新企画「あなたにとってウェルビーイングとは何か」を担当します永島郁哉と申します。早稲田大学大学院で社会学を研究しながら、休日には古着屋に行ったり小説を書いたりします。
この連載は、ストレス社会に生きる私たちが、ふと立ち止まって「豊かさ」について考えるきっかけとなる、ささいな休憩所のようなものです。皆さんと一緒に、当たり前だと思っていた価値観を一つ一つほどいていく作業が出来たらと思います。
新企画「あなたにとってウェルビーイングとは何か」を担当します永島郁哉と申します。早稲田大学大学院で社会学を研究しながら、休日には古着屋に行ったり小説を書いたりします。
この連載は、ストレス社会に生きる私たちが、ふと立ち止まって「豊かさ」について考えるきっかけとなる、ささいな休憩所のようなものです。皆さんと一緒に、当たり前だと思っていた価値観を一つ一つほどいていく作業が出来たらと思います。
最近は一段冷え込みが厳しくなりました。朝、布団から出るのにも、えい!という勇気が必要な季節です。それにしたがって、近頃、熱いコーヒーを淹れることが増えました(夏ごろに、エスプレッソマシンを購入して、それ以来エスプレッソにはまっています)。
コーヒーを飲むときの楽しみの一つは、お気に入りのマグカップが使えること。コーヒーを飲むときにしか使わない、有田焼の高級カップです。とても軽く、かといって軽すぎせず、取手が絶妙な大きさなので、手になじみます。釉薬と焼きの具合でできた深い色合いを見ていると、コーヒーの味が幾倍も良くなった気がしてきます。入れ物一つで体験が変わる。美しい食器で、飲み物も美味しくなります。
ところで、焼き物に美を見出す態度は、日本でも古くから存在しています。ですが、民芸品と呼ばれるものが、「美しいもの」として積極的に評価され始めたのは、ちょうど100年ほど前からでした。評論家であり、哲学者でもあった柳宗悦が、民藝運動を展開するなかで、名もなき作り手による日常生活のための道具に宿る美を評価していったのです。
柳がとりわけ注目したのは、機能美でした。日常で使われることを想定され、使い手にとって使いやすいような、さまざまな工夫が施されたもの。そこに宿る美を、民藝運動は見出していきました。
同様に、機能の美に着目したのが、同じく100年ほど前に活躍した社会学者、ゲオルク・ジンメルという人です。彼は、取手のついた壺を例に、壺そのものには美しさがあるが、一方で取手には「人が持つため」という有用性があるとしました。この有用性と美は、本来互いに全く違う方向を向いているはずですが、ジンメルによれば、「さらに上位にある美」がこの二極対立を統一する、と言います。
工芸体験をしたときの様子
一見難しいようですが、ここで言われているのは、機能性や有用性といった、本来美にとっては「異質なもの」が、全体としてはまとまっているということです。二つの異なるものの調和によって全体として美が達成される。
思えば、私たちの生活はそのようなものの連続かもしれません。先のマグカップももちろんそうですし、あるいは、この社会そのものもそう言えるかもしれません。異なる人同士が、不思議と全体としてまとまっているのが社会です。異質な存在を排除していては、調和はありません。社会が調和の形なのだとしたら、異質な他者も包摂することが社会本来の姿であり、共同体としてのウェルビーイングを達成する術なのかもしれません。
今回の連載は如何でしたでしょうか。バックナンバーはこちらからご覧頂けます。
永島郁哉
1998年生まれ。早稲田大学で社会学を学ぶ傍ら、国際学生交流活動に携わる。2019年に公益財団法人イオン環境財団主催「アジア学生交流環境フォーラム ASEP2019」に参加し、アジア10カ国の学生と環境問題に取り組んだ他、一般社団法人アジア教育交流研究機構(AAEE)では学生スーパーバイザーを務め、ベトナムやネパールでの国際交流プログラム企画・運営を行っている。2019年9月より6か月間ドイツ・ベルリン大学に留学。
——Backstage from “ethica”——
今回の連載は、読者対話型の連載企画となります。
連載の読者と、執筆者の永島さんがオンラインオフ会(ZOOM)で対話をし、次の連載の話題や企画につなげ、さらにその連載を読んだ方が、オンラインオフ会に参加する。という形で、読者との交流の場に育てていければと思います。
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