サラヤと関西・大阪21世紀協会が立ち上げたインクルーシブアート事業の事務局を担う、宮本典子
独自記事
このエントリーをはてなブックマークに追加
Instagram
2,165 view
サラヤと関西・大阪21世紀協会が立ち上げたインクルーシブアート事業の事務局を担う、宮本典子

シェアオフィス展示イメージ:泉達也「キノコ」

インクルーシブアートという領域でサラヤと協業し、障がい者の方が制作したアートを貸出するレンタルサービスを展開する新事業「art bridge(アート ブリッジ)」の運営事務局を担うオフィス・エヌ代表の宮本典子氏に、これまでの道のり、事業内容についてお話を伺いました。

建築の道から、好きだったアートの世界へ

宮本典子氏は、大阪を拠点に現代アートのアートコーディネートやコンサルティングを行うオフィス・エヌの代表です。彼女は学部・院生時代は建築を専攻しつつも、仕事としてのキャリアは芸術文化からスタートした経歴の持ち主。会社を設立したのは2011年。展覧会の企画・運営からスタートし、現代美術のアートフェア「ART OSAKA」の事務局などを担いつつも、2015年からは大阪府の障がいのある方のアート作品をマーケットに紹介するプロジェクト「capacious」に取り組みます。

正規の指導を受けていない(いわゆる「アウトサイダー・アート」と言われてきたような)アート作品には面白い表現や時に驚きをもたらす作品が多くあり、その魅力に惹かれるようになったのだそう。ですが、良い作品がたくさんある中で、福祉業界の人々にとって美術の業界は畑違いであり、どうやってマーケットと繋がるのかが分からないという現状が課題であることを知り、自分が橋渡しになれるのではと考えるようになったのだと言います。

サラヤとの出会い

そんな彼女と結びついたのが、同じ大阪を拠点とし、健康や福祉にもゆかりのあるサラヤでした。関西の公益財団法人「関西・大阪21世紀協会」と新しい文化事業の立ち上げを模索していたサラヤが、障がい者アートによる事業構想を持ち、オフィス・エヌと繋がりました。そうして生まれたのが、多様な背景をもつアーティストの作品をレンタルすることで障がい者と企業を結び付け、共生社会の実現を目指すという目的を持った「art bridge(アート ブリッジ)」です。

インクルーシブアートを展開する「art bridge(アート ブリッジ)」

インクルーシブアートとは、障がいがあったり、正規の教育を受けていなくとも、誰でも参加できる芸術活動のことを指します。昨今のビジネスシーンでも、年齢や性別、国籍や心身の障がいの有無に関わらず共生していくという意味合いを示す「インクルーシブ」には注目が集まっています。

有田京子 制作風景

アート ブリッジでは、障がいのある方を中心とする多様な背景を持つアーティストの力のあるアート作品を、オフィスや店舗、病院や公共施設といった場所へ貸し出しをすることが中心事業になります。アートの購入となるとハードルが高くなるため、あえて複製した作品を制作し、トライアルしやすい金額で貸し出すことで、借り手のハードルを下げる。そしてンクルーシブアートを身近に置いてもらうことで、その多様な感性に触れ理解を深める機会を提供すると同時に、障がい者の支援という形でSDGsへの取組みが可能になります。そして、レンタル料の25%をアーティストに還元することで、継続的な収入の確保にも繋がり、障がいのある方の自立支援を実現できるという、双方に大きなメリットのある取り組みになります。

有田京子「スフィンクス」

リストに並ぶ作品たちは、現代アートとして魅力的で力のある作品であることが大前提であり、プロによる選別がなされた上で、表現の密度が高い際立った作品が選ばれるのだそうです。インクルーシブアートだから…、障がい者アートだから…、と言うような作品に対しての妥協はなく、作品の質が高く担保されている点がアーティストの方へのリスペクトでもあると感じます。

柴田龍平「1994-2002」

レンタルする作品を選ぶ際は、自分で選定することも、プロによって選定してもらうおまかせプランを選ぶこともできるのだそうで、飾るスペース等を伝えればコーディネートの相談に乗ってもらえるのも嬉しいサービスの一つです。

泉達也「キノコ」

アートをきっかけに、お互いを尊重しあえるインクルーシブな社会の実現に一歩近づけると思うと素敵ですね。その想いを循環させながら、共生社会への一歩を踏み出したいと思います。

取材:神田聖ら(ethica編集部)

宮本典子

1980年茨城県生まれ。京都府立大学環境デザイン学科卒業、筑波大学大学院芸術研究科修了、ヘルシンキ工科大学 IAP 修了 (ロータリー財団奨学生)。建築を専攻しつつ、美術に対する憧れを抱きながら学生生活を送る。少し長い学生生活を送った為、同級生と同じように建築設計の仕事に携わるより、以前より興味のあった美術分野に進み、建築と美術をつなぐ仕事を行う方が面白いのではないかと考え、留学から帰国後、大阪の現代美術ギャラリーで約6年間勤務する。ギャラリーでは展覧会企画・運営を行う他、現代美術のアートフェア「ART OSAKA」の事務局担当業務も行う。2011年独立後、ART OSAKA 事務局業務を引き継ぐ他、2015年~大阪府の障がいのある方のアート作品をマーケットに紹介するプロジェクト「capacious」にも取り組む。近年の主なものに、2019年「Exploring -共通するものからくる芸術のかけら」展(文化庁委託事業) 企画担当。

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

ethica編集部

このエントリーをはてなブックマークに追加
Instagram
TBS秋沢淳子さん鼎談(第5話)仕事とプライベートの両立
独自記事 【 2022/6/27 】 Work & Study
パシフィコ横浜で開催された「サステナブル・ブランド国際会議2022横浜」(SB 2022 YOKOHAMA)に基調講演の1人として参加されたTBSの元アナウンサーで現在は総務局CSR推進部で部長を務める秋沢淳子さん。 社業以外でも2000年に国際交流・教育支援・国際協力をテーマにしたNGO団体「スプートニクインターナシ...
TBS秋沢淳子さん鼎談(第6話)グローバルとインターナショナルの違い
独自記事 【 2022/7/4 】 Work & Study
パシフィコ横浜で開催された「サステナブル・ブランド国際会議2022横浜」(SB 2022 YOKOHAMA)に基調講演の1人として参加されたTBSの元アナウンサーで現在は総務局CSR推進部で部長を務める秋沢淳子さん。 社業以外でも2000年に国際交流・教育支援・国際協力をテーマにしたNGO団体「スプートニクインターナシ...
TBS秋沢淳子さん鼎談(第2話)Intercultural Programsで異文化体験留学
独自記事 【 2022/6/6 】 Work & Study
パシフィコ横浜で開催された「サステナブル・ブランド国際会議2022横浜」(SB 2022 YOKOHAMA)に基調講演の1人として参加されたTBSの元アナウンサーで現在は総務局CSR推進部で部長を務める秋沢淳子さん。 社業以外でも2000年に国際交流・教育支援・国際協力をテーマにしたNGO団体「スプートニクインターナシ...
冨永愛 ジョイセフと歩むアフリカ支援 〜ethica Woman Project〜
独自記事 【 2024/6/12 】 Love&Human
ethicaでは女性のエンパワーメントを目的とした「ethica Woman Project」を発足。 いまや「ラストフロンティア」と呼ばれ、世界中から熱い眼差しが向けられると共に経済成長を続けている「アフリカ」を第1期のテーマにおき、読者にアフリカの理解を深めると同時に、力強く生きるアフリカの女性から気づきや力を得る...
戦後の日本で衛生環境を改善したサラヤが、何故?アフリカの女性支援活動を始めたのか。安田知加さんに伺いました 〜ethica Woman Project〜
独自記事 【 2024/6/14 】 Love&Human
ethicaでは女性のエンパワーメントを目的とした「ethica Woman Project」を発足。 いまや「ラストフロンティア」と呼ばれ、世界中から熱い眼差しが向けられると共に経済成長を続けている「アフリカ」を第1期のテーマにおき、読者にアフリカの理解を深めると同時に、力強く生きるアフリカの女性から気づきや力を得る...
【ethica Traveler】 連載企画Vol.7 宇賀なつみ (終章)『Returning to TOKYO 〜サステナブルなフライト〜』
独自記事 【 2024/4/24 】 Work & Study
「私によくて、世界にイイ。」をコンセプトに2013年に創刊した『ethica(エシカ)』では、10周年を迎える節目にあたり、エシカルでサステナブルな世界観、ライフスタイルをリアルに『感動体験』する場を特集しています。 今回は、カリフォルニア州サンフランシスコ市のエシカルな取り組みを取材!エシカ編集部と共にサステナブルな...
【ethica Traveler】 連載企画Vol.6 宇賀なつみ (第5章)ゴールデン・ゲート・ブリッジ
独自記事 【 2024/3/27 】 Work & Study
「私によくて、世界にイイ。」をコンセプトに2013年に創刊した『ethica(エシカ)』では、10周年を迎える節目にあたり、エシカルでサステナブルな世界観、ライフスタイルをリアルに『感動体験』する場を特集しています。 今回は、カリフォルニア州サンフランシスコ市のエシカルな取り組みを取材!エシカ編集部と共にサステナブルな...
【ethica Traveler】 連載企画Vol.5 宇賀なつみ (第4章)サンフランシスコ近代美術館
独自記事 【 2024/3/20 】 Work & Study
「私によくて、世界にイイ。」をコンセプトに2013年に創刊した『ethica(エシカ)』では、10周年を迎える節目にあたり、エシカルでサステナブルな世界観、ライフスタイルをリアルに『感動体験』する場を特集しています。 本特集では、カリフォルニア州サンフランシスコ市のエシカルな取り組みを取材!エシカ編集部と共にサステナブ...
【ethica Traveler】連載企画Vol.4 宇賀なつみ (第3章)アリス・ウォータースの哲学
独自記事 【 2024/2/28 】 Work & Study
「私によくて、世界にイイ。」をコンセプトに2013年に創刊した『ethica(エシカ)』では、10周年を迎える節目にあたり、エシカルでサステナブルな世界観、ライフスタイルをリアルに『感動体験』する場を特集しています。  今回は、カリフォルニア州サンフランシスコ市のエシカルな取り組みを取材!エシカ編集部と共にサステナブル...
【ethica Traveler】連載企画Vol.3 宇賀なつみ (第2章)W サンフランシスコ ホテル
独自記事 【 2024/2/14 】 Work & Study
「私によくて、世界にイイ。」をコンセプトに2013年に創刊した『ethica(エシカ)』では、10周年を迎える節目にあたり、エシカルでサステナブルな世界観、ライフスタイルをリアルに『感動体験』する場を特集しています。 今回は、カリフォルニア州サンフランシスコ市のエシカルな取り組みを取材!エシカ編集部と共にサステナブルな...
【ethica Traveler】連載企画Vol.2 宇賀なつみ (第1章)サンフランシスコ国際空港
独自記事 【 2024/1/31 】 Work & Study
「私によくて、世界にイイ。」をコンセプトに2013年に創刊した『ethica(エシカ)』では、10周年を迎える節目にあたり、エシカルでサステナブルな世界観、ライフスタイルをリアルに『感動体験』する場を特集しています。 今回は、カリフォルニア州サンフランシスコ市のエシカルな取り組みを取材!エシカ編集部と共にサステナブルな...
【ethica Traveler】連載企画Vol.1 宇賀なつみ サンフランシスコ編(序章)   
独自記事 【 2024/1/24 】 Work & Study
「私によくて、世界にイイ。」をコンセプトに2013年に創刊した『ethica(エシカ)』では、10周年を迎える節目にあたり、エシカルでサステナブルな世界観、ライフスタイルをリアルに『感動体験』する場を特集しています。  今回は、カリフォルニア州サンフランシスコ市のエシカルな取り組みを取材!エシカ編集部と共にサステナブル...
【Earth Day】フランス商工会議所で開催するイベントにてethica編集部が基調講演
イベント 【 2023/4/3 】 Work & Study
来たる4月22日は「アースデイ(地球の日)」地球環境を守る意思を込めた国際的な記念日です。1970年にアメリカで誕生したこの記念日は、当時アメリカ上院議員だったD・ネルソンの「環境の日が必要だ」という発言に呼応し、ひとりの学生が『地球の日』を作ろうと呼びかけたことがきっかけでした。代表や規則のないアースデイでは、国籍や...
トランスメディア方式による新しい物語~『サステナブルな旅へようこそ!――心と身体、肌をクリーンビューティーに整える』(序章)と(第1章)の見どころを紹介!~
独自記事 【 2023/8/17 】 Health & Beauty
エシカではメディアを横断(トランス)するトランスメディア方式を採用し、読者の方とより深くつながる体験を展開しています。今回は、「サステナブルな旅へようこそ!――心と身体、肌をクリーンビューティーに整える」の序章と第1章についてのあらすじと見どころをお届け!(記者:エシカちゃん)
トランスメディア方式による新しい物語~『サステナブルな旅へようこそ!――心と身体、肌をクリーンビューティーに整える』(第2章)と(第3章)の見どころを紹介!~
独自記事 【 2023/8/24 】 Health & Beauty
エシカではメディアを横断(トランス)するトランスメディア方式を採用し、読者の方とより深くつながる体験を展開中。さまざまなメディアから少しずつ情報を得、それをパズルのように組み合わせてひとつのストーリーを見出す、新しいメディア体験です。 今回は、前回に引き続き、「サステナブルな旅へようこそ!――心と身体、肌をクリーンビュ...
テーマは、ナチュラルモダン『自立した女性』に向けたインナーウェア デザイナー石山麻子さん
独自記事 【 2022/9/19 】 Fashion
株式会社ワコールが展開する、人にも自然にもやさしいを目指すインナーウェアライン「ナチュレクチュール」。オーガニックコットン100%のラインアップが注目を集め、肌あたりやシルエットの美しさが話題になっています。その期待に応える形で、今年9月に新作グループも加わりました。やさしさを突き詰めた製品は、どのような想いや経緯から...
幸せや喜びを感じながら生きること 国木田彩良
独自記事 【 2021/11/22 】 Fashion
ファッションの世界では「サステナブル」「エシカル」が重要なキーワードとして語られるようになった。とはいえ、その前提として、身にまとうものは優しい着心地にこだわりたい。ヨーロッパと日本にルーツを持ち、モデルとして活躍する国木田彩良さんに「やさしい世界を、身に着ける。」をテーマにお話を聞いた。
[連載企画]冨永愛 自分に、誰かに、世界にーー美しく生きる。 【Prologue】
独自記事 【 2021/3/1 】 Health & Beauty
20年以上、トップモデルとして活躍。究極の美の世界で生きてきた冨永愛さん。ランウェイを歩くその一瞬のために、美を磨き続けてきた。それは、外見だけではない。生き方、生き様をも投影する内側からの輝きがなければ、人々を魅了することはできない。「美しい人」冨永愛さんが語る、「“私(美容・健康)に良くて、世界(環境・社会)にイイ...
水原希子×大谷賢太郎(エシカ編集長)対談
独自記事 【 2020/12/7 】 Fashion
ファッションモデル、女優、さらには自らが立ち上げたブランド「OK」のデザイナーとさまざまなシーンで大活躍している水原希子さん。インスタグラムで国内上位のフォロワー数を誇る、女性にとって憧れの存在であるとともに、その動向から目が離せない存在でもあります。今回はその水原さんに「ethica」編集長・大谷賢太郎がインタビュー...
[連載企画]冨永愛 自分に、誰かに、世界にーー美しく生きる。 【chapter1-1】
独自記事 【 2021/3/29 】 Health & Beauty
ファッションデザイナーが描く世界を表現するモデルは、まさに時代を映し出す美の象徴だ。冨永愛さんは移り変わりの激しいファッション界で、20年以上にわたり唯一無二の存在感を放ち続ける。年齢とともに磨きがかかる美しさの理由、それは、日々のたゆまぬ努力。  美しいひとが語る「モデル」とは?
モデルのマリエが「好きなことを仕事にする」まで 【編集長対談・前編】
独自記事 【 2018/12/24 】 Fashion
昨年6月、自身のファッションブランドを起ち上げたモデル・タレントのマリエさん。新ブランド「PASCAL MARIE DESMARAIS(パスカルマリエデマレ、以下PMD)」のプレゼンテーションでは、環境に配慮し無駄を省いた、長く愛用できるプロダクトを提案していくと語りました。そして今年9月、ファッションとデザインの合同...
国木田彩良−It can be changed. 未来は変えられる【Prologue】
独自記事 【 2020/4/6 】 Fashion
匂い立つような気品と、どこか物憂げな表情……。近年ファッション誌を中心に、さまざまなメディアで多くの人を魅了しているクールビューティー、モデルの国木田彩良(くにきだ・さいら)さん。グラビアの中では一種近寄りがたい雰囲気を醸し出す彼女ですが、実際にお会いしてお話すると、とても気さくで、胸の内に熱いパッションを秘めた方だと...
【Earth Day】今年も地球環境について考えよう!「在日米国商工会議所」と「在日フランス商工会議所」が主催するethicaコラボイベントのご案内
イベント 【 2024/4/15 】 Work & Study
地球環境について考え連帯する国際的な記念日、アースデイが今年も近づいてまいりました! 私たちethicaは、2022年、2023年とアースデイイベントに基調講演を行い、3度目となった今年もメディアパートナーを務めます。2023年のアースデイを振り返りつつ、まもなく開催のイベント『Earth Day 2024: Movi...

次の記事

キティちゃんが発信するSDGsの YouTubeチャンネル「住み続けられるまちづくり」編
プラスチックの量を削減したエコフレンドリーなBE@RBRICK

前の記事

スマホのホーム画面に追加すれば
いつでもethicaに簡単アクセスできます