The Breakthrough Company GO クリエイティブディレクター 砥川直大さん(中編)
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The Breakthrough Company GO クリエイティブディレクター 砥川直大さん(中編)

Photo=Eijiro Toyokura ©TRANSMEDIA Co.,Ltd

世界中で脱プラスチックの動きが広がる中、ペットボトルや魚網などの海洋プラスチックごみを再生して作った衣類や靴、かばんなどを次々に発表。現在ヨーロッパを中心に大きな注目を集めているスペイン生まれのファッションブランドが「ECOALF」です。この3月、日本第1号店が東京・渋谷にオープンしましたが、開店にあたり「地球の資源を無駄遣いしない」というブランドの思想を体現、他企業の掲出済み広告や廃棄予定の未使用ポスターなどを使って再利用したオープン告知広告を展開、大きな話題となりました。

前編に続き、ECOALFの日本でのブランディングに携わるThe Breakthrough Company GOのクリエイティブディレクター砥川直大さんとエシカ編集長・大谷賢太郎が対談、これまで歩んでこられた人生や今回の広告が実現するまでのご苦労などについてお聞きしました。

子供の頃からものづくりが好きだった

大谷: 話は戻ってしまいますが、子供の頃、ものづくりが好きになったきっかけは何だったのですか?

砥川: きっかけというのは難しいですが、もともと図画とか工作が好きだったということがベースになっていますね。覚えているのは父親の転勤で、10歳の時にアメリカに行きました。その時、言葉が全然分からなくて。よく分からない授業の間に折り紙をやって見せると、こいつ超すげえって一躍ヒーローになれるんですよね。

自分の作ったものに人が反応してパーセプションが変わる。このことが、ある種の原体験になって今に繋がっていったのかなという気がしますね。

大谷: それはめちゃくちゃいい経験ですね。アメリカにはいつまでいらっしゃったのですか?

砥川: 10歳から15歳までです。元々手を動かすのが好きだったこともあって、今度は大学生の時、それまで全くやったことのなかった料理を始めたんです。毎日外食をしているとお金がかかるので、自炊せざるを得なくなったんです。

高校生まではリンゴの皮剥きすらできないぐらい料理が不得意だったのに、やっているうちに楽しくなって、毎日やるようになりました。好きなことは突き詰めるタイプなので、どこにでもあるような食材を買ってきて、どうやって調理をすれば美味しくなるかを実験したりしてました。それで人に食べてもらって「おいしい」といってもらえるとすごく嬉しくて。それってクリエイティブに近い感覚なんですよね、今思うと。

Photo=Eijiro Toyokura ©TRANSMEDIA Co.,Ltd

大谷: たしかにその通りですね。料理はクリエイティブそのものだと僕も思います。

他には外交官になりたかったというお話もありましたね。大学にすごい人たちがたくさん集まってきていて、その中で自分の強みを生かそうと考えるようになったということだと思うのですが、ちなみに大学ではどんなことを学んだのですか?

砥川: 国際関係学です。僕は海外に住んでいたので英語が話せましたし、海外生活の経験を生かして国際政治、国際経済、国際法とかを受講してました。漠然とですが、日本のために何かしたいという気持ちがあって。

自分がマイノリティーとしてアメリカで生活をしたことと、その過程の中で、持つ者が持たざる者を助けるというノブレスオブリージュの価値観が自然と身についたというのも影響していると思います。

大谷: 高校時代から何かを作ることがお好きだったということですが、それなら美大を選択するという道もあったのではありませんか?

砥川: たしかにそうですが、下手の横好き程度だったので真剣に考えたことはなかったです。英語ができて海外生活の経験のある自分を生かすには、国際関係学を学んだほうがいいという判断をしたと思います。

大谷: 社会課題を解決するのは格好いいというお話もありました。先日たまたま、4月からADKに入るという学生とお話しをしました。その学生も砥川さんと同じように、社会課題を解決するのは格好いいといっていました。SDGsを絡めたプロジェクトに携わりたい。それができるのは広告代理店だから入社することにしたといっていました。

砥川: すごい時代になりましたね。本当に時代は変わりました。僕としてはADKの社内にそういう仕組みができるようにしてきたつもりだったので、そういう話を聞くと嬉しくなります。

大谷: 砥川さんは先駆者だったわけですね。プロボノを経験されたというのも砥川さんにとって大きなことだったと思うのですが、関わろうと思ったのはどういう理由からですか?

砥川: 最初はテレビで「プロボノ」が特集されているのを観たのがきっかけです。ただ、その時は関西支社に勤務していたので、やりたくてもできなかったんです。そして、東京に戻ってきてから思い出して携わるようになりました。まずホームレスの支援をしている団体を手伝って、その後はマタハラNetという後輩が立ち上げた団体の支援もやりました。

創業者のハビエル・ゴジェネーチェ氏

大谷: 今回、ECOALFのアジア初出店ということで、先日、ハビエルさんと対談させていただきました。とても好感を覚えました。海洋プラスチックの問題については外務省でいろいろとお話を聞きましたが、僕自身そのことを知ったのは2年ぐらい前で、具体的に意識をし始めたのは最近のことです。

ECOALFは海洋プラスチックに関連したファッションブランドとして今すごく注目されています。地球規模で持続的な社会を考えていこうという流れがある中で、今回の日本進出について、砥川さんはどういうふうにとらえて、今回のプロモーションを設定されたのでしょうか?

砥川: まず、ECOALFがやっていることを知って単純にすごいなと思いました。今、ユニクロでもペットボトルから服を作ったりしていますが、それは一部だけで、その点、ECOALFは全てのアイテムを廃材または環境負荷の低い素材でつくっています。そのことに対して僕はハビエルのすごいコミットメントを感じていて、一部だけを作ることはできると思いますが、全部のアイテムでそうしようとしていること自体がすごいなあと思って、本気度もすごい。

それに、以前はフリースを作っていて売れ筋商品だったんですが、洗濯するとマイクロプラスチックが生まれて水に流されていくという事実を知って一切売らなくなったんです。そういうしっかりした思想を持っているところにも惹かれました。

やると決めたことは全てちゃんとやっているのもすごいなあと思っていて、それに携われることはすごくありがたいことだと感謝しています。

大谷さんも実際にハビエルに会われて分かったと思いますが、彼は超格好いい。ECOALFを立ち上げたのは息子アルフレドが生まれた時で、このままではいけないと思ってそれまでのアパレル事業を辞めて、息子の名前の一部をつけたブランドを立ち上げてるんです。同じ父親としてもすごく尊敬しています。だからこそ、このブランドが日本で成功するためのお手伝いができるのはとても嬉しいですね。

大谷: たしかに、ECOALFの考え方は素晴らしいと思います。ただ、サステナブルというのはエシカの読者はそうでもないかもしれませんが、まだまだ日本ではそんなに浸透していないのではありませんか?

砥川: たしかにそうだと思います。ですから、ECOALF1社で頑張ることが全てではなくて、僕はパタゴニアの方々とも仲がいいんですが、競合という意識は全くなくて、パタゴニアを始めとしたいろいろな企業が一緒になってサステナブルを一瞬のトレンドではなくて、大きな流れにしていかなくてはと考えています。

その中で今回のプロモーション広告というのは広告自体は資源を無駄にしないとか、サステナブルにしたいという考え方が出発点としてありますが、プラス、そこにいかにしていろいろな企業を巻き込めるかという考えもあって。吉野家やKDDI、朝日新聞などにもご協力頂いて、こういう思想に賛同してくれる企業があるということが今の時代を表現する1つの方法になったのではないかなと自分では評価しています。

大谷: たしかに今回の広告は、今だからこそできたのであって、10年前だったら絶対に実現しなかったのではないかと思いますね。

砥川: おっしゃる通りです。自分としては、そこに大きな意味があると思っていて、10年前だったら、自分のところの広告を他の会社に貸すとか、なおかつそれを塗り潰して使うなんてことを誰もOKしなかったでしょうね。

でも、今の時代であれば、そういうことに共感して協力してくれる企業があるということ自体がプロモーションになるという時代に変わっていて、そこに賛同して頂いたことには大きな意味がありますね。

大谷: 周りの反響はどうですか?

砥川: 広告を出した後のSNSを見ると、ECOALFはもちろん、協力している企業が格好いいという声がたくさんありました。そういわれるのは僕にとって本意で、それはお互いにウインウインだし、逆にいうと、あそこに加わりたかったと思った企業もたくさんあるはずで、それぐらい社会が変わってきているんだということを実感しました。これが今回の広告が象徴していることじゃないでしょうか。

大谷: それにしても、社会的にはそういうムードが高まっているとしても、あれだけの有名な企業にロゴを貸してくれといって口説くのは大変だったのではありませんか? そこはどうやって攻略したのでしょうか?

砥川: そこは一緒にやっているGOのプロデューサーチームがすごく優秀で。企画の意図するところをきちんと話して協力して頂ける企業を1社ずつ募っていきました。

そもそも企業にもそうした気運があって、普通、企業がやっているCSR的な事業というのは、とてもいいことをしているのに、それが世の中的に見えづらかったり、そのまま出してもニュースバリューがなかったりでほとんど伝わっていないんですよ。

その意味でいうと、今回の取り組みは、いいことでありながら自分たちの思想をきちんと伝えることができて、必ずしも自分たちの事業の話はしていなかったとしても「そういうことに共感する企業なんです」とか「そういうことをやっている企業なんです」というアピールができる方法としては、賛同して頂きやすかったんじゃないかと思います。

実は掲載した企業以外にも賛同して頂いた企業が意外とたくさんあって、やりたいけどポスター自体がもうないとか、タレントの許可がもらえないといった理由で諦めた企業も結構あるんです。

大谷: そうなると、第2弾、第3弾が楽しみになりますね。

砥川: そうですね。面白い取り組みなので、ぜひ続けてやりたいですね。

(後編に続く)

続きを読む(後編)>>>

砥川 直大(とがわ なおひろ)

The Breakthrough Company GO クリエイティブ・ディレクター

戦略を含めたコミュニケーション全般の設計から、表現までの全てを手がける。近年は企業のブランディングや新規事業開発にも従事。クリエイティブの力で社会をポジティブに変えていくことを信念に、プロボノを含め様々なアクションを展開。Cannes Lions、Spikes Asia、PRアワードグランプリ、2014年クリエイター・オブ・ザ・イヤー メダリストなど。

2019年3月よりReadyforソーシャルプロデューサー。二児の父。調理師。

聞き手:ethica編集長 大谷賢太郎

あらゆる業種の大手企業に対するマーケティングやデジタルの相談業務を数多く経験後、2012年12月に『一見さんお断り』をモットーとする、クリエイティブ・エージェンシー「株式会社トランスメディア」を創業。2013年9月に投資育成事業として、webマガジン「ethica(エシカ)」をグランドオープン。2017年1月に業務拡大に伴いデジタル・エージェンシー「株式会社トランスメディア・デジタル」を創業。2018年6月に文化事業・映像事業を目的に3社目となる「株式会社トランスメディア・クリエイターズ」を創業。

創業8期目に入り「BRAND STUDIO」事業を牽引、webマガジン『ethica(エシカ)』の運営ノウハウとアセットを軸に、webマガジンの立ち上げや運営支援など、企業の課題解決を図る統合マーケティングサービスを展開。

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

ethica編集部

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