国木田彩良−It can be changed. 未来は変えられる【Prologue】 あらゆる女性たちのエンパワーメントを目指して
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国木田彩良−It can be changed. 未来は変えられる【Prologue】

撮影:平間至

匂い立つような気品と、どこか物憂げな表情……。近年ファッション誌を中心に、さまざまなメディアで多くの人を魅了しているクールビューティー、モデルの国木田彩良(くにきだ・さいら)さん。グラビアの中では一種近寄りがたい雰囲気を醸し出す彼女ですが、実際にお会いしてお話すると、とても気さくで、胸の内に熱いパッションを秘めた方だということがわかります。

小説『武蔵野』で知られる明治の文豪・国木田独歩(1871-1908)の玄孫(やしゃご)に当たる国木田さんは、日本人の母とイタリア人の父をもち、1993年ロンドンに生まれ、パリで育ちました。パリのスタジオ・ベルソーでファッションデザインを学んだのち、およそ20年暮らしたフランスを離れ、自身のルーツである日本へ。2014年にモデルとしてデビューし、間もなく6年を迎えます。

2018年6月、ethicaでの初対談では、編集長の大谷が、最後に「国木田さんにとっての『私によくて、世界にイイ。』ことはなんでしょうか」とうかがったところ、西陣の着物をまとった国木田さんは凛然と「女性としての自信を高め、日々変わる社会で成長すること。女性であることを誇り、自立していること」と答えました。ひとりひとりが自分自身を誇らしく生きることは、結果として社会を変革していくモチベーションになっていく、と。

アジア人のハーフとしてパリで暮らす中、常にどこかで疎外感を覚え、自分の居場所を探し続けていたという国木田さん。自らに誇りをもって生きること、そして未来を切り拓いていくことの大切さ−−その言葉に、私たちはゆるぎない信念を感じました。国木田さんのメッセージを、もっと多くの人に向けて発信できたら……。そんな思いから、本連載企画は、世の中のあらゆる女性たちのエンパワーメントを目指して、国木田彩良さんとethica編集部とが企画したものです。

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間違い、失敗、そして変化をおそれずに

国木田さんが、この企画を通じて、いま一番伝えたいことは?

最初の打ち合わせで、私たちの問いに対して、彼女は迷うことなく、まっすぐ前を向いて、こう答えました。

「It can be changed. 未来は、変えられる」

静かな声色でしたが、とても力強い響きを持っていました。

国木田さんは日本に来て、何を感じ、何を思い、「It can be changed.」という言葉に至ったのでしょうか。

「日本の社会では、常にパーフェクトを求められます。間違ってはいけないし、失敗したら、すべてが終わり。日本という国は、ワンショット(一度限り)なんです。だからみんな、チャレンジをしようとしないで、隣の人の顔色ばかりうかがっているように見えます」

単身日本に渡り、まだ日本語の会話もおぼつかない頃、国木田さんは「空気を読む」ように努めたと振り返ります。日本の保守的な国民性に、歴史や伝統を重んじる文化の厚みを見出す一方、他者との差異や変化に対する順応性の低さに、強い危機感も抱きました。

「欧米の場合は、小さい頃から自分で考えることを叩き込まれます。けれど日本人は、自分で考えたり、何かに興味を持ってアクションを起こすことが、すごく苦手ですよね。日本の人たちは、何に対しても関心が薄いように私には見えます。

それはおそらく、自分で考えて行動を起こして、それが間違っていたり失敗したときに、日本は立ち直れない社会だから。それでは、みんな何も考えたくなくなってしまいます」

日本で暮らすようになって、国木田さん自身にも、大きなマインドチェンジが何度もあったと言います。これまでどこに行っても自分は「よそ者」だったけれど、いまは「外」からの視点を持てたことを幸運に思う、と国木田さんは、晴れやかな笑顔で話します。

「間違っても、失敗しても、何度でもチャレンジすることが大切だと思います。失敗の繰り返しの中から成功は生まれます。実際、人間は変わるものだし、変われるものだと思うんです。一度きりの人生だから、いろんなことに、どんどん挑戦すべきだと私は思います」

撮影:平間至

国木田彩良、26歳の言葉を

私たちが「女性としての自信を高め、日々変わる社会で成長」し、「女性であることを誇り、自立して」生きていくことを呼びかけるのに、どのような切り口での発信が有用でしょうか。国木田さんと話し合った結果、本企画では、まずファッションの歴史の中に、人々の意識の変化や社会の変革を読み取り、そこから現代のジェンダー問題に話題を広げていくことにしました。

「自分が誰で、いまどこにいるのか。自分自身の現在地を知るためには、現在の自分を形成しているものが、どこから来たのか、まずそれを知る必要があると思います」

パリでファッションの歴史を学び、移り変わりの激しいファッションの世界でモデルとして活躍する国木田さん。国木田さんの「change」の意味を、できるかぎり丁寧に掘り下げていきたいと思います。

「ファッションは、私たちが考えている以上にポリティカルなものです。ファッションは、女性たちから人間的な、フィジカルなパワーを剥ぎ取り、代わりにイメージのパワーを付与してきました」

そうしたファッションの歴史を踏まえ、社会から与えられたイメージから自由になることで、私たちは「自分らしさ」を探り、「自分自身を誇る」きっかけをつかめるのではないでしょうか。

国木田さんが言うように、彼女の考え方や生き方は、これからもどんどん変わっていくかも知れません。日本の社会もまた、変わっていくでしょう。だからこそ、26歳の彼女のいまを、その言葉を、ここに書きとどめておくことの意義を、私たちは見出しています。そして、そこに多くの方が共感してくださることも。

 

連載企画「国木田彩良−It can be changed.」、全8回にわたってお届けしてまいります。これからどうぞお楽しみに。

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国木田彩良/Saila Kunikida

1993年、イギリス・ロンドン生まれ。フランス・パリで育ち、高校卒業後に服飾の名門スタジオ・ベルソーでファッションの歴史、デザイン、マーケティングを学ぶ。日本人の母とイタリア人の父を持ち、明治時代の小説家・国木田独歩の玄孫にあたる。

自身のルーツである日本に興味を持ち2014年単身来日、モデル活動を開始。2015年、三越伊勢丹の企業広告「this is japan」のイメージビジュアルに登場し注目を集める。国内外のハイファッション誌を中心に活動の傍ら、パリで形成された感性と日本で暮らす中で見えてきたことを発信していこうとSDGsに携わりながら、主にフェミニズムに関するトークショーに参加したり文章書いたりするなど活動の幅を広げている。

聞き手:ethica編集長 大谷賢太郎

あらゆる業種の大手企業に対するマーケティングやデジタルの相談業務を数多く経験後、2012年12月に『一見さんお断り』をモットーとする、クリエイティブ・エージェンシー「株式会社トランスメディア」を創業。2013年9月に投資育成事業として、webマガジン「ethica(エシカ)」をグランドオープン。2017年1月に業務拡大に伴いデジタル・エージェンシー「株式会社トランスメディア・デジタル」を創業。2018年6月に文化事業・映像事業を目的に3社目となる「株式会社トランスメディア・クリエイターズ」を創業。

創業8期目に入り「BRAND STUDIO」事業を牽引、webマガジン『ethica(エシカ)』の運営ノウハウとアセットを軸に、webマガジンの立ち上げや運営支援など、企業の課題解決を図る統合マーケティングサービスを展開。

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

松崎 未來

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