さまざまな形でレポートしてきた「エシカルファッションカレッジ」。実は開催日の5月10日という日付にも意味があります。それはずばり“コットンの日”。五(こ)ten(テン)で、「コットン」の語呂合せと、夏に向けて綿素材の商品が販売のピークを迎えることから、日本紡績協会が1995年に制定したものです。今回のイベントでもコットン、なかでも「オーガニックコットン」をテーマにしたブースがいくつ出店されていたので、ここでご紹介いたしましょう。
インド・コットン生産地で活動するACE(エース)
エシカルファッションカレッジの主催団体のひとつであるNPO法人ACEも、世界を代表する綿花栽培産地であるインドで活動しています。「貧しい綿花栽培農家では人手の確保が難しく、大人より賃金が低くてすむ子どもたちに労働を強いてしまうという現状があります。そのために子どもたちは義務教育を受けられず成長。また過酷な環境のもとで働いた結果、体を壊すなどして長く働くことができなくなることも。やがて今度は自分たちが親になると、同じことを繰り返してしまう。教育の重要性について十分理解されていないことが負のスパイラルを招いているのです」と子ども支援事業担当の成田由香子さん。「ピース・インドプロジェクト」を起ち上げ、「子どもの教育の徹底」「女の子の自立支援」「おとなの仕事の機会と収入改善」を柱に、コミュニティ全体で、住民自身が子どもの教育を支えられる仕組みづくりを推進しています。
インド人女性の将来自立を支援
「とりわけ深刻なのは女の子なのです」。男の子は家を継ぐという役割があるので、まだ大事にされるケースが多いようですが、女の子はいずれ家を出て嫁いでいく存在。しかもその際に持参金を持たせるのがインドの風習なので、教育は後回し、婚前まで働かされて、家計に少しでも貢献することを求められてしまうそう。
そこでACEは「職業訓練センター」をつくり、女の子たちが基礎教育と縫製の技術訓練を受けられる場を提供。彼女たちが将来自立して生活できるようにサポートしているそうです。
ACEとともにインドの女の子を支援する興和
このACEの取り組みに賛同して、アシストしているのが興和株式会社。「キャベジン」や「バンテリン」などの医薬品が有名で、KOWAのロゴで親しまれている会社ですが、120年前の創業時は綿布問屋。生活関連事業部では、オーガニックコットン製品のブランド「tenerita」などで、自然と共生共存を目的に心の豊かさを求める消費者に商品を届けています。
「綿花栽培農家の収入を向上させたいというACEさんと志は同じ。今回はわが社のオーガニックコットン製のバッグを提供させていただきました」と生活関連事業部の稲垣貢哉さん。そのバッグはインドで、基礎教育と刺繍や縫製の職業訓練を受けた女の子たちに届けられ、刺繍。とても喜んで丁寧な仕事を施した後には、正当な賃金が支払われることになっています。ブースでお披露目されたそのバッグに、購入者も手を加えることで、日本とインドの女性の合作によるオンリーワンのバッグが誕生。そう、この楽しい企画そのものが現地への支援なのです。
また、興和は今後、綿花の種子を購入して農家に配布する計画も。インドの生産地では、種販売会社が一代限りしか収穫できないように遺伝子操作した種子を農薬とセットで農家に販売することが当たり前。農薬の扱いを十分に知らないまま大量に使ってしまうことから、生死にかかわるほどの健康被害を農夫や子どもたちが受けることも珍しくないそうです。興和が渡した種子は、次世代用の種をつけられるもの。農薬とセットではないので、有機栽培にも取り組むことができます。「まだまだはじめの一歩ですが、こうした試みが現地の農家の意識と働く環境が改善されていくきっかけになればと考えています」。
前編はこちらから、http://www.ethica.jp/8055/
取材協力:稲垣貢哉(いながきみつや)
87年、興和(株)入社、現在、開発生産部品質管理課 課長、 Textile Exchange 理事。オーガニックコットン生活用品ブランド「tenerita」
記者:とがみ淳志(とがみあつし)
64年大阪府吹田市生まれ。神戸大学経済学部(国際経済学科)を卒業後、88年株式会社リクルート入社。海外旅行情報誌「エイビーロード」の営業および制作、93年には結婚情報誌「ゼクシィ」の創刊を担当。「ゼクシィ」の多角的運営に携わった後、99年に退社後フリーに。編集、プランニング、ライティングを行う。現在は、食、旅、酒、温泉、別荘、住まいなどの分野が中心。2008年10月より「日本旅のペンクラブ」会員に。2011年11月より理事就任。情報誌や雑誌、機内誌およびホームページなど幅広い媒体を手がけている。
私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp