港区・白金からワインの魅力を発信するワインスクールとワインショップを運営している「サンク・センス(CINQ SENS)」。同じく白金で、季節の旬の食材を厳選して作るクリエイティブなコース料理を信念とこだわりを持って提供する、クラシックフレンチと自然派ワインのレストラン「テチュ-Têtue.〜classique et nature〜」。今回、サンク・センス主催のもと第1回目となるフランス料理の郷土料理とワインを楽しむディナー会がテチュにて開催され、編集部が体験してきました!

港区・白金からワインの魅力を発信するワインスクールとワインショップを運営している「サンク・センス(CINQ SENS)」。同じく白金で、季節の旬の食材を厳選して作るクリエイティブなコース料理を信念とこだわりを持って提供する、クラシックフレンチと自然派ワインのレストラン「テチュ-Têtue.〜classique et nature〜」。今回、サンク・センス主催のもと第1回目となるフランス料理の郷土料理とワインを楽しむディナー会がテチュにて開催され、編集部が体験してきました!
第1回目の開催となる今回、テーマに選ばれたのは「アルザス地方」でした。アルザスはフランスの中でも北東の端に当たり、流れるライン川がドイツに、南端がスイスに接している地域になります。その境目に位置するという地理的な側面や、鉄鉱石と石炭を産出するといった特性などから、しばしばフランスとドイツの間では係争地となってきた大変な歴史もあり、学生時代に世界史を専攻していた人にとってはアルザス=ロレーヌ地方という名前は耳覚えがあるかもしれませんね。こうした背景から、この地方にはドイツとフランス双方が融合した独特の文化が見られます。
サンク・センス代表の松浦尚子さん
アルザスの東側の山麓にはワイン街道と呼ばれるなだらかな丘陵(きゅうりょう)地帯が広がり、コルマールをはじめとする、運河やメルヘンな建物が情緒あふれる町が観光地としても人気です。主催者であるサンク・センス代表の松浦尚子(なおこ)さんはフランスに5年間滞在され、世界の権威であるボルドー大学ワイン醸造学部が主宰する(日本人では数少ない)ワインテイスター専門家資格も取得されているという真のワインプロフェッショナルなお方!昨年もアルザスに訪れたばかりとのことで、現地の写真を投影しながらレクチャーをしていただきます。キャンセル待ちも出るほど好評だった今回のイベント参加者にはアルザスを訪れたこともある方もちらほら見受けられ、集まる人たちの熱量の高さを感じます。
普段あまり意識することはありませんが、実はフランスはとても緯度が高く、南仏の地中海に臨む第2の都市マルセイユと同じ緯度のあたりに、日本の北海道が位置しています。パリやアルザスはフランスの中ではより北にあるため、とても冷涼な気候であることが分かります。とはいえ、ヨーロッパ全体が面する大西洋側には、北大西洋海流という暖流が流れているため、寒すぎるということはなく、冬でもブドウの樹を維持できます。春から秋にかけては高い緯度により、長く、十分な日照量が確保でき、美味しいワインを造ることができるという地の利があるのです。そんなアルザスの写真や、フランス全土の地図を見ながらお話を聞いているところへ次々とワインにピッタリな料理が運ばれてきます。
タルトフランベ フロマージュブランと玉ねぎ、ベーコンのアルザス風ピザと、ワインは70%がピノ・ブランのクレマン・ダルザス エクストラ・ブリュット 2020(アルベール・マン)
岩手県産宮古サーモンと季節野菜のテリーヌ エシャロットのヴィネグレット 合わせるワインはジョンティ・ダルザス メティス 2022(ボット・ゲイル)
シュークルート・ガルニ 越後もち豚の自家製ベーコン、スネ、バラ肉のコンフィ ストラスブールソーセージ添えは白ワインのリースリング 2022(マルセル・ダイス)と共に
マンステールのカナッペ クミンの香り
赤ワインのサン・イポリット ルージュ 2022(マルセル・ダイス)とペアリング
ラム酒とコニャックを効かせたクグロフ 自家製白桃のクレーム・グラッセ添え ラストは甘口のゲヴェルツトラミネール グラン・クリュ “シュタイネール” 2012(ポール・ウンブレシュト)と共に
一つ一つのワインのテロワールや味わいを細やかに解説しながら、合わせて丁寧に創られたお料理を口に運ぶたびに味わいが深まり、お腹と同時に知識も満たされ充足感が高まるのを感じます。大地のパワーをそのまま頂いているようで、ワインの力も相まってパワーがみなぎる心地がしてきました。
近年、食にまつわるものの中では「ガストロノミー」という概念が認知されつつありますが、その定義の一つには本当の美味を知るための『実践的な知』が必要であると言われています。その国の文化を学び、土地を学び、素材を意識しながら料理とワインを味わっていくこの時間が、まさにガストロノミーの本質に触れていると思わせる、質の高い経験なのかもしれない。そんなことを思いながら食事を楽しみつつゆったりと時間が過ぎていきました。今回参加した企画は第1回目のアルザス地方編ということでしたが、また別の地域をテーマとした新たなディナーの機会があることにも期待大!それまでにワインやフランスについて予習をして次回に備えておこうと思います。
文:神田聖ら(ethica編集部)
主催者:松浦尚子(フランス ボルドー大学 公認ワインテイスター)
神戸大学教育学部卒、ベネッセに勤務。1997年に渡仏し、世界的な権威を持つボルドー 大学ワイン醸造学部で日本人では数少ないワインテイスター資格を取得。広島県の第3 セクターワイナリー設立にかかわり、米国・ボストンの投資会社に籍を置き日仏間で働く。 難関フランス文部省認定のフランス語資格DALFを全て取得。5年間のフランス滞在後、 帰国。2003年4月に有限会社サンク・センスを設立、代表取締役に就任する。
主催:サンク・センス(ワインスクールとワインショップ)
共催:テチュ クラシック エ ナチュール(白金に佇むクラシックフレンチとワインを楽しむレストラン)
<参考文献>
福井憲彦 稲葉宏繭『世界歴史の旅 フランスⅠ』 山川出版社 2005
尾家建生 高田剛司 杉山尚美『ガストロノミーツーリズム 食文化と観光地域づくり』学芸出版社 2023
私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp
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