そもそも漬け物は、野菜を長期保存するために考えられた保存食です。中でも塩漬けは、海水から塩を取り始めた太古の昔から行われてきた野菜の貯蔵法のひとつ。奈良時代にはナスやウリなど、さまざまな野菜や果実を塩で漬けて食べていたという記録が残っているようです。漬け物は、人間の歴史とともに歩んできた食品と言えるかもしれません。
毎年年末になると、高菜やダイコンなど、畑で育てたいろいろな野菜を漬けます。ひと冬の間に家族4人で食べ切る量は、だいたい一種類20kgくらい。知人に分けたりすることも多く、数種類の野菜を合わせると全部で80〜90kgほどを漬け物にします。3年前に長男の木水土(きみと)が種を蒔いて育てたのをきっかけに、野沢菜漬けも我が家の新定番に加わりました。
野沢菜漬けは、11月末から12月にかけて、たくましく育った菜を根っこごと抜き取る収穫作業からスタートします。抜いた野沢菜を半日ほど、太陽の下で天日干し。
最近では都会でも「干し野菜」が注目されていますが、太陽の力を借りることで野菜の余分な水分が抜けて栄養がぎゅっと凝縮され、美味しさも栄養も倍増します!
少し残ってしまった野菜や野菜の皮なども、干し野菜にすると美味しく食べることができるので、ぜひ試してみてくださいね。
天日干しの後、極寒の流水で野沢菜を洗って土などの汚れをよく落としてから専用の漬け物樽に漬け込みます。野沢菜の重さの3%の塩、昆布、鷹の爪で漬けるのが我が家流。
野沢菜は、山梨や長野周辺でも食卓にのぼる漬け物の代表選手です。冬の間はどうしても野菜が不足しがちですが、食物繊維もたっぷり、ビタミンA、ビタミンCも豊富な野沢菜は、ご飯のお供やお酒のつまみ、おやつ代わりとして、いつでも食卓にあるような、ホッと心が和むような存在です。
他にも高菜、たくあん、赤カブなどを冬の間に漬け込みますが、冬の漬け物作業の中で、特に思い入れがあるのがたくあん作りです。漬けるまでにひと手間かかり、とても重労働なのですが自家製のたくあんの美味しさは格別です。
まず、畑から抜いてきたダイコンを洗って軒下に吊るし、葉野菜より長めに天日干しをして「干しダイコン」を作ります。気温が氷点下になる夜間は霜を避けるために覆いをかけ、1〜2週間くらい干します。ダイコンが手で丸められるくらいにやわらかな状態になったらいよいよダイコンを漬けていきます。
ダイコンの重さの7%の粗塩と米ぬか、昆布、鷹の爪と一緒に樽の底から順番に丸く漬けていきます。
昔は1本2kgもあるずっしり重いダイコンを、ひとりで軒下に吊るす作業がなかなか思い通りにいきませんでした。子供が小さかった頃は、おぶったままダイコンを持ち上げることができなくて、ダイコンを何度も落として夫に叱られたことも。でも、継続は力なり!年々スキルが上がり、今では片手でラクラク持ち上げて干せるようになりました(笑)。
軒下にずらりと吊るされたダイコンは、我が家の冬の風物詩です。