ethicaがメディアパートナーとして参加した「サステナブル・ブランド 国際会議2019 東京」で行われたセッションの一つが「姿勢が伝わるコミュニケーション」でした。参加されたのは凸版印刷、ポーラ、電通の3社。今回は電通からの報告についてご紹介しましょう。(エシカちゃん)
カンヌライオンズ 国際クリエイ ティビティ・フェスティバル SDGs部門
毎年6月、フランスのカンヌで行われている世界最大規模の広告賞が「カンヌライオンズ 国際クリエイ ティビティ・フェスティバル」です。日本でも6割の消費者がブランドの社会的・政治的主義やスタンスに購買行動が影響されているなど、消費者の意識の変化にともなって広告コミュニケーションのクリエイティブ表現も年々進化している中、一昨年この広告賞にも大きな変化が見られました。国連とのパートナーシップによってSDGs部門が新たに設けられたのです。
コミュニケーションで使える12のクリエイティブ手法
昨年、同フェスティバルに参加された電通PRソリューション局クリエイティブ・プランナーの木下舞耶さんは、今回その経験を踏まえてコミュニケーションで使える12のクリエイティブの手法
1、可視化する
2、置き換える
3、擬人化する
4、立場を逆転させる
5、機能を発明する
6、具現化する
7、データ化する
8、仕組みを作る
9、ルールを逆手にとる
10、対立構造をつかう
11、ストーリーを与える
12、時間軸を変える
の中からいくつかの具体的事例を紹介してくださいました。
海に浮かぶごみを全部集めるとフランスの国土ほどになるという事実を可視化
1「可視化する」事例として挙げられたのは、世界中の海に浮かぶごみを集めて国を作ったと仮定すると、フランスの国土ほどの広さになるという事実を踏まえ、トラッシュアイルズ(ごみの島)と名付けて国連に国として申請しようというキャンペーンです。世界中の海に浮かぶごみを全部集めるとフランスの国土ほどになるという事実を可視化し、その規模の大きさを国に例えて分かりやすく表現することでごみ問題への関心を高めようとしました。
国として認められるためには、通貨があること、ある一定の数以上の国民がいることなどいくつかの条件が必要ですが、その条件を1つずつクリアしていくことでさらに話題となり、キャンペーンが広がっていきました。
ロゴのワニを絶滅危惧動物に変える
2「置き換え」の事例はポロシャツで有名なラコステです。ラコステは動物保護団体とパートナーシップを組み、ロゴのワニを絶滅危惧種にされている動物に置き換え、しかも、枚数を現在のその動物の生息数にして制作・販売したところ、限定感が高まったこともあって24時間以内に完売したそうです。商品を売るというよりも、目的は絶滅危惧動物に対する認知を向上しようというものでしたが、これにより動物保護団体への寄付金が4倍にもなるなどその狙いは見事に達成されたといえそうです。
パスポートに署名という新たな機能を追加
5「機能を発明する」の具体例としては「パラオ・プレッジ」と名づけられたパラオのパスポートに関するキャンペーンの事例が紹介されました。
パラオでは観光客による自然破壊が大きな問題になっていました。そこで、国は空港の入国スタンプを「私は自然を守ります」という誓約文にし、観光客自身が署名をするというアクションを義務化。パスポートの入国スタンプに署名という機能を新しく発明した事例で、これにより問題の解消へとつながっています。
カナダのLGBTサポート団体が作ったサイト
7「データ化する」の事例として挙げられたのは、カナダのLGBTサポート団体が作ったサイトです。これは世界中の都市のLGBTに関する法律やSNS上でのLGBTに対する好意的あるいは嫌悪的なコメントを解析し、レインボーフラッグをモチーフにした棒グラフとして表示することで、LGBTに対してどれだけフレンドリーな都市なのかを一目で分かるようにしたものです。データを象徴であるレインボーを活用してビジュアライズしたことで、LGBTの旅行者にとって役に立つと同時に、LGBTに対する寛容度の指標理解にもなりました。
電力を50%以上節約できることを実証
最後に紹介されたのは9「ルールを逆手にとる」事例で、アメリカのテレビチャンネル、ナショナルジオグラフィックが実践しているケースです。
番組を編集する際、使用するピクセル数を半分に減らすメッシュ加工をすることで、映像のクオリティは落とさずに電力を50%以上節約できることを実証しました。
テレビ番組はピクセルを全部使わなければならないというルールや常識を打ち破ることでソリューションを生み出している事例です。
よりよい世界をつくるにはクリエイティブの力が不可欠
報告を終えた木下さんは、
「場合によっては炎上しやすい、難しいテーマがありますが、伝えたいテーマがブランドにフィットしていて説得力があることが大事だと思います。よりよい世界をつくるためにはクリエイティブの力が不可欠です。私たちクリエイターが消費者の皆さんと一緒に取り組んでいけたらいいですね」
と締めくくりました。
記者:エシカちゃん
白金出身、青山勤務2年目のZ世代です。流行に敏感で、おいしいものに目がなく、フットワークの軽い今ドキの24歳。そんな彼女の視点から、今一度、さまざまな社会課題に目を向け、その解決に向けた取り組みを理解し、誰もが共感しやすい言葉で、個人と世界のサステナビリティーを提案していこうと思います。
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