ファッションの世界では「サステナブル」「エシカル」が重要なキーワードとして語られるようになった。とはいえ、その前提として、身にまとうものは優しい着心地にこだわりたい。ヨーロッパと日本にルーツを持ち、モデルとして活躍する国木田彩良さんに「やさしい世界を、身に着ける。」をテーマにお話を聞いた。
ーー今回のインタビューのテーマは「やさしい世界を、身に着ける。」。身につけるもの、体に取り入れるものについて、こだわりはありますか?
仕事柄ファッションには興味がありますし、身につけるものは納得のいくものを選びますが、基本的には値段が少し高くても長く使えるいいものを買うようにしています。
高いものがいいということではありません。ただ、ファストファッションも魅力的ではあるものの、素材、デザインが長く着続けられるものではないと感じることもあるな、と。対してハイブランドのものは、普遍的なデザインの美しさがあり、さらに素材や作りもしっかりとしていて長持ちするものが多い。実際、ハイブランドの乗馬用の靴などはもう10年以上大切に履き続けています。古さは感じさせないし、足に馴染んで履きやすい。いいものを選び、使い続けることは、結果サステナブルにつながります。
この考え方は食べるものについても同じ。農薬などを使っていない野菜や果物は少し高いけれど、地球環境に優しいことはもちろん、健康を害する可能性のあるケミカルなものを体に入れずにすむわけですから、私の体にも優しいのではと考えています。消費の在り方を、一人一人が考えて地球にやさしく生きたいですよね。例えばフードロスは、消費しきれずに大量の食品が廃棄されていることが問題です。
それを解決するためには「Buy more」よりも「Buy better」。私たち消費者はもっと考えてものを買うべきだと思います。
ーー美や健康のために、最近取り入れていることは?
コールドプレスジュースに凝っています。鉄分を摂りたいので、ホウレン草を使って。それだけだと少し飲みづらいので、リンゴを加えて甘みをプラス。フレッシュで体がぐんぐんパワーを吸収してる! と感じます。
コールドプレスジュースは野菜や果物を加熱せずにジュースにするので、栄養や酵素が壊れず、健康や美容にも効果があると言われています。市販のものは10ドルぐらいするし、さらにプラスチックの容器を使っているものが多い。専用のジューサーは決して安くはないのですが、いつもできたてのフレッシュなジュースが飲めるし、余計な廃棄物も出ない。長い目で見たら、私にとっても地球にも世界にもイイのです。
ーー便利さや効率ばかりを優先することの是非が問われている、と?
そうですね。そして、まさにそうしたことを痛感した経験があります。数年前にプライベートで訪れたモンゴルの旅。ずっと行ってみたかったので、夢がかなった瞬間でした。
電話もWi−Fiも通っていない、トイレもお風呂もない。彼らは自然の中で原始的な暮らしをしているわけですが、みんなとても幸せそうだった。驚いたのが、人を信用する心。英語が通じないから言葉でのコミュニケーションはできませんでしたが、でも、旅人の私を優しく受け入れてくれました。家にも上げてくれおもてなしもしてくれた。とてもオープンマインドで人間としてステキだなと思いました。そして、その世界に触れたことで、私も人間に戻れたような感覚を覚えたのです。
ーー今回、「やさしい世界を、身に着ける。」がコンセプトの新しい、インナーウェア「ワコール ナチュレクチュール」をプレゼントとしてご用意しました。
ありがとうございます! とてもナチュラルな雰囲気で、見ただけで気持ち良さそう。(実際に触れて)オーガニックコットン100%なんですね。肌触りがしっとりとなめらかなで、デザインもかわいい! 下着は体に直接触れるものですから、つけ心地がよくリラックスできるものが絶対にいい。
下着だけでなく、ファッションの潮流もエフォートレス。コロナの影響で家で過ごす時間が増えていることもあり、心地よく着られて動きやすい服が売れているようです。ストリートウェアもそう。我慢するよりも自分にやさしい服を着たいという人が増えているんですね。
ーーファッションの世界ではさらに、サステナブルやエシカルがキーワードになっています。
私が育ってきた時代は、レザーや毛皮がラグジュアリーとされてきました。でも今はたとえばバナナの皮から作ったレザーが最先端だったりと、時代も考え方も大きく変わっています。Z世代の若い人たちは、多様性もサステナブルもエシカルも「当たり前」の世界に生きている。配慮がないモノやサービスには選ばない、買わない、使わない。そういう方向に向かっていると思います。
でも今の人たちにとっては、幸せや喜びを感じながら生きることこそが成功のイメージなのです。起業する若い人が多いのも、他人のために働くのではなく、自分がうれしい、気持ちいいと感じながら働きたいと考えるからだと思う。
ーー今、そしてこれから。国木田さんにはどんな景色が見えているのでしょうか?
実は私も最近、自分の会社を立ち上げました。コンセプトは「日本とヨーロッパをアートでつなぐ架け橋になる」。昔からやりたかったことなのでワクワクしています。具体的にはラグジュアリーファッションに関するコンテンツや広告制作を手がけていきます。
きっかけはコロナ禍。それまでは忙しすぎて体も心もヘトヘトで、正直、何かを深く考える時間がありませんでした。感染が拡大し色んなものが止まってしまって困惑しましたが、ようやく時間ができた。そして、人のためとか人から褒められたくてではなく、自分の夢のために生きたい、生きようと思い至ったのです。
コロナはネガティブな出来事だけど、私としては考える時間ができたという点ではラッキーだったと前向きにとらえました。パンデミックで「どう生きるか」を考えた人は少なくないと思います。私はメンタルヘルスこそ重要だと気づいた。これからは、その自分の気持ちに正直に、シンプルに。楽しい、うれしいと思える働き方、生き方をしていきたい。そう考えています。
国木田彩良/Saila Kunikida
1993年、イギリス・ロンドン生まれ。フランス・パリで育ち、高校卒業後に服飾の名門スタジオ・ベルソーでファッションの歴史、デザイン、マーケティングを学ぶ。日本人の母とイタリア人の父を持ち、明治時代の小説家・国木田独歩の玄孫にあたる。
自身のルーツである日本に興味を持ち2014年単身来日、モデル活動を開始。2015年、三越伊勢丹の企業広告「this is japan」のイメージビジュアルに登場し注目を集める。国内外のハイファッション誌を中心に活動の傍ら、パリで形成された感性と日本で暮らす中で見えてきたことを発信していこうとSDGsに携わりながら、主にフェミニズムに関するトークショーに参加したり文章書いたりするなど活動の幅を広げている。2021年1月、クリエイティブ・エージェンシー「Nami Creatives」を立ち上げ、クリエイティブ・ディレクターとしても活動。東京とベルリンを拠点に生活。
文・中津海麻子
慶応義塾大学法学部政治学科卒。朝日新聞契約ライター、編集プロダクションなどを経てフリーランスに。人物インタビュー、食、ワイン、日本酒、本、音楽、アンチエイジングなどの取材記事を、新聞、雑誌、ウェブマガジンに寄稿。主な媒体は、朝日新聞、朝日新聞デジタル&w、週刊朝日、AERAムック、ワイン王国、JALカード会員誌AGORA、「ethica(エシカ)~私によくて、世界にイイ。~ 」など。大のワンコ好き。
構成・大谷賢太郎
あらゆる業種の大手企業に対するマーケティングやデジタルの相談業務を数多く経験後、2012年12月に『一見さんお断り』をモットーとする、クリエイティブ・エージェンシー「株式会社トランスメディア」を創業。2013年9月に投資育成事業として、webマガジン「ethica(エシカ)」をグランドオープン。2017年1月に業務拡大に伴いデジタル・エージェンシー「株式会社トランスメディア・デジタル」を創業。2018年6月に文化事業・映像事業を目的に3社目となる「株式会社トランスメディア・クリエイターズ」を創業。
創業9期目に入り「BRAND STUDIO」事業を牽引、webマガジン『ethica(エシカ)』の運営ノウハウとアセットを軸に、webマガジンの立ち上げや運営支援など、企業の課題解決を図る統合マーケティングサービスを展開中。
特集企画連載「やさしい世界を、身に着ける。」
提供:株式会社ワコール
https://bit.ly/3kJalAI
私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp