、人だけではなく、物や技術など、あらゆるものを指します。これらが互いにネットワークを結んで作用し合っているという前提で、ものごとを考えようというのが、この理論の趣旨です。
自分の好きな感触に接して、私たちはそこで何かと関わります。人を豊かにするのは、まさにそうした、物を通じた全体的な感覚なのかもしれません。
今回の連載は如何でしたでしょうか。バックナンバーはこちらからご覧頂けます。
永島郁哉
1998年生まれ。早稲田大学で社会学を学ぶ傍ら、国際学生交流活動に携わる。2019年に公益財団法人イオン環境財団主催「アジア学生交流環境フォーラム ASEP2019」に参加し、アジア10カ国の学生と環境問題に取り組んだ他、一般社団法人アジア教育交流研究機構(AAEE)では学生スーパーバイザーを務め、ベトナムやネパールでの国際交流プログラム企画・運営を行っている。2019年9月より6か月間ドイツ・ベルリン大学に留学。
——Backstage from “ethica”——
今回の連載は、読者対話型の連載企画となります。
連載の読者と、執筆者の永島さんがオンラインオフ会(ZOOM)で対話をし、次の連載の話題や企画につなげ、さらにその連載を読んだ方が、オンラインオフ会に参加する。という形で、読者との交流の場に育てていければと思います。
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