京都への旅行といって思い浮かぶのは、神社仏閣や、京都市街地にある観光地巡りでしょうか。でも、実はほんの少しの距離を移動するだけで、豊かな自然や食文化、里山の原風景を楽しめて、新たな京都の魅力に出会える「森の京都」に辿り着きます。今回はそんな「森の京都」エリアでもある、亀岡市・南丹市・京丹波町から、癒しテーマにしたウェルネスツーリズムを6つご紹介します。(記者:エシカちゃん)
世界的な観光のトレンド”ウェルネスツーリズム”
コロナ禍を経た令和時代の今、観光のニーズは、かつての観光名所を見に行くサイトシーイング(sight seeing)的観光や「そこで何ができるか」を重視するドゥーイング(Doing)的観光から、現地での交流・体験や、発見・学びを楽しみ「自分自身がどうあるか」を重視するビーイング(Being)的観光に価値感が変化してきているのが特徴です。こうした地域の資源に触れると共に、ヨガや瞑想、食やレクリエーションを楽しみ、自分の心と身体の健康に気づいて活力を得る旅を”ウェルネスツーリズム”とも総称し、近年ではその旅のスタイルが世界中で注目されています。
豊かな食文化の伝統を育む京丹波町で乗馬体験!
京丹波町は、標高917mの長老ヶ岳を初めとする高い山々に囲まれ、8割を占める森林と田畑が広がる土地で、千年以上にわたり京の都の食文化をささえる食材の一大供給地です。豊かな土壌と昼夜の寒暖差によって育まれた農作物はたとえば、「黒大豆」や、黒大豆を早採りした「丹波黒豆の枝豆」、柄の部分が丸くて太い「大黒本しめじ」など、質の高いブランド農作物も多く生産されています。また、猪や鹿に代表されるジビエ料理が味わえるのも魅力の一つです。
そんな食の宝庫でもある京丹波町で、自然を満喫しながら動物との触れ合いも叶うのが、乗馬体験やホーストレッキングができる「タニモトホースランチ」です。
カウボーイが牛を追うために考えられた“ウェスタンスタイル”という乗馬のスタイルを採用しており、長い時間乗っていられる、片手にロープを持っても操作ができるなど、シンプルな操作で馬に乗ることができるため、初心者にもおすすめです。
また、外乗といって馬に乗って、馬場から場外へでていく、いわゆるホーストレッキングも可能なのが都会では叶わないこの土地ならではの嬉しいポイント。京都の里山風景の中をゆったりと巡りながら、イチョウ並木や林道を駆ける約30分の外乗コースから、昼食付きの1日外乗コースまで色々と楽しむことができます。馬とのコミュニケーションをとる楽しさや、乗馬の爽快感を味わいながら自然の中を闊歩するのはまたとない経験となりそうです!
自然の不思議と神秘を感じる、京都府唯一の鍾乳洞「質志鐘乳洞」
同じく京丹波町には、子供も楽しめて京都府指定の天然記念物でもある京都唯一の鍾乳洞「質志(しずし)鐘乳洞」があります。総延長52.5メートル、洞口から最底部までの高低差は25.1メートルもある洞穴は一年を通して内部が12℃から15℃程度に保たれ、コキクガシラコウモリなどの洞窟コウモリ類の重要な生息拠点でもあります。夏には天然のクールスポットとしても多くの人が訪れる場所です。
また、鍾乳洞の周辺は質志鐘乳洞公園として洞窟探検のみならずアウトドアも楽しめるようになっていて、10基のキャンプサイトや2棟のバンガローもあり、持ち込み可能なキャンプ、バードウォッチング、ハイキングなど、自然のなかでの様々なアクティビティが体験可能です。20mのジャンボすべり台や屋外ゲームが楽しめるスポットもあって、ファミリー層が揃って楽しめるのが嬉しいところ。好奇心と冒険心を刺激する洞窟探検とともにぜひ訪れて見たい場所です。
南丹市の芦生原生林で行うネイチャーガイドトレッキングツアー
先ほどの京丹波町にも隣接する南丹市は、日本の原風景の残るかやぶき民家群や日吉ダム周辺の温泉施設など、観光資源が豊富なエリア。さらに、美山川や、大堰川など豊かな清流にも恵まれていて、そのため農作物の宝庫でもあります。美山牛乳、美山銘水、九条ネギ、みず菜、黒大豆、紫ずきんといったブランド京野菜の産地として豊かな食文化を支える基盤となっているのです。
そんな南丹市には、植物分類学者の中井猛之進博士が「植物ヲ学ブモノハ一度ハ芦生演習林ヲ見ルベシ」と書くほど貴重で有名な森、芦生原生林があります。こちらは日本海の宮津に流れ込む延長146kmの由良川が流れ始める源流域で、2016年には「京都丹波高原国定公園 」として国定公園の指定も受けています。
この希少な自然が残る芦生の森を散策するのにおすすめなのが、専属のネイチャーガイドが案内してくれるトレッキングツアーです。
長年京都大学が研究用に保護してきたフィールドを、京都大学と協定を結んだガイド協会認定の、地元の専属ネイチャーガイドが複数のコースに分かれて安全かつ学びを深められる楽しいガイドに連れ立ってくれます。春の淡い芽吹きのシーズンから、森が力強く生い茂る初夏、ブナの紅葉美しい秋のシーズンと、季節ごとに違った見どころがある大自然をぜひ一度体感してみてはいかがでしょう。
美山里山舎・「MIYAMA森の湯治場(とうじば)」で体調を整え心身をリフレッシュ
南丹市の美山町は、かやぶき屋根の民家が現存していて美しい日本の原風景が広がる、のどかな集落。1993年には、重要伝統的建造物群保存地区に選定されている希少な場所です。山とともに生きてきた人々の知恵を学ぶ「伝統食調理体験」や、「わら細工体験」、「トレッキングツアー」など、1年を通してさまざまなイベントが開催されているこの地では、美山に受け継がれる文化と雄大な自然を体感することができます。
この美山町で五感をフルに使って癒しを体験できるおすすめの場所が、美山里山舎の「MIYAMA森の湯治場(とうじば)」です。こちらでは、温泉に浸かるかのように養生ができるようにとの意味が込められているそうで、美山町に残る里山の環境を活かして“健康に暮らす”ためのさまざまな体験が用意されています。
その中の一つ、森の鍼灸院では、鍼治療と箱灸を組み合わせた治療を受けることができます。
箱灸とは、ヨモギから作られた「もぐさ」を丸めて専用の箱に入れ、火を付けたその熱を、お腹や腰へ間接的に当てることにより全身の血行を促進して、症状の緩和を目指すというもの。そして、鍼治療は、舌・脈・お腹などを診て全身の状態を把握し、鍼や灸を使って身体の調子を整え、健康の維持増進を促す、東洋医学の治療法です。箱灸で全身の血液の巡りをよくして、鍼治療で反応のある経穴を刺激することにより、身体の痛みや筋肉の張りなどといった症状の緩和を目指し、身体の調子を整えることが期待できるのです。
こちらの、森の鍼灸院では食事処も併設されていて、美山の素材をたっぷり使ったうどんや親子丼といった食事を楽しむこともできます。里山の美しい眺めを楽しむことができて、夏は涼しい風が通り抜け、秋冬は薪ストーブの炎の灯りやぬくもりを感じられる心地の良い空間で、治療の前後にもゆったりとした時間を過ごせるとのことで、リフレッシュにはぴったりです。
森の鍼灸院の裏山の林道を登ると、森林ヨガを体験できるスペースが見えてきます。
森の緑に囲まれた静謐なロケーションで呼吸を整えることで、エネルギーチャージができそうです。 ※現在休止中のため、再開時期は現地へ要確認
また他にも、森の湯治場では、自然の恵みのアロマ体験も開設が予定されています。森を散策しながら、森や畑のハーブを採取してオリジナルのアロマオイル作りが体験できるのだそう。私にとっての心地良い香りを探りながら、世界に一つだけのアロマ体験をぜひ楽しんでみて。
本格的な穴窯を使って薪窯で焼く、アットホームな陶芸体験
JR京都駅から電車で20分ほどで辿り着く亀岡市。400年以上も前から京の都に木材や穀物、薪炭を供給してきた歴史をもつ亀岡では近年「京野菜」の一大生産地としても発展しており、聖護院かぶや、賀茂なす、えびいもなど、四季を通して旬の食材を楽しむことができます。また、木や石に竹など自然の素材をつかってものづくりに励む職人や、日々作品をつくる陶芸家や作家がたくさん暮らす亀岡は自然と便利さが程よく相まって存在しており、近年では移住を考える若者にも人気の場所なのだそう。
亀岡市内にある亀京窯(ききょうがま)では、一年を通して、小学生から参加できる陶芸教室が開催されます。陶芸家の中井絵夢さんは亀岡の出身で、京都伝統工芸大学校で陶芸を学び、卒業後に兵庫の丹波立杭焼の窯元で5年間修業した経歴の持ち主。故郷である亀岡の地で一年かけて登り窯を自作し、立ち上げた工房が亀京窯です。手掛けるのは、素地土に釉薬をかけずに高温で焼成する「焼き締め」と呼ばれる技法で、釉薬によるガラスコーティングが無いのが特徴。その分落ち着いた風合いが醸し出され、土そのものが持つ表情を楽しむことができるのだそうです。
こちらの陶芸体験者は、自分で製作した器を薪窯で三日間かけて焼き上げる様子を見学することができます。自分で好みの色(土)を選んで、好きな形にアレンジするのは大人も子供も楽しめそう。そして、素材となる土を触って質感や温度を肌で感じながら、出来上がるまでの工程を学べるのは、学びという面からも貴重な体験になりそう。完成した器を持ち帰ってからは、日々の暮らしの中でそれを使って楽しめるところもまた魅力的ですね。
自然の中でワーケーション!亀岡市「SUN神蔵寺」でキャンプや座禅体験
先ほどと同じ亀岡市内で、ワーケーションにおすすめのスポットが「SUN神蔵寺」です。市内のお寺である神蔵寺の敷地内にはアウトドアワーケーションスペースがあり、道具をレンタルしてキャンプやバーベキューを楽しめて、wi-fiも常備されているため自然を楽しみながら快適に仕事ができる仕様にもなっています。静けさや風の音、鳥の鳴き声など自然を感じつつリフレッシュしながらの環境では、仕事もいつもよりはかどりそうです。
他にも寺の本堂で行う「座禅体験」など、参加者同士や地元の方々との交流の場となるようなイベントやお寺ならではの体験が用意されているのも大きな魅力です。
屋外の静かな場所で仕事に集中するもよし、ファミリーで交流体験やアウトドアを楽しむもよし、「何もない」静謐と空間を感じながら瞑想にふけるもよし、それぞれが自分らしくリフレッシュできる時を提供してくれること間違いなしです。
自分に「いいコト」。 心と体が喜ぶ「幸せ時間」。Quality of Life さぁ新しい発見を。 【京都丹波×ウェルネス】
記者:エシカちゃん
白金出身、青山勤務2年目のZ世代です。流行に敏感で、おいしいものに目がなく、フットワークの軽い今ドキの24歳。そんな彼女の視点から、今一度、さまざまな社会課題に目を向け、その解決に向けた取り組みを理解し、誰もが共感しやすい言葉で、個人と世界のサステナビリティーを提案していこうと思います。
私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp