<ethica編集長対談> 増田セバスチャン「アートには世界を変える力がある」
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<ethica編集長対談> 増田セバスチャン「アートには世界を変える力がある」

アートディレクター 増田セバスチャン氏 Photo=YUSUKE TAMURA (TRANSMEDIA)

「THE BODY SHOP表参道店」のオープン25周年を記念し、同店とアートディレクター・増田セバスチャン氏とのコラボレーションが実現、10月15日から増田氏がデザインしたスペシャルパッケージの9アイテムを数量限定で発売しています。

今回のコラボレーションは、日本の流行発信地・原宿から新しいカルチャーを生み出してきた「THE BODY SHOP」の創業者であるアニータ・ロディック氏が掲げた「企業には世界をよくする力がある」という価値観に対して、原宿kawaiiカルチャーの第一人者であり、「アートには世界を変える力がある」というメッセージを発信し続けてきた増田氏が共感し実現したものです。

今回、そんな増田氏とethica編集長の大谷が対談しました。

大谷 初めまして。ethica編集長の大谷と申します。
最初に、増田さんのものづくりへの想いをお聞かせ願いますか?

増田 皆さんにとって、僕がこれまでやってきたデザインというのは原宿のちょっとカラフルで奇抜で、そして派手すぎるものというイメージがあると思いますが、それは色の持っている力を増幅しているのです。
今回、THE BODY SHOPさんとコラボすることになって、僕が考えたことは、一度本質に返ってみて、色とはいったい何なのだろうということでした。今、世の中にはプラスチック製品とか化学繊維、CGといった人工的なものがあふれています。それは、私たちが生活をしていく上では、たしかに便利なものではありますが、一回、それをなくした中で色というものを作れないかということに挑戦しました。

アートディレクター 増田セバスチャン氏 Photo=YUSUKE TAMURA (TRANSMEDIA)

大谷 それは、いわゆる逆転の発想ということですね。どうして、そのような考えが生まれてきたのでしょうか?

増田 THE BODY SHOPさんという会社は、容器とか中身とか全てにおいて地球環境に配慮することを大切にしていて、僕もその点をリスペクトしていました。ですから、一緒に何かを作るのであれば、普段は素材に制限を設けずに色を扱っているけれども、今回はナチュラルなもので構成できないかということで考えたわけです。
それで、最初はオーガニックコットンを染めるところから始めて、ウッドビーズとか和紙とかを素材にしました。今回のコラボレーションを通じて、伝統的な技術を駆使すれば、色は再現できるんだなということが分かりました。

アートディレクター 増田セバスチャン氏 Photo=YUSUKE TAMURA (TRANSMEDIA)

大谷 THE BODY SHOPさんは、男性よりも女性のお客さんが多いですし、増田さんのファンは、10代や20代の若い人たちが中心です。彼女たちは、まさにデジタルやCGの世界で生きている人たちですが、そういう彼女たちにとって伝統的な素材というものは、新しい提案になったのではありませんか?

増田 ええ、おっしゃる通りです。彼女たちにしてみれば、それはとても新鮮なものでしたでしょうし、自分にとってもアーティストとして色というものを見つめ直すいいきっかけになったのではないかと思っています。
色に限らず、僕が肯定するものというのは20代向けとか大人向けとか、そういうことにはあまり関係がなくて、ものが持つ力に僕は引き寄せられているのです。
僕は、いつの時代でも、ものには魂が宿っていると思っていて、例えば、道端のお地蔵さんにも魂というか、何か神秘的なものがあるんですよ。そういう意味では、一つ一つ手作りされたものは、大量生産のものよりも迫力があると思います。
今の時代というのは、そういうものをコラージュするのは、当然デスクトップ上で簡単にできるのですが、それをあえて実際に作ることで、デスクトップでは再現できない訴求力が生まれてくるのではないでしょうか? それは20代とか大人とかには全く関係のない大きな力だと思いますね。

アートディレクター 増田セバスチャン氏 Photo=YUSUKE TAMURA (TRANSMEDIA)

大谷 私たちethicaが読者に訴えかけているメッセージの一つに「ものづくりにはストーリーがあり、ストーリーのあるものにはメッセージがある」ということがあるのですが、今の増田さんのお話は、その点にも通じるものがありますね。

増田 その通りです。
ものというのは、そこに存在している限り、他のいろいろなものとつながっていて、そこから生まれてくるストーリーともつながっているんですよ。
ものづくりの原点は、デスクトップ上で終わらせてしまうのではなくて、実際に手を動かして作るということが大事なのです。実際に手を動かすと、時には頭ではなく手が考えてくれるということもありますからね。僕は、そういう偶然性とか、逆にものに操られるということも大切にしているのです。

大谷 若者文化にお詳しい増田さんにお聞きしたいのですが、最近、世の中のデジタル化がますます進んでいます。そうした中、寄り戻しの時期に入っているのではないかとも思うのですが、その点はいかがでしょうか?

増田 技術や科学が進むというのは、もちろんひじょうにいいことです。しかし、同時にコントロールできないものも世の中にはたくさん存在するわけです。
ものづくりをしていく上で、そこにこれを配置したいと思っても、自分自身ではコントロールできないところがどこかにあって、それでも、ものはでき上がってきてスピリットを持ち始めるわけです。
つまり、世の中がいくらデジタル化しても、コントロールできないことがあるのです。それをきちんと理解することによって、私たちの生活はもっと便利で、暮らしやすくなるのではないですかね?

アートディレクター 増田セバスチャン氏 Photo=YUSUKE TAMURA (TRANSMEDIA)

大谷 たしかにデジタル化が進んで、世の中は便利になりましたが、反面、フェイストゥフェイスのコミュニケーションには複雑で難しいところがあります。しかし逆に、それが面白みだったりする部分があるのは、コミュニケーションでもデザインでも同じかもしれませんね。
ところで、ethicaはコンセプトとして「私によくて、世界にイイ」ということを挙げているのですが、増田さんにとって「私によくて、世界にイイ」というのは、どういうことでしょうか?

増田 今回、僕がTHE BODY SHOPさんとのコラボをやって気づかされたことがあります。それは、この日本の中で生きていて、日本の文化に日々接しているとアメリカやヨーロッパの文化が進んでいると思いがちですが、身近なこと、例えば和紙とか、大先輩が築き上げてきたものがとても面白いということなんです。
日本の技術、気遣い、思いやりなど海外の人は真似のできないことなので、誇りを持って一つ一つアピールしていけば、世界はもっとよくなるのではないのでしょうか?
「おばあちゃんの知恵袋」ではないけれど、そういったものを見つめ直していくことで、もっと暮らしやすい世の中になると思います。そして、それを日本から始めて世界に広げていけばいいのです。

大谷 つまり、海外のものを何でも単純に受け入れてしまうのではなくて、日本からオリジナルを世界に発信していけばいいということですね?

増田 ええ、そうだと思います。
ちょうど2020年に東京オリンピックがあります。世界に日本をPRするいいきっかけになると思います。日本人が築き上げてきた文化とか知恵とか、思いやりとかをPRしていくいいチャンスですよ。そのことをしっかり意識していくと、世の中はもっとよくなるのではないですか?

大谷 そうなると、ポイントになるのは、やはり若者ということになりますね。増田さんのような吸引力のある方がTHE BODY SHOPさんのようなグローバルな企業と組むことによって、新たな日本初のイノベーションが生まれてくるのではないかなと思いますね。
最後に、増田さんの今後の活動の計画をお聞かせください。

 

アートディレクター 増田セバスチャン氏 Photo=YUSUKE TAMURA (TRANSMEDIA)

増田 近々ではサンリオさんとコラボして、ピューロランドのディレクションを5年のタームで実施しようと思っています。
kawaiiには無限の可能性があって、kawaiiというのはどういうことかというと、誰も足を踏み入れることのできない自分だけの小さな宇宙を作ることだと、僕は思っているのです。これは日本が初めて築いたオリジナルのカルチャーでもあるので、kawaiiという世界を通じて、もっともっと進化させていきたいですね。

大谷 なるほど。それは20年という年月をかけてサスティナブルにkawaii文化を築き上げてきた増田さんならではのお考えですね。
今日はどうもありがとうございました。

増田 こちらこそありがとうございました。

聞き手:ethica編集長 大谷賢太郎

ーーBackstage from “ethica”ーー

インタビューの後は、編集部の皆で1995年に増田 セバスチャンが表現の場として原宿にオープンし20周年を迎えたジャパニーズ・ポップカルチャー・ショップ 6%DOKIDOKIにお伺いしました。

■ショップ情報はこちらから
http://6dokidoki.shop-pro.jp

 

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)〜
http://www.ethica.jp

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