読者対話型連載「あなたにとってウェルビーイングとは何か」 第15章:前よりも少しだけイイ世界(第1節)
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読者対話型連載「あなたにとってウェルビーイングとは何か」 第15章:前よりも少しだけイイ世界(第1節)

新企画「あなたにとってウェルビーイングとは何か」を担当します永島郁哉と申します。早稲田大学大学院で社会学を研究しながら、休日には古着屋に行ったり小説を書いたりします。

この連載は、ストレス社会に生きる私たちが、ふと立ち止まって「豊かさ」について考えるきっかけとなる、ささいな休憩所のようなものです。皆さんと一緒に、当たり前だと思っていた価値観を一つ一つほどいていく作業が出来たらと思います。

第15章 前よりも少しだけイイ世界

第1節 来たときよりも美しく

“Leave it better than you found it.”

「来たときよりも美しく。」

たまたま自分が被っていた帽子にそう書いてあって、なんだか懐かしい気持ちになりました。小学校の頃、遠足で聞いた記憶があります。どこかの国立公園で、芝生にレジャーシートを敷いて、お弁当を食べているときです。

実際に被っていた帽子

「ゴミを残すな」という意味で用いられることが多いようですが、調べてみると、ボーイスカウトやガールスカウトなどのスカウト運動で頻繁に口にされる言葉のようです。そうなるとやはり、アウトドア活動において、ゴミや傷跡など人間活動の痕跡を自然に残さないようにしよう、という意味なのでしょうか。

ところがよく調べてみると、これはゴミの問題に限った話でもないようです。どうやら引用元は、スカウト運動の創設者、ロバート・ベーデン=パウエルが、スカウトの若者に対して残した遺言らしく、それには次のような「続き」があります。

“Try and leave this world a little better than you found it and when your turn comes to die, you can die happy in feeling that at any rate you have not wasted your time but have done your best.”

「自分が生まれて来たときより少しだけ良い世界を残すよう努めよ。そうすれば、自分が死ぬ番になったとき、時間を無駄に過ごすことなく、最善を尽くしたという気持ちで、幸せに世を去ることができるだろう。」(出典:Internet Archive WayBack Machine http://guidinguk.freeservers.com/B-P.html

「来たときよりも美しく」とは、単に訪れた先の環境のことだけを指して言っているのではなく、この世界全体を意味しているわけです。ここには、個人を超えた社会を見る視点が存在します。

私たちは生まれては去っていく一方で、社会は世代を超えて継続していきます。社会が個の枠組みを超えた部分に存在するとしたら、社会を考えることは今と未来を生きる他者を考えることかもしれません。

「自分は何のために生きているんだろう」とか「自分は社会の役に立っているんだろうか」と悩むときがあるかもしれません。そんなとき、「来たときよりも美しく」という言葉は、一筋の光として機能し得ると私は考えます。「具体的にどうすればいいかはわからないけど、この世界を今よりも少しだけ良くしていくことが、自分のやるべきことなのだ」と気づくと、歩みが軽やかになる気がしませんか。

今回の連載は如何でしたでしょうか。バックナンバーはこちらからご覧頂けます。

[読者対話型連載]あなたにとってウェルビーイングとは何か

永島郁哉

1998年生まれ。早稲田大学で社会学を学ぶ傍ら、国際学生交流活動に携わる。2019年に公益財団法人イオン環境財団主催「アジア学生交流環境フォーラム ASEP2019」に参加し、アジア10カ国の学生と環境問題に取り組んだ他、一般社団法人アジア教育交流研究機構(AAEE)では学生スーパーバイザーを務め、ベトナムやネパールでの国際交流プログラム企画・運営を行っている。2019年9月より6か月間ドイツ・ベルリン大学に留学。

——Backstage from “ethica”——

今回の連載は、読者対話型の連載企画となります。

連載の読者と、執筆者の永島さんがオンラインオフ会(ZOOM)で対話をし、次の連載の話題や企画につなげ、さらにその連載を読んだ方が、オンラインオフ会に参加する。という形で、読者との交流の場に育てていければと思います。

ご興味のある方は、ethica編集部の公式Facebookのメッセージから、ご応募ください。

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抽選の上、次回のオンラインオフ会への参加案内を致します。

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私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
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ethica編集部

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