農林水産省主催『食と環境を考える1億人会議2020』レポート! 〜環境と資源のよりよい循環のために、私たちができることとは?〜
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農林水産省主催『食と環境を考える1億人会議2020』レポート!

司会の早瀬マミさん

2030年のSDGs達成を目指し、農林水産省と消費者庁、環境省の連携によって発足された「あふの環(わ)2030プロジェクト」。その活動の一環として、9月17日(木)〜27日(日)には『サステナウィーク〜未来につながるおかいもの〜』が実施されました。期間中、さまざまな商業施設でサステナブルなおかいものを楽しんだ方も多いのではないでしょうか。

また9月25日には「つくる責任 つかう責任」をテーマに、生産から消費者までをつなぐオンラインセミナー『食と環境を考える1億人会議2020』が開催されました。今回はその模様をダイジェストでご紹介!(記者:エシカちゃん)

第一部は「たべる」から世界を変えるはじめかた〜学ぶ編〜

サステナブルな未来とSDGsの達成に向け、今後どのような取り組みが必要なのでしょう。今回のセミナーは、生産・流通・消費者の共創の場を作ることで、参加者一人ひとりが食と農林水産業の未来を考えることを目的に行われました。

農林水産省の川合研究総務官のご挨拶を皮切りに、第一部は3組のレクチャーが行われました。

会議のトップバッターは「一般社団法人AgVenture Lab(アグベンチャーラボ)の荻野浩輝さん。アグベンチャーラボは、「次世代に残る農業を育て、地域のくらしに寄り添い、場所や人をつなぐ」をコンセプトに、JAグループが運営するイノベーションラボです。世代を超えて“サステナブル”を伝える大切さについてのお話がありました。

「サステナブルを日常に、エシカルを当たり前に!」が合言葉

「食」「農」「くらし」に関わる社会性の高いテーマを取扱い、豊かな社会を次世代につなぐため、スタートアップ企業の支援やイノベーターの育成など、新たな価値の創造を目的に活動しています。

「農業を中心とした環境負荷の軽減、食の安全性の確保、そして高齢者や子供たちが安心して暮らせる社会を目指すなど、幅広い人々と連携し、コレクティブインパクトを起こしていきたいです。」(荻野さん)

“サステナブルを日常に、エシカルを当たり前に!”そんな未来を願い、将来の起業家候補である大学生のサポートや女性誌とのコラボなども行なっています。エシカ世代にも身近な存在ですね。

体験談「私たちはこうして“木のストロー”を生み出した」

2組目には、環境ジャーナリストの竹田有里さんと木造注文住宅の「株式会社アキュラホーム」広報担当の西口彩乃さんが登場。

「Wood Straw Project(ウッドストロープロジェクト)」をご存知のエシカ読者の方も多いかもしれません。

竹田さんが2018年の7月豪雨の被災地を取材した際に間伐材や廃材による「木材ストロー」を発案。その製品化に向け、アキュラホームとザ・キャピトルホテル 東急の共働によって始まったプロジェクトです。

株式会社アキュラホーム 広報担当の西口さん

「木のストローは、森林保全のために国内の間伐材(※注1)を含む国産材を原料としています。竹田さんのアイデアをもとにアキュラホームが開発、ザ・キャピトルホテル 東急にて製品化に向けた監修を行い、試作や協議を繰り返して出来上がりました」(西口さん)

作る側の熱意と想いが人を動かし「Wood Straw Project」は世界的な話題に。ザ・キャピトルホテル 東急では2019年1月より、ホテル内のすべてのレストラン&バーでプラスチック製ストローの使用を廃止。2019年7月にはG20 大阪サミットで木のストローが採用され、賛同の輪が広がりました。

木のストローは、カンナがけによって木材を厚さ0.15mmにスライスして巻き上げたもの。接着剤にも配慮したサステナブルな仕様になっています。間伐材を利用することで、森林保全や廃プラ問題を解決にもつながっています。木の素晴らしさやモノづくりの楽しさを伝えるワークショップも開催されているそうです。

(※注1)間伐材:周囲の樹木が成長するために伐られた木材

1枚のチョコレート消費が及ぼす影響を可視化する「消費活動影響マップ」とは?

「一般社団法人エシカル協会」代表理事の末吉里花さんと「同協会理事兼オウルズコンサルティンググループ」の大久保明日奈さんによるレクチャーでは、エシカルの本質について考えました。同協会は「エシカルな暮らし方を幸せのものさしに」をテーマに2015年に発足された日本で最初の“エシカル”団体。毎年エシカル・コンシェルジュ講座を開くなど、エシカル活動を牽引しています。

「エシカルとは直訳すると「倫理的」という意味ですが、なぜエシカルが大切なのか、そしてエシカルな暮らし方がもたらすものとは何か。私たちが毎日買ったり食べたりしているものが、その先にどのような影響を与えているのかを見据えながら考えていきましょう」と末吉さん。

一般社団法人エシカル協会 代表理事の末吉里花さん

ご紹介してくださったのは、私たちの「消費」がもたらす影響を知るための“消費活動影響マップ”。消費活動影響マップとは、私たちが日頃消費している製品が、サプライチェーンの中でどのような影響を与えているかを可視化するためのもの。

今回のレクチャーのなかでは、その一例としてチョコレートが取り上げられました。たとえば普段チョコレートを買うとき、私たち消費者が重視するのは「価格」や「味」かもしれません。美味しくて手頃な値段、栄養面やパッケージの可愛さといった付加価値で選ぶこともあるでしょう。エシカルな消費活動を考えたとき、そこに「人や環境、社会にやさしい商品」という項目が加わります。

「エシカルでないチョコレートとエシカルなチョコレートを比較した場合、フェアトレードやRSPO認証(※注2)取得の原材料を使用した前者のチョコレートは、適正な価格で売買され、現地の労働者や環境などにおいてもポジティブな影響を与えます」(大久保さん)

もちろん選択の自由は私たち消費者の権利ですが、商品やサービス選びの基準にエシカルな視点を加えることの大切さと、その先の世界に目を向けるきっかけと気づきを与えてくれました。

(※注2) RSPO認証:持続可能なパーム油の生産・利用を目指す国際的な認証制度

第二部は「たべる」から世界を変えるはじめかた〜実践編〜

『食と環境を考える1億人会議2020』の第二部では、ソーシャルグッドプロデユーサーとして活躍中の「ドリームデザイン」代表の石川淳哉さんがファシリテーターを務めます。

ドリームデザイン代表の石川淳哉さん

石川さんは『世界がもし100人の村だったら』(マガジンハウス編)のプロデュースをきっかけに、サステナブルな暮らしをスタート。それまで広告業界で培ったスキルを活かしながらソーシャルグッドな活動に取り組んでいます。

石川さんの司会のもとに「“食べる”から世界を変えるには」をテーマに、日本中から実践的な「サステナ宣言」が届きました。その一例をご紹介します。

食の未来のために全国から寄せられた「私のサステナ宣言!」

長野県白馬高等学校に通う酒井紗雪さんは「生産者さんと消費者の距離を近くしたい」という夢を抱き、「農家さんの思いを伝える架け橋になりたい!」「世界の食料問題に取り組みます」とのメッセージを発信。

また、三重県鳥羽市にあるみかん農家「とば実」の園主・前川茂さんからは「生物多様性を守り、豊かな自然環境を具現化することで、持続可能な農業生産をします」。除草剤や化学肥料を使わない甘くてジューシーなみかんは通販でも販売中です。

各地の自治体からもたくさんの宣言が寄せられました。京都市からは「地産地消や食品ロスの削減をパートナーシップで取り組みます」(総合企画局 佐藤晋一さん)。また福井県からは、「魚を食べる、野草を食べる、食卓をみんなで囲むことを大切にする。そして多様なパートナーシップで海の環境をつなぐコミュニティーを作っておいしい循環に取り組みます」(福井県高浜町総合政策課 野村つとむさん)

「地域のお客様とともに、環境宣言GREEN CHALLENGE 2050を推進。CO2排出量の削減、プラスチック対策、食品ロス・食品リサイクル対策、持続可能な調達の4つテーマにおいて2050年までの目標を掲げ、取り組みを推進します」と宣言するのはセブン&アイ・ホールディングス。

他にも、ソーラーシェアリングで地域と農業の再生に取り組む千葉県匝瑳(そうさ)市の「農業法人Three Little Birds(スリーリトルバーズ)」、「オイシックス・ラ・大地」、作る人と食べる人をつなぐオンラインマルシェ「POCKET MARCHE(ポケットマルシェ)」など、『あふの環プロジェクト』メンバーの方々を中心に、「食品ロスを減らそう!」「農地を守って豊かな暮らしを!」など、サステナブルな宣言が次々届き、オンライン会場は大いに盛り上がりました。

発電所も備えた、農業法人Three Little Birds(スリーリトルバーズ)の農場

会議の最後には、農林水産省環境政策室の久保 牧衣子(くぼ まいこ)室長からお礼のメッセージが寄せられました。

農林水産省環境政策室の久保 牧衣子(くぼ まいこ)室長

「 “1億人”は、壮大なプランではありますが、食と環境の明るい未来を実現するためには、みなさん一人ひとりの協力が必要です。今日、たくさんの意見が発信されたなかで、少しでも楽しかった、勉強になったことがありましたら、ぜひご家族やお友達に伝えていただきたいと思います。人々の消費を一気に変えることは困難ですが、本日の体験が素晴らしい未来につながっていくことを願っています」(久保室長)

【問い合わせ先】

あふの環2030プロジェクト03-3502-8111(内線3297)

【公式サイト】

https://www.maff.go.jp/j/kanbo/kankyo/seisaku/being_sustainable/sustainable2030.html

企業のSDGsへの取り組みから「つくる責任 つかう責任」、そしてそれぞれのサステナ宣言まで、3時間にわたってたくさんの意見交換が行われたオンラインセミナー『食と環境を考える1億人会議2020』。皆さんも1億人の一人として、食と環境について考えてみませんか?

当日の模様は、こちらで10月下旬公開予定です。
https://www.maff.go.jp/j/kanbo/kankyo/seisaku/being_sustainable/sw2020_event.html#farmtour

記者:エシカちゃん

白金出身、青山勤務2年目のZ世代です。流行に敏感で、おいしいものに目がなく、フットワークの軽い今ドキの24歳。そんな彼女の視点から、今一度、さまざまな社会課題に目を向け、その解決に向けた取り組みを理解し、誰もが共感しやすい言葉で、個人と世界のサステナビリティーを提案していこうと思います。

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

エシカちゃん

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