「横浜市」と「横浜町」をつなぐ「横横連携」とは
ところで、電力を生み出している青森県横浜町とはどのような所なのでしょうか。横浜町の野坂町長は、このように紹介してくれました。
「横浜町は下北半島の入り口にある町で、人口は4,500人弱。非常に強い風が吹く場所で、青森県で最初に『農村漁村再生可能エネルギー協議会』を起ち上げた自治体です。現在は大型の風力発電機が22基稼働しており、大石社長にご縁をいただいて、ここで発電した電気を横浜市に送電しています」
では、なぜ横浜市はこのような取り組みを始めたのでしょうか。その経緯について、横浜市の五十嵐さんは次のように話してくれました。
「きっかけは、2050年までに温室効果ガス排出をゼロにすることを目標とした『Zero Carbon Yokohama』の制定です。その実現にむけ、横浜市では、着実に二酸化炭素排出量を減らしていますが、まだまだ削減していかなければいけません。そのためには再生エネルギーの活用が必須ですが、首都圏の大都市には土地の余裕がなく、メガソーラーの設置などができないのです。
そこで、横浜町をはじめとする東北地方の12市町村と再生可能エネルギーの利用促進に向けた連携協定を締結し、発電の能力がある土地からエネルギーを調達することで、横浜市の脱炭素化を進めていくことになりました。そのような経緯があって、横浜町から電力を調達させていただいています。
電気の調達先が決まったら、次は横浜市内で、このプロジェクトに賛同してくれる企業に協力を仰ぐ必要があります。今まで使っていた電気を再生可能エネルギーと差し替えなくてはCO2の削減につながらないからです。そこで、横浜町の電気の購入先として相談させてもらったのが、氷川丸を運営する日本郵船さんというわけです」
氷川丸が横浜町の電気を使うようになった理由について、日本郵船の中村さんは次のように説明しました。
「いままで、日本郵船は海運で日本を支えてきましたが、令和になって、環境負荷低減やグリーンビジネスの展開など、脱炭素化社会を支えていくということでも社会貢献をしていこうということになりました。私はいまグリーンビジネスグループという部署でグループ長を務めていますが、その社会貢献の象徴として初めて取り組んだのが、氷川丸で使用する電気をすべてサステナブルなものに変えるという、今回の事業です。