(第13話)幸せ!かまど炊きご飯【連載】八ヶ岳の「幸せ自然暮らし」
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(第13話)幸せ!かまど炊きご飯【連載】八ヶ岳の「幸せ自然暮らし」

皆さんは、ご飯を炊くとき何で炊きますか?私はここ何年も炊飯器を使用していません。鍋でちゃちゃっと炊いています。最近は、様々な種類のIH炊飯器が出回っていますよね。試してみたいと思いつつ、高価なものが多くなかなか手が出ません。

ガスや電気が広まる昭和20年代頃までの日本の家庭には、かまどがあって羽釜でご飯を焚いていた時代がありました。燃え残った炭をこたつに入れて暖をとったり、灰を畑の肥料にしたりと昔の暮らしはエコそのもの。

前回は、アトリエデフの取り組みをご紹介しました。今回は、『循環の家』でかまど炊きに挑戦! その様子をお届けします。

かまど炊きに初挑戦!「自分史上最高」のご飯と出会う

自然エネルギーの循環を体験できるアトリエデフのモデルハウス『循環の家』。庭には小さな畑やかまど、堆肥小屋や薪小屋があります。デフのスタッフの皆さんは、実際にここで循環型の暮らしを実践しながら働いています。そして、お昼にはかまどでご飯を炊き、畑で獲れた野菜を調理して全員一緒にランチタイムを過ごします。

11時になると皆さんで食事の準備をスタート。これも仕事のうちなのだとか!

今回、何と『循環の家』にあるかまどでデフ広報の小倉万穂さんのご指導のもと、人生初のかまど炊きに挑戦しました!

羽釜にお米と水を入れる。炊飯器のようにタイマーもついていない。果たしてちゃんと炊けるのか?

初めて目にする大きな羽釜は二升炊き。「今日は9人分のご飯を炊くのでお米を5合用意しました」と小倉さん。やや多い気もしますが誰かがお代わりをするので余ることはないそうです。

お米は隣町のほそかわ農園さんから購入された無農薬栽培米。

高い山々に囲まれた長野は、雪解けの豊富な水にも恵まれ、毎年美味しいお米が作られることでも有名です。カエルやイナゴ、トンボなど、小さな生き物がいっぱいいる田んぼでつくられるお米って安心感があると思いませんか?

毎年、厳しい品質基準をクリアし、品質を示す一等米比率は全国トップクラスなのだとか。ますます期待が高まります。

すでに洗って30分ほど浸水させたお米を羽釜に入れると、いよいよかまどで炊飯スタートです。

かまどで火おこし

かまどの炊き口に端材を入れ、マッチで丸めた新聞紙に火をつける。端材の量は想像より少ない。ちゃんと炊けるかな?

小倉さん: まず、丸めた新聞紙の上に燃えやすい小枝や細い竹を乗せて、かまどの炊き口に置きます。マッチで新聞紙に火をつけると、新聞紙から小枝へと火が移り、炎が広がっていきますから、そうしたら全体に火が回るよう、時々うちわで優しく空気を送り込むようにあおぎます。

はじめは強火でぱっぱ!沸騰したら弱火でじっくり

勢いよく火が上がってきたら、こんな感じに羽釜を設置する

小倉さん: 全体に火が回ったら上から羽釜を置きますよ。ちょうど炉の口から少しだけ炎がのぼって来るくらいの火加減ですね。太い薪だとより火力が安定しますが、家を建てた後に余った端材10〜15本くらいあれば十分です。

山田: 「はじめちょろちょろ、中パッパ、じゅうじゅう吹いたら火を引いて…赤子泣いてもふた取るな」ってよく言いますよね。

小倉さん: そうですね。でも実は、はじめに強火で炊いて沸騰したら火を弱めるんですね。どのくらいで沸騰するかはその時々で違うので、何分たったら火を引いて…、とか、はっきりとは言えまないんですよね。お米の量や火の加減、木の燃え方や天候などによって毎回変わる気がします。マニュアルはなく、自分のカンが頼りです。最後にちょっと強火にすると、いい感じにおこげができます。

山田: なるほど。やはり経験するしかありませんね。火力を調整するだけでも、なかなか思いとおりにはいきません。ウチワであおいで酸素を送り、端材を加えながら火が消えないようにするのが精一杯。

小倉さん: 羽釜のフチから水分がちょろっと吹きこぼれたら、火を弱くするタイミングです。水分のふき上がり方や湯気の香り、お米が弾ける音などによっても炊けたかどうかがわかりますよ。ここが腕の見せどころ。五感を研ぎ澄ませましょう。

山田: 湯気の香り?お米が弾ける音?正直、まったくわかりません(汗)

小倉さん: 大丈夫。二升炊きの羽釜でお米5合を炊くくらいならそんなに失敗はしません。

羽釜と蓋の間からシューっと湯気が上がってきたらおき火(弱火)にして待つ。炊けたかどうかはカン次第…。ご飯が炊けた良い香りがしてきたら出来上がり

小倉さん: かまどで上手にご飯が炊けるようになれば、いざというときに野外でも美味しいご飯が炊けますよ。昔のやり方を知っておいて損はありません。私も入社したばかりの頃は、毎日のようにこうしてここでご飯を炊いていました。いまだに失敗することがありますよ。

畑仕事も日々の料理も大切な「仕事」のひとつ

20分くらいで炊き上がり。10分ほど蒸らします。炊飯器だと長時間かかるご飯もかまどで炊くとあっという間。経済的!

ご飯が炊きあがるまでの間、スタッフはオフィスのキッチンでおかず作り。みんなで育てた野菜を使った料理が並ぶ

山田: ご飯が炊きあがるまでの間に、他のスタッフの方たちはキッチンに立っておかずの準備。毎日11時から、食事の準備は皆さんの日課なのだとか。仕事はしなくて大丈夫なんでしょうか?

小倉さん: これもデフの大切な仕事のひとつです。365日、暮らしに必要な基本的なことを一通り自分たちでやっています。畑作業や薪割り、雑草取り、そしてかまどでご飯を炊くことも…。まず自分たちがやってみないことには、お客様にもしっかり伝えることができません。こうした暮らしの実践から私たち自身が学んだことや、日々感じたことをお伝えすることが大事だと思うんです。

さあ、かまどのご飯が炊けましたよ!

お釜の中の炊きたてご飯。まわりに程よくおこげができていました

しゃもじで十文字に切る。そしてふわっと上下を返して手早く混ぜる

蓋を開けると立ちのぼる湯気。ふわっとやわらかなご飯の香りがあたり一面に広がります。まずはしゃもじで十文字に切って、それぞれ天地を返していきます。底からのぞくおこげがまたいい感じ!皆さんのお茶碗によそっていきます。

お茶碗によそっていよいよランチタイム!おこげができていい感じ

スタッフの皆さんと一緒にお昼ご飯をご馳走になりました。みんなで育てた野菜や自家製の漬物、そしてかまど炊きのご飯、いただきます!

ふっくらと炊き上がったご飯の底にはなんと香ばしいおこげが!(できないこともあるらしい)しゃもじでまぜて器によそって頬張ると…..。お米の粒がしっかり感じられ、それでいてふっくらしっとり、ほどよく甘くて香ばしいんです。

「美味しい!」と思わず叫んでしまうほど、自分史上最高のご飯を味わいました。

手作りのおかずが食卓にたくさん並び、賑やかなランチタイム。住む人を笑顔にする「家」づくりは、こんな幸福な時間が育んでいるのだと思いました。丁寧な暮らしの先には、循環型の未来が待っています。

デフの皆さん、ごちそうさまでした!

バックナンバーはこちらからご覧頂けます。

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記者:山田ふみ

多摩美術大学デザイン科卒。ファッションメーカーBIGIグループのプレス、マガジンハウスanan編集部記者を経て独立。ELLE JAPON、マダムフィガロの創刊に携わり、リクルート通販事業部にて新創刊女性誌の副編集長を務める。美容、インテリア、食を中心に女性のライフスタイルの動向を雑誌・新聞、WEBなどで発信。2012年より7年間タイ、シンガポールにて現地情報誌の編集に関わる。2019年帰国後、東京・八ヶ岳を拠点に執筆活動を行う。アート、教育、美容、食と農に関心を持ち、ethica(エシカ)編集部に参加「私によくて、世界にイイ。」情報の編集及びライティングを担当。著書に「ワサナのタイ料理」(文化出版局・共著)あり。趣味は世界のファーマーズマーケットめぐり。

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

山田ふみ

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