映画『繕い裁つ人』の完成披露舞台挨拶が12月11日に東京・新宿ピカデリー行われました。講談社「ハツキス」で人気連載されてる渡辺葵のコミックを原作に『しあわせのパン』や『ぶどうのなみだ』を手がけた三島有紀子監督が映画化しました。神戸の坂の上に佇む祖母が始めた仕立て屋「南洋裁店」を受け継いだ二代目店主の市江。彼女が古びたミシンで仕立てる洋服はとても人気なのですが、職人スタイルを受け継いで、手作りの一点ものに拘るがゆえ、百貨店企画部の藤井からのブランド化の依頼には全く興味を示しません。市江の特別な拘りは「世界で一着だけ、一生のもの」この頑固に自らの志を貫く市江役を日本を代表する女優である中谷美紀が演じました。
ー先ずズバリ、仕立て屋の映画を撮ろうと思った理由と、主人公の市江役に中谷さんを選ばれた理由を教えて頂けますでしょうか?
三島監督: もともと父親が持っている服が少なくてですね。全てオーダーで神戸のテーラーさんに作ってもらっていたんです。その父親の口癖が「私は職人の誇りを纏っているんだ。」と、ずっと言っていて、いつか仕立て職人の生き様を映画にしようと、取材をしたり、オリジナルストーリーを考えたりしていたのですが、そんな時に池辺先生の『繕い裁つ人』とうい漫画をみつけて、「なんて素敵な主人公だろう。」と思ったのが切っ掛けです。
ーそして、中谷さんを選ばれた理由は?
三島監督: 私が寄り添いたいと思った主人公の市江は”頑固じじい”と言われるほど拘りが強く、自分の持っている最高の技術で服を作る、誇り高き職人なので、そういう生き方をしていらっしゃる女優さんは誰だろう。更には、そこに立っているだけで、空気が凛として、静寂な空間になる。そんな人は誰だろうと思った時に、ふと、ミシンを踏む中谷美紀さんが頭に浮かんできて口説きにいきました。
ー皆さんもお気づきかも知れませんが、キャストの皆様には、本作に因んで「今日の為の特別な一着」で登壇頂いています。
中谷さん、ウエストの辺りなど色んな工夫がされていますが、拘りはどういったところでしょうか?
中谷さん: 私には市江にそっくりの22歳からお互いに友情を育んできた大切な友人がおりまして… その友人がこの作品を観て、市江のイメージと、三島監督への尊敬の念と、そして、女優としての中谷美紀を鑑みて、彼女がデザインして、作ってくださった洋服です。
ーそれでは順番にお伺いしていきましょう。
三浦さん: 僕は、元々スポーツをやっていたので、既成のですとピッタのリサイズがなくて、仕事をはじめて間もない頃にスタイリストさんに作って頂いたスーツです。原点回帰をしよと着てみました。
片桐さん: 私は、ボタンやレースも販売する雑貨屋さんの役柄だったので、古着のお母さんが作ったみたいな緑のワンピースがあったので、ボタンやレースを付けてみました。一点ものです。
黒木さん: 私は黒が好きで、私服でも黒が多いのですが、劇中でウエディングドレスを初めて着させて頂いたので、チュールの近いものを着てきました。
杉咲さん: 私は、ゆきちゃんが、劇中で水色の洋服を着ていたので、それに近づけた洋服を用意していもらいました。ブローチがワンポイントです。
中尾さん: 今日はお偉いさんと対談していたもので、かちっとした格好なんです。本日お初の一着です。
ーそして、伊武さんいかがでしょうか?
伊武さん: 洋裁店の話という事で、裏切った意味で和のテイストにしてみました。スーツの生地で京都で作っているんですけど、日本人として、着ていて気持ちいい一着です。
ー皆さま様々ですが、三島監督いかがでしょうか?
三島監督: 私の母も足踏みミシンで洋服を作っていて、生まれて初めて作ってもらったのが白いワンピースだったんです。その時に世界でたった一つの自分だけの洋服はこんなに嬉しいんだと思って… あの時の気持ちを思い出そうと白いワンピースを選んだのですが、真っ白は恥ずかしくて… 裏返しにして着ています。ブレスレットは友達が貸してくれました。
ー本作では、美味しいスイーツが登場しますが、撮影中は、中谷さんが炊き出しをしてくださった事もあるとお聞きしましたが、何を作っていただいたのですか?
中谷さん: 人前で披露する程のものではないのですが、鴨団子汁ですとか。でも私だけではなくて、16日間というタイトな撮影期間の中、私たちは神戸牛を食べていない事に気づきまして、三浦貴大さんが神戸牛と淡路のタマネギで神戸ビーフカレーを作ってくださって、美味しかったですよね。
杉咲さん: 美味しかったです〜。
ー三浦さんは、お料理されるんですね。
三浦さん: しますね!でも、ちょっと時間が掛かってしまって申し訳ない感じだったのですが、凝ったものを作ろうと思って頑張ってました。
ー貴重なエピソードありがとうございました。
ー皆様を代表として、三島監督と中谷さんから最後にメッセージを頂きたいと思います。三島監督からお願いします。
三島監督: そうですね。本当に、この『繕い裁つ人』という作品は、大切に、大切に、私自身作ってきましたし、この方々に演じてもらいたいという役者さん皆さんに演じて頂き、またスタッフ皆で頑張って、頑張って作り上げた作品ですので、沢山の人に楽しんで頂けたら嬉しいです。どうか楽しんで下さい。
ーそれでは中谷さんお願いします。
中谷さん: この作品は洋服を作る職人をテーマにしていますけで、それと同時に日本中で、こうしてコツコツと、もの作りを続けている全ての職人さん達への讃歌だと思ってます。
市江という人は頑固に自らの志を貫きますが、その一方で、この作品でお伝えしたかった事は、何か限界とか枠は自ら設けてしまって、その限界を超えられなかったり、枠を超えられないことがあると思うのですが、でも、ちょっと視点を変えれるだけで、新たな扉が開くという事を皆様にお伝え出来ればと思っています。
是非これから観る『繕い裁つ人』をどうぞ、皆様の愛情で包んで頂ければ嬉しいです。本日は有り難うございました。
映画『繕い裁つ人』
1月31日(土)より、新宿ピカデリー、ヒューマントラストシネマ有楽町他全国順次ロードショー!
(C)2015 池辺葵/講談社・「繕い裁つ人」製作委員会、配給:ギャガ
キャスト:中谷美紀、三浦貴大、片桐はいり、黒木華、杉咲花、中尾ミエ、伊武雅刀、余貴美子
■公式サイトはこちら:http://tsukuroi.gaga.ne.jp
主題歌は、平井堅が今年5月にリリースしたコンセプトカバーアルバム「Ken’sBarIII」に収録されている「切手のないおくりもの」
ーーBackstage from “ethica”ーー
豊かで便利になった一方、作り手に対する想いまでもが簡素化しつつある現代において、もう一度ものづくりや古き良きものについて見つめ直そうと思い起こさせるエッセンスが詰まった作品です。また、神戸の旧グッゲンハイムや川西市郷土館といった歴史的建造物など、美しいロケーションも見所の一つとなっています。エシカの読者にきっと共感頂ける映画なので、是非、映画館でご覧ください。(ethica編集長:大谷賢太郎)
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私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp