気候変動の主な原因であるCO2の半分以上は、世界で最も裕福な国や人々のよって排出されてきたものであり、その悪影響の大部分を貧困層や途上国が被っていると言われています。COP26開催期間中、南大西洋の小国「ツバル」の外務大臣が、膝まで海に浸かりながら、温暖化対策の緊急性を訴えました。同国は北半球に比べて3倍以上気候変動の影響を受けやすい為、21世紀末までに沈没する恐れがあり、すでにニュージーランドなどの隣国へ移住した国民も少なくないようです。
Getty Imagesの最新の調査によると、大多数の日本の消費者が、持続可能な社会の実現に向けて、政府や企業も責任を果たすべきと回答しました。少し前では考えられなかった規模の猛暑、水害、火事などの気候変動の影響を、身をもって感じる今、パリ協定で定めた『世界の平均気温上昇を産業革命以前に比べて2℃より低く保ち、1.5℃に抑える』という目標を達成するためには、ちょっとやそっとの消費者の努力では足りず、企業も政府も、未来の生活を守るために至急、対策を進める必要があるという意見が反映されています。
10人に9人の消費者もまた、企業に対して、困っている人、不利な立場におかれている人へのサポートをもっと示してほしいと答えています。前述の通り、気候変動の影響を一番受けるのは、低所得者層や、今発展を続ける国だということはすでに広く理解されていますが、今回のパンデミックにより、環境格差をなくす、最も弱い地域や人々を優先的にサポートしていくことが結果的に社会全体を強くしていくという機運が高まっています。しかしながら、今回の調査では、持続可能な消費や行動の壁として、価格が高すぎる 、情報が不足している、不便で手間がかかりすぎる、他に優先事項がある、一人の行動が解決につながると思えない、といった点も挙がりました。自分のCO2排出量を気にすることは、どの消費者にとっても日常生活の一部でなければならず、どうすれば排出量を減らせるかを明確に理解すること、そして環境格差をなくす事が最優先事項と言えるでしょう。
では、私たちはどのようにしてビジュアルを見る力を鍛え、環境や社会に配慮した行動につなげることができるのでしょうか。Getty Images において、その行動に関するビジュアルを制作する側、そして利用する側、双方の為に作ったチェックポイントをご紹介します。
自分たちのコミュニティを内側から支えている人たちの活動がビジュアル化されているでしょうか?例えば、公園や海岸のゴミ拾い、フードバンク、募金活動、芸術活動やスポーツの指導など、人々が自分たちのスキルや、時間をどのように提供しているのか考えてみましょう。
自国や地元のコミュニティの支援を後押しするビジュアルでしょうか? コロナ禍で、日本の大多数の消費者が、地域社会を支援する方法として、なるべく地元の小規模企業から購入したいと回答しました。 地元で買って、消費すれば二酸化炭素排出量の削減にも有効です。
多様な人々の心の豊かさがビジュアル化されているでしょうか?
コロナ禍 において、消費者は、心の健康を表現するビジュアルに反応することがGetty Imagesの調査でもわかっています。これから先、誠実さ、優しさ、安心、平和、といった価値観をビジュアルで示すことが重要になってきます。
寄稿連載「ビジュアルコミュニケーションから学ぶ」全6回にわたってお届けしてまいります。
遠藤由理
ゲッティイメージズジャパン株式会社 クリエイティブインサイト マネージャー
10代後半からアメリカ、スペイン、チェコ、韓国で過ごす。映画制作とデジタルメディアデザインに重点を置いたビジュアルメディアの学歴を持ち、国際映画や日本映画のプロモーション、セールス、買収、配給などの仕事に従事。 2016年からはゲッティイメージズ、ならびに、iStockのクリエイティブチームのメンバーとして、世界中のクリエイティブプロフェッショナルによる利用データ分析と外部データや事例を調査し、来るニーズの見識を基にCreative Insights(広告ビジュアルにおける動向調査レポート)を発信。意欲的な写真家、ビデオグラファー、イラストレーターをサポートし、インスピレーションに満ちたイメージ作りを目指している。
私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp