[エシカ編集部 体験企画]帝国ホテル 東京が披露宴で提供する植物性食品のみで構成したサステナブルコース料理「Espoir(エスポワール)」
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[エシカ編集部 体験企画]帝国ホテル 東京が披露宴で提供する植物性食品のみで構成したサステナブルコース料理「Espoir(エスポワール)」

今でこそ当たり前のように行われているホテルウェディング。ホテル館内で挙式と披露宴を行うといった馴染みのスタイルを、実は日本で初めて考案したのが帝国ホテルであり、その時代は1923年に開業した二代目本館ライト館の時代まで遡ります。

業界を牽引する使命感すらも感じさせる帝国ホテル 東京が、多様化する現代の価値観を尊重する形で、ホテルウェディングに新たなコンセプトを打ち出しました。その一つが婚礼メニューのリニューアル。中でも編集部が注目するのは植物性食品のみで作られたサステナブルコースの「Espoir(エスポワール)」です。今回そのコース料理の 6皿  (冷前菜、温前菜、スープ、メイン2品、デザート) を体験してきました。

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初めに振る舞われたのは食前酒。こちらは事前に希望する食材を選ぶことが可能で、例えば結婚式の時には新郎新婦の出身地をイメージした食材を(青森だったらリンゴ、山梨ならブドウ…、と言ったように)かけ合わせて作るドリンクとして演出できるなど、日頃の婚礼でも人気のものなのだそう。お二人の育った背景に想いを馳せながらゲストたちの会話にも花が咲きそうな、楽しい試みの一品です。

サステナブルな婚礼コース メニューの全容をご紹介

エスポワールメニューの前菜として登場するのはグリーンアスパラガスのジュが添えられた色とりどりの野菜のパレット。30種類もの野菜やハーブや食用花が新鮮に盛り込まれ、見た目にも華やかな一皿がこれからの気持ちを盛り上げます。使う食材は季節によって変化し、その時期に美味しいもので構成されるとのことで季節感も楽しめます。今回は春夏メニューでしたが、秋冬にはビーツの鮮やかなソースが用意されるのだそうです。

グリーンアスパラガスのジュが添えられた、色とりどりの野菜のパレット

続いてサーブされたのはトリュフとペカンナッツにレモンオイルの香りが芳しい、青豆のニョッキです。グリーンのソースの中の大きめのニョッキにトリュフやナッツがアクセントとして添えられ、柔らかいニョッキとの味や食感の相性が抜群。ニョッキといっても卵やチーズは使わずプラントベース仕様となっています。次いでスープメニューのベジタブルポタージュは、パリッとしたパイ生地がアクセントに添えられ、優しい味が口の中でなめらかに広がります。まだコースの前半なのに満足感でいっぱいに。

トリュフとペカンナッツにレモンオイルの香りが芳しい、青豆のニョッキ

パリッとしたパイ生地がアクセントに添えられた、ベジタブルポタージュ

メインの一品はズッキーニの丸ごとグラタン。スーパーフードのキヌアが使用され、ズッキーニの中で細かく刻まれた野菜と共に、さまざまな食感が楽しめます。もちろんグラタンといえど乳製品は使用せず豆乳ベースで作られています。メイン二品目はグリーンケールを纏ったスペルト小麦のミジョテ。ケールがそのまま覆いかぶさっている見た目に驚きのある一皿です。アクセントに緑胡椒が加わり、ケール=苦い、というイメージを払拭させるような香ばしさを感じます。使用されているスペルト小麦は、“古代小麦”とも言われる、古代から食べられてきた小麦の原型に近い品種のことで、ミネラルが豊富で栄養価が高いことや、小麦アレルギーの反応も起こしにくい健康志向であることも特徴になります。このスペルト特有の香ばしさも味に一役買っているのでしょう。

ズッキーニの丸ごとグラタン

グリーンケールを纏ったスペルト小麦のミジョテ

楽しみだった最後のデザートは、豆乳クリームを使用したジュレ。口溶け滑らかに、程よい甘さと軽さのジュレが気持ちまで満たしてくれます。味は2種類(「ココナッツのクランチと味わう苺のジュレ」、「ナッツのクランチと味わうコーヒージュレ」)から新郎新婦が選んだどちらかのメニューが振る舞われます。

豆乳クリームを使用した「ココナッツのクランチと味わう苺のジュレ」

豆乳クリームを使用した「ナッツのクランチと味わうコーヒージュレ」

フランス料理らしくサステナブルを実践すること

どのお料理も、植物性食品でしか作られていないということが意外に思うほど変化に富んでいて、満足度が高く、全てを食べ終わるころには心地の良い満腹感がありました。お肉やお魚といった料理がない分、胃に負担がかかっている心地がしない点は、子供から年配の方までが幅広く安心して味わえる設計がなされていると感じます。第14代東京料理長の杉本雄シェフによると、フランス料理はとてもサステナブルの概念と親和性があるのだとか。例えば主となる切り身を取り出す上で出る食材の端材やスジから出汁を取ったりソースを取ったりと、今でいうフードロス削減に繋がるようなことや、食材を余すところ無く使用する調理法を当たり前に行っています。さらに、地方料理の集合体でもあるフランス料理は、その土地の食材で構成されている循環された里山料理と同異義なのだそう。今回、バターやチーズと言ったフランス料理に欠かせない王道の素材を使わずに、かつフランス料理らしさを損なわせないためのレシピ作りはチャレンジングだったそうですが、素材の持ち合わせる旨みを十分に理解する事により、動物性食品に頼る事なく味の骨格を作りだし、同要素を持つ代替品を用意することは不可能ではないのだと言います。まさに物質の変化を研究する化学と、料理というものはイコールなのだなと納得できるお話です。

「フランス料理とサステナビリティ」について、熱心に語ってくださいました。帝国ホテル 東京 第14代料理長 杉本雄氏。

これまでも帝国ホテル 東京ではヴィーガンメニューの拡充や、「もったいないバナナプロジェクト」に賛同したスイーツの開発など、フードロス削減に寄与するような商品開発を積極的に行っており、こうして婚礼メニューでサステナブルコースを新設するという新たな取り組みへかける思いもひとしお。ホテルウェディング発祥の帝国ホテルがまさに新たな主流を作っていこうとする試みはオルタナティブアートにも通ずるものを感じます。今回のエスポワールコースでは、列席人数分の食事がTFT(※注)を通じて開発発展途上国の子どもたちへとおくられるとのことで、徹底したサステナブルへの誠意が見えることも好印象でした。

ウェディングは、新郎新婦二人が今まで生きてきた中で支えになったりお世話になったりした人々への感謝の気持ちを伝えると共に、新しく選んだ人生の軌跡を報告・宣言する場でもあります。その記念の瞬間に、おいしさで社会を良くする選択肢が一つ増えたことはとても嬉しいこと。安定した供給など、まだ課題はあるとは思いますがニュースタンダードとして世に広まっていくことを願ってやみません。

文:神田聖ら(ethica編集部)

(※注)TABLE FOR TWOの略称。直訳すると「二人のための食卓」。ご宴会列席人数分の給食を飢餓のある国の子どもたちに贈るチャリティープログラム。

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