【ethica編集長対談】電通 グローバル・ビジネス・センター 田中理絵さん(前編)
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【ethica編集長対談】電通 グローバル・ビジネス・センター 田中理絵さん(前編)

田中理絵さん(株式会社電通 グローバル・ビジネス・センター/株式会社電通グループ 電通ジャパンネットワーク サステナビリティ推進オフィス シニア・マネジャー) Photo=Eijiro Toyokura ©TRANSMEDIA Co.,Ltd

グローバルで活躍するサステナビリティのリーダーが集うコミュニティ・イベント「サステナブル・ブランド国際会議2022横浜(SB 2022 YOKOHAMA)」。

ethicaはメディアパートナーとして参加しており、今年も数多くのセミナー、ディスカッション、ワークショップが繰り広げられました。

今回は、基調講演にも登壇した田中理絵氏(株式会社電通 グローバル・ビジネス・センター/株式会社電通グループ 電通ジャパンネットワーク サステナビリティ推進オフィス シニア・マネジャー)に編集部がインタビュー。

電通グループが取り組む3本柱である「デジタル」「グローバル」「サステナビリティ」について、田中さんに「ethica」編集長・大谷賢太郎がお話をお聞きしました。

二つの名刺

大谷: はじめに、田中さんは二つの名刺をお持ちですが、それぞれの会社でどのような部署にいらっしゃるんですか。

田中: いきなりそこに来ますか(笑)。そうですよね、気になりますものね。電通社員で、持ち株会社である電通グループに20%兼務出向しています。

大谷: ということは、ホールディングスと兼務でいらっしゃるということですか?

田中: はい、持株会社の中に、国内電通グループ160社で構成される「電通ジャパンネットワーク(以下DJN)」を統括、支援する、同じ名前ですが「電通ジャパンネットワーク(以下DJN)」という組織があり、その中に「DJNサステナビリティ推進オフィス」ができました。最近は、投資家だけでなくビジネスのパートナー選定においても、電通の社会的な取り組みについて聞かれるようになってきましたし、動きも速い領域なので、現場の業務推進やプロジェクト開発と、コーポレートからのファクト発信を両輪で推進していくことが大きなメリットになってきました。創設時のメンバーは全員、私と同じく兼務出向で、電通Team SDGs(※注1)のメンバーとして、クライアント対応をしながら、サステナビリティに関するDJNの人材育成・ソリューション開発・情報発信を担当します。

大谷: それは大変ですね。その分野に興味がある人でないと兼務はなかなかできないですものね。

(※注1)様々なステークホルダーに対してSDGsに対する情報発信、ソリューションの企画・開発・ビジネス化支援を行っていく社内部署横断チーム。

Photo=Eijiro Toyokura ©TRANSMEDIA Co.,Ltd

田中: 現業でもサステナビリティ関連の仕事をしているメンバーですから、そこまで全く違う仕事というわけでもなくて。たとえば、カーボンニュートラルのプロジェクトリーダーとか、もともとCSRを担当していた人もそれ自体が本業で、面白いのはそこにDE&IやESGやサーキュラーエコノミーという違う分野のリーダーが集まって一緒にコンテンツをつくったり、発信したり。大きな組織になると縦割りになりがちなところを、フラットにできるし、コーポレート部門の方がお客様になるときに、社内推進の大変さも理解してお話できます。

大谷: なるほど。それなら本業にも生かせますね。

田中: 私はグローバル・ビジネス・センターが本所属で、海外のサステナビリティのトレンドも入手しやすいですし、企業のグローバルビジネス支援でも、DJN独自のリサーチやソリューションが期待されます。なので、私が本業でやっていることと、サステナビリティ推進オフィスでやっていることは表裏一体ですね。

大谷: 全体の構成でいいますと、どんな感じになっているのでしょうか?

田中: DJNサステナビリティ推進オフィスの創設メンバーは7人ですが、電通Team SDGsメンバーはDJNで1000人を超える規模です。DJN内でSDGsコンサルタント認定をした人だけでも400人近く。ethicaさんも気を付けていらっしゃると思いますが、SDGsウォッシュ(※注2)が最も危ないので、サステナビリティの知識を持つ人間が増えることは強みになります。電通Team SDGsには専門の表現チェックチームもありますが、さすがに全部の案件は見切れないので、広報やクリエーティブで一次的なチェックができることは安心です。

(※注2)SDGsウォッシュとは、英語で「ごまかし」「粉飾」を表す”whitewash”と「SDGs」を組み合わせた造語で、ヨーロッパで使われ始めている言葉。SDGsという言葉の響きによって、実態以上に「社会のため」「社会課題とのかかわり」を連想させるコミュニケーションを意味する。

潮目はデジタルと一緒に変わった

大谷: 電通さんは単体でいったら世界ナンバーワンの売り上げを誇っている会社さんで、最近はグローバル、サステナビリティにシフトされていらっしゃる。その中で我々がethicaを立ち上げた時もそうだったのですけど、国内には全然情報がないので海外を手本にして始めようとしましたが、ただ、そのままローカライズすると日本では馴染めないので、どうやってアレンジしていくかみたいなことを考えながらやってきました。

たぶん、JSBIランキング(※注3)の中でスターバックスやP&Gなどといったグローバルのお手本になるようなところを電通さんはグローバルネットワークで見ていらっしゃるので、そういう意味で国内の企業さんにもいろいろと情報をお伝えしやすいのかなという感じはしたんですけど。

(※注3)JSBI(ジャパン・サステナブルブランド・インデックス):サステナブルブランド・ジャパンが実施した生活者調査をもとにしたブランド指標のこと

写真提供 Sustainable Brands Japan

田中: 日本企業はCSR(Corporate Social Responsibility=企業が果たすべき社会的責任)をものすごく実直に真面目にやられていますね。ただ日本のニュースリリースは事実を簡潔に書き、あまり主観的な表現をいれないことをよしとする傾向があります。しかし、グローバルでみると、責任者がちゃんと顔をだして、なぜやっているのか、未来へのコミットメントを事実と一緒にストーリーで伝えていかないとサステナビリティに力を入れている企業だと認識されにくいので、まず情報発信の仕方にギャップがあります。日本本社の広報発信を英語にするだけでは弱い、とお伝えすることが増えてきましたね。

私はグローバルに来る前はデジタルマーケティング畑にいたのですが、日本でサステナビリティを本格的にやらなきゃという潮目はデジタルと一緒にやってきたと感じています。デジタルと、グローバルと、サステナは一気に2017年くらいに火がついて、それまでは専門部署で専門の人がやればいいという感じが一気に全社ごと、全事業との関連強化が問われるようになった感じです。ずっと専門部署にいらっしゃる方は、今頃?って思われるでしょうが、やっぱり情報を使いこなせる、共感できるという人のパイがすごく狭かったのが、全部署に関係ある話にまで本格化したのが、ここ数年だと感じています。

大谷: おそらく今のZ世代(※注4)の人たちが企業に入ってくると、そういうカルチャーもいろいろと変えていくんでしょうね。

(※注4)2022年現在、20代前半から10歳前後の間の人が該当し、デジタルネイティブかつSNSネイティブの世代であり、社会課題への関心が高く、社会に貢献したいという意欲が強い。

ブランディングとサステナビリティの関係

大谷: 田中さんは学生時代や社会人になってから外国に行くことも多かったのですか?

田中: いえ、全然。今の部署にくる直前は、消費財メーカーに出向していました。帰国子女のバックグラウンドはないのですが、出向から帰ってきた時だけが異動のチャンスでしたから(笑)3年間電通を離れて、戻ったときに以前のつながりが一切ない誰も知り合いがいない部署で、一からキャリアをリスタートした感じですね。

大谷: ご出向されていた会社のオウンドメディアって、2007年か8年くらいだったと思うんですけど、国内でヤフー以外だったらナンバーワンのアクセスがある有名なところですよね。

田中: はい、専門の人材が集められた「私以外、全員データサイエンティスト」という部署に出向させていただきました。外部から来た私に期待されたことは、特別な人たちだけでなく、みんながデジタルを使える仕組みでした。そこで、いろんな部署・いろんな協業会社の方と試行錯誤していくのが、とても豊かな体験でした。もともとデジタル業界の人って、所属先の大小とか年齢の上下関係があまりないですし、ノウハウの流通スピードも速い、まずやってみようという姿勢がそこで学べました。と同時に、フレームワークの見直しには、外資系の消費財メーカーのブランド運用を一から学ぶことが、ものすごく有用でしたね。

大谷: 元P&Gの方が次々にブランド再建をされてインパクトがあった時期ですよね。

田中: まさに注目が熱かった時期です。デジタルと、グローバルと、サステナビリティを進めるカギは、ブランディングへのスタンスを見直すところからでした。日本ではマーケティングがコミュニケーションの話だと思われがちですけど、そうじゃなくて事業活動そのもので、短期ではなく長期的な投資効果を計算してブランディングをやっていく、そこに企業理念とサステナビリティとのつながり・ストーリーがすごく効いてきますね。

パーパスはCOME TO LIFEにしなきゃ、机の中にしまっておくための言葉ではないと。毎日の生活に息づくような活動に反映させていく、アクティビティとストーリーは一体ですね。

(中編に続く)

 

続きを読む(中編)>>>

 

田中理絵(株式会社電通 電通TeamSDGs SDGsコンサルタント)

通信会社を経て、2006年電通入社。電通総研でワカモンやギャルラボを立ち上げ、ママラボのアジア展開を行ったのち、デジタルマーケティング部門へ。電通デジタルの立ち上げ後すぐに消費財メーカーのデジタルマーケティング部門へ出向。2019年からグローバル・ビジネス・センターと電通Team SDGsのプロジェクトマネジメントオフィス、そして2021年からは電通ジャパンネットワークのサステナビリティ推進オフィスを兼務し、サステナビリティ関連のプロジェクト開発・対外発信を担当。

聞き手:ethica編集長 大谷賢太郎

あらゆる業種の大手企業に対するマーケティングやデジタルの相談業務を数多く経験後、2012年12月に『一見さんお断り』をモットーとする、クリエイティブ・エージェンシー「株式会社トランスメディア」を創業。2013年9月に投資育成事業として、webマガジン「ethica(エシカ)」をグランドオープン。2017年1月に業務拡大に伴いデジタル・エージェンシー「株式会社トランスメディア・デジタル」を創業。2018年6月に文化事業・映像事業を目的に3社目となる「株式会社トランスメディア・クリエイターズ」を創業。

創業10期目に入り「BRAND STUDIO」事業を牽引、webマガジン『ethica(エシカ)』の運営ノウハウとアセットを軸に、webマガジンの立ち上げや運営支援など、企業の課題解決を図る統合マーケティングサービスを展開。

私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp

ethica編集部

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