ethicaがメディアパートナーとして参加した「サステナブル・ブランド 国際会議2021横浜(SB 2021 YOKOHAMA)」では多くのセミナー、ディスカッション、ワークショップが繰り広げられ、さまざまな貴重な提言や発表が紹介されました。いま注目されている「DX:Digital Transformation」を推進する企業の一つとして紹介された、みんな電力の取り組みについて、パーソナル事業部 個人営業チームの高橋智里さんと社長室 広報チームの中村麻季さんにお話をうかがいました。
電力も個人が自由に選べるような時代
大谷: SDGsの17のゴールの中でも、特に優先度の高い課題として気候変動が挙げられています。また、地球温暖化対策として個人的にも暮らしの中で行動に移していくことが求められています。その中で電力も個人が自由に選べるような時代になったということですけれども、みんな電力について、あるいは電気とSDGsのつながりについて、それから再生可能エネルギー時代の電気ということが一般の方の理解はまだまだ進んでいないように思われます。
そこで、今回は「ethica」の読者である20代~40代前半の女性たちに、御社の取り組みを通じてエネルギーについて考えてもらえればと考えています。まず、御社の事業内容について「ethica」で初めて、みんな電力さんの名前を目にするという方にもわかるようにご紹介いただけますか。
髙橋: わかりました。みんな電力は、再生可能エネルギーでつくった電気を企業だけではなく、個人のお客さま向けにも販売しています。再生可能エネルギーでよく勘違いをされているパターンとして、家で再生可能エネルギーを使うためには屋根に太陽光パネルを設置して発電する必要があると思われている方がたぶん世の中の7割8割はいらっしゃると思います。
しかし、実は電力会社を変えるだけで再生可能エネルギーを使えますよというのを、まず皆さんに知っていただきたいなと思っています。
昨日ちょうどみんな電力に電気を供給してくださっている発電所に取材に行ってきました。畑の上にソーラーパネルがある、千葉県市原市のソーラーシェアリングの発電事業者さんなんですけれども、こちらも、みんな電力の顔の見える発電所の1つですね。
昔から代々農業をされていて、その周りで過疎が進んでしまったりとか、農業を手放してしまったとか、耕作放棄地ができてしまったというような課題がある中で、農業が存続していく持続可能な姿勢を保つために、すごくいろいろなことにトライされている農家さんなんです。農家が収入を得るための1つの手段として、こういう発電所を作って電気を売って収入を得るということをやってみたというところなんですよ。
8年ほど前に農林水産省が指針を整えた、畑の上に太陽光パネルを設置して発電するソーラーシェアリングの第1号として始めた発電事業者さんで、今日でちょうど8周年になります。かなり老舗のソーラーシェアリングの先駆けの事業者さんですね。それ以外の農家の方やエネルギー関連の方がこちらを見学されたりして、発電所が徐々に広がっていって、みんな電力にも電気を供給してくださっているみたいな感じですかね。
中村: この事業者さんはすごい思いを持った方なのですよ。ただ単にビジネスで電気を売っているのではなくて、農家って炭を作ったり、薪を作ったりエネルギーを作ることをやっていたのが100年前で、それが今、技術の進歩で進化した形がソーラーシェアリングじゃないかということで、地域で頑張っていらっしゃる発電事業者さんなんです。
大谷: こちらは住所でいうと、どちらになりますか?
髙橋: 千葉県の市原市ですね。千葉はソーラーシェアリングや再生可能エネルギーのメッカで、いろいろな発電所があります。敷地内に竹林があってタケノコが生えていたり、その竹を使って竹炭を作ったりとか、ボランティアの方が来てバーベキューをしたり、このエリアだけで電気も作るし農作物も作るし、循環しているんですよ。こういう思いのある約500の発電事業者さんがいて、顔の見える電力として電気を供給していただいているんです。
大谷: 結構、草の根なんですね。
中村: ええ、そうです。みんな電力は草の根ですね。エネルギーが地域分散型で広がっていくのを応援したいなというのが私たちの思いでもあるので、1カ所に大きな発電所がボーンってあってそこから電気を供給するというよりは、その地域でそれぞれ地産地消できるような発電方法が広がっていくといいなあという思いで、住民の皆様がお金を出し合って皆で発電所を作るということですね。
大谷: お話を伺っていると、エシカの読者が好きそうなストーリーだし、ホッコリするようなお話ですね。
髙橋: そういっていただくと嬉しいです。
背景にあるストーリーを知る、その上で自ら消費するものを選ぶ
中村: 自分が毎日使っている電気が、こういういろいろな思いを持った方が作っているんですよ、面白くないですか、とよくお話させていただいています。
大谷: 確かにそれは面白いですね。
髙橋: いまご自宅で契約している電気がどのようにつくられているのかぜひチェックしていただいて、再生可能エネルギーも選択肢として知っていただきたいなと思います。
大谷: 今「ethica」で2つ連載をしていまして、1つはキコさんの連載で、お子さんができた主婦目線でエコなお話を発信しています。もう1つは八ヶ岳で本格的な循環経済を実践している人のお話を連載していて、どちらももちろん読者と合う話題ということでやっているのですが、今のみんな電力さんのお話もこの2つの連載と雰囲気が近くて読者にマッチしているなあという感じがしますね。
髙橋: オフグリッドといって地域の電力会社から電気を買わずに自家発電をして生きていくという人ももちろんいるんですけど、それは難しかったとしても電力会社を変えるだけで電気料金の行先が、先ほどお話ししたような発電事業者さんに届いて、そのお金が農業とか地域の復興や発展に役立つということを知っていただきたいです。
大谷: それはまさにエシカル消費ですね。
髙橋: まさにそうだと思います。このことを知ると、それは素敵だなあとなるので、より納得して電気料金を払っていただけるのではないでしょうか。
これは弊社の特徴の1つなのですが、電気料金の内訳を1円単位で全部開示していまして、みんな電力と契約をしている発電事業者さんに今月いくら届くのかということを公開しています。
自分の買い物が誰の役に立つのか、どの地域に役立っているのかがわかる
大谷: ふるさと納税ではないですけど、自分の買い物が誰の役に立つのか、どの地域に役立っているのかがわかるのっていいですよね。
髙橋: そうですよね。ふるさと納税って、都市にお金が行く分を少し地方に回してという自分の富の分散という側面がありますよね、そういう本質的なこともありますけど、ちょっとした楽しみとしては返礼品がもらえたりということがあって、そこに似ていることとして、みんな電力も今なら選べる発電所が200カ所くらいあって、発電所一覧の中から応援したいところを選ぶことができるんですよ。応援する発電所を選ぶと毎月、みんな電力に払う電気代は変わりませんが、100円を指定した発電所に、電気料金とは別に応援代として届けることができます。それを何か月か続けると、発電事業者さんからミカンジュースが届くなど、新しい交流が生まれます。電気を通じて、発電所のある地域の商品を購入してみるなど、楽しく関係人口が増えていったらいいなと思っているんです。
大谷: 作り手がいるからこそ、この世のものって全て存在して成り立っているということですよね。ただ、電気ってそれが見えにくいので、そこでやられているというところがすごく象徴的な感じがします。
髙橋: 何とか目に見えて実感していただきたいなと思って、こういうことをやらせていただいています。
中村: みんな電力は、まさに日本各地の発電事業者さんから電気を仕入れていて、そこにはきちんとした調達基準があるんです。例えば、大きな環境破壊をしていないか、その地域で訴訟が起きていないか、そういったところをチェックして1カ所1カ所に電気を仕入れさせてくださいとお願いをして、電気を仕入れているんです。
再生可能エネルギーの小売電気事業者って、私が知っているだけでも世の中に60社くらいあって、それぞれが再生可能エネルギー100%の電気を売っているんですけど、実は売っている電気には2種類あります。
1つが実質再生可能エネルギーといういい方をしているもので、うちの電気は再生可能エネルギーですよといって売っているんですけど、非化石証書というカーボンオフセットする証書があって、それを電気の利用分にあてることで再エネっていえるんですね。なので、調達している電気が火力発電とか原子力発電だったとしても、証書を組み合わせることで実質的な再エネと販売することができるんです。
その方法もCO2排出量の削減には貢献しているのですが、皆さんの電気料金の行先は変わらないということになってしまうんです。
髙橋智里 みんな電力 事業本部パーソナル事業部 個人営業チーム チームリーダー
秋田県秋田市出身。2019年7月みんな電力入社。個人のお客さま向けのWEBプロモーションを担当。みんでんカレー部・ねこ部に所属
中村麻季 みんな電力 社長室 広報チーム マネージャー
愛知県豊橋市出身。トヨタ系自動車部品メーカーでCSR活動の企画推進、企業広報を経験。2020年に2人目の広報としてみんな電力に入社。主に広報戦略の立案、メディアリレーション・プロモート、クライシス・コミュニケーションを担当。
聞き手:ethica編集長 大谷賢太郎
あらゆる業種の大手企業に対するマーケティングやデジタルの相談業務を数多く経験後、2012年12月に『一見さんお断り』をモットーとする、クリエイティブ・エージェンシー「株式会社トランスメディア」を創業。2013年9月に投資育成事業として、webマガジン「ethica(エシカ)」をグランドオープン。2017年1月に業務拡大に伴いデジタル・エージェンシー「株式会社トランスメディア・デジタル」を創業。2018年6月に文化事業・映像事業を目的に3社目となる「株式会社トランスメディア・クリエイターズ」を創業。
創業9期目に入り「BRAND STUDIO」事業を牽引、webマガジン『ethica(エシカ)』の運営ノウハウとアセットを軸に、webマガジンの立ち上げや運営支援など、企業の課題解決を図る統合マーケティングサービスを展開。
私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp