(第37話)ひとつのことに向き合う難しさと心地よさ【連載】かぞくの栞(しおり) 暮らしのなかで大切にしたい家族とwell-being
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(第37話)ひとつのことに向き合う難しさと心地よさ【連載】かぞくの栞(しおり)

心身ともに健康で、社会的にも満たされた状態であることを意味する「well-being」。

一人ひとりがwell-beingであることが、社会や環境をより良くしていくことにつながるのだと思います。

では、「私にとって良い状態」ってどういうものなんだろう?

そのヒントは、意外と何気ない日常の中に散りばめられているのかもしれません。

新しく何かを始めるのも大切だけど、まずは身近な人や自分が「ごきげん」でいることから。

家族と過ごすなかで感じる、そんな一瞬一瞬を切り取って、綴っていけたらと思います。

「喫茶喫飯(きっさきっぱん)」について考える

毎日続く家事、子育て、仕事。

やらなくてはいけないことは次から次に現れます。

 

同時進行でいろいろなことを効率よくこなしていけたらいいけれど、そうスムーズにはいかないのが子どもとの暮らし。

さて晩ごはんを作ろうと思ったら「ままー! こっち来てー!」と呼ばれ、洗濯物を干そうとベランダに出たら「持っていくのやりたかったーー!!」と泣かれて洗濯機の前からやり直しです。

 

余裕のあるときはこれでも笑っていられますが、悩みごとができたり、生活が忙しくなるとそうはいかず。

するべきことが気になって「できない」ことに意識が向き、漠然とした不安を感じたり家族にイライラをぶつけてしまったり、ずーっと頭の片隅で何かを考えているような状態に、気持ちの落ち着かなさを感じることも少なくありません。

 

そんな状態にちょっぴり変化を与えてくれたのが、「ひとつのことに集中する」ことでした。

禅語のひとつに「喫茶喫飯(きっさきっぱん)」という言葉があります。

意味としては、「お茶を飲むときは目の前のお茶を飲むことに集中し、ごはんを食べるときは目の前のごはんを食べることに集中しましょう」というもので、無心にひとつの行為をすることの大切さを説いています。

 

当たり前のようなことですが、あれもこれもとやることがある状態のなかで、しっかりと、いまここだけに意識を向けるというのは、思いのほか難しいものです。

 

娘の姿を見ていて思うのは、子どもは本当に、いまこの瞬間を生きているなということ。

 

そんな娘にとって、身近な大人がごきげんにいまここに気持ちを向けているのか、あるいは心ここにあらずなのかは、とても大きく影響していることを感じます。

 

一方で、四六時中向き合うのは難しいのも現実。

ひとつのことだけに集中するのが難しく、すぐ別のことが頭に浮かび落ち着かないことも。

 

あらためて普段の自分の行動を振り返ると、食事をするとき、お風呂に入るとき、娘の相手をするときなど、ついつい片手間で何かをしたり(スマホを見たり……)頭の中で別のことを考えたりしがち。

ひとつのことだけしかしないのは、もったいないという感覚が強くあることを感じました。

 

効率のよさを求めることで得られる時間や気持ちのゆとりがあることも確かで、それぞれのよさを自分にとって心地よいバランスで大切にできたらいいなと思うこのごろです。

今日は、手を洗うときゆっくり隅々まで心を込めて洗ってみる。

今日は、お味噌汁の具を一つひとつ味わってみる。

今日は、娘のペースでお散歩に行く……。

 

いまはこれだけをすると心に決めて、小さなことから一つひとつ、向き合う時間を意識的に持つようになりました。

 

それによって問題や悩みそのものが解決するわけではありませんが、ざわざわしていた心が、いったんスーッと落ち着くように感じます。

 

さまざまな情報を浴び、すべきこと、やりたいことをたくさん抱えて、いまを生きる私たち。

 

目の前のことに集中することは、瞑想の感覚に似ています。

慌ただしい暮らしの中に心の平静を取り戻す機会を、ぜひ取り入れてみてください。

今回の連載は如何でしたでしょうか。バックナンバーはこちらからご覧頂けます。

【連載】かぞくの栞(しおり)

季子(キコ)

一児の母親。高校生のころ「食べたもので体はできている」という言葉と出会い食生活を見直したことで、長い付き合いだったアトピーが大きく改善。その体験をきっかけに食を取り巻く問題へと関心が広がり、大学では環境社会学を専攻する。

産後一年間の育休を経て職場復帰。あわただしい日々のなかでも気軽に取り入れられる、私にとっても家族にとっても、地球にとっても無理のない「いい塩梅」な生き方を模索中。

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

季子(キコ)

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