サラヤと関西・大阪21世紀協会が立ち上げたインクルーシブアート事業の事務局を担う、宮本典子
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サラヤと関西・大阪21世紀協会が立ち上げたインクルーシブアート事業の事務局を担う、宮本典子

シェアオフィス展示イメージ:泉達也「キノコ」

インクルーシブアートという領域でサラヤと協業し、障がい者の方が制作したアートを貸出するレンタルサービスを展開する新事業「art bridge(アート ブリッジ)」の運営事務局を担うオフィス・エヌ代表の宮本典子氏に、これまでの道のり、事業内容についてお話を伺いました。

建築の道から、好きだったアートの世界へ

宮本典子氏は、大阪を拠点に現代アートのアートコーディネートやコンサルティングを行うオフィス・エヌの代表です。彼女は学部・院生時代は建築を専攻しつつも、仕事としてのキャリアは芸術文化からスタートした経歴の持ち主。会社を設立したのは2011年。展覧会の企画・運営からスタートし、現代美術のアートフェア「ART OSAKA」の事務局などを担いつつも、2015年からは大阪府の障がいのある方のアート作品をマーケットに紹介するプロジェクト「capacious」に取り組みます。

正規の指導を受けていない(いわゆる「アウトサイダー・アート」と言われてきたような)アート作品には面白い表現や時に驚きをもたらす作品が多くあり、その魅力に惹かれるようになったのだそう。ですが、良い作品がたくさんある中で、福祉業界の人々にとって美術の業界は畑違いであり、どうやってマーケットと繋がるのかが分からないという現状が課題であることを知り、自分が橋渡しになれるのではと考えるようになったのだと言います。

サラヤとの出会い

そんな彼女と結びついたのが、同じ大阪を拠点とし、健康や福祉にもゆかりのあるサラヤでした。関西の公益財団法人「関西・大阪21世紀協会」と新しい文化事業の立ち上げを模索していたサラヤが、障がい者アートによる事業構想を持ち、オフィス・エヌと繋がりました。そうして生まれたのが、多様な背景をもつアーティストの作品をレンタルすることで障がい者と企業を結び付け、共生社会の実現を目指すという目的を持った「art bridge(アート ブリッジ)」です。

インクルーシブアートを展開する「art bridge(アート ブリッジ)」

インクルーシブアートとは、障がいがあったり、正規の教育を受けていなくとも、誰でも参加できる芸術活動のことを指します。昨今のビジネスシーンでも、年齢や性別、国籍や心身の障がいの有無に関わらず共生していくという意味合いを示す「インクルーシブ」には注目が集まっています。

有田京子 制作風景

アート ブリッジでは、障がいのある方を中心とする多様な背景を持つアーティストの力のあるアート作品を、オフィスや店舗、病院や公共施設といった場所へ貸し出しをすることが中心事業になります。アートの購入となるとハードルが高くなるため、あえて複製した作品を制作し、トライアルしやすい金額で貸し出すことで、借り手のハードルを下げる。そしてンクルーシブアートを身近に置いてもらうことで、その多様な感性に触れ理解を深める機会を提供すると同時に、障がい者の支援という形でSDGsへの取組みが可能になります。そして、レンタル料の25%をアーティストに還元することで、継続的な収入の確保にも繋がり、障がいのある方の自立支援を実現できるという、双方に大きなメリットのある取り組みになります。

有田京子「スフィンクス」

リストに並ぶ作品たちは、現代アートとして魅力的で力のある作品であることが大前提であり、プロによる選別がなされた上で、表現の密度が高い際立った作品が選ばれるのだそうです。インクルーシブアートだから…、障がい者アートだから…、と言うような作品に対しての妥協はなく、作品の質が高く担保されている点がアーティストの方へのリスペクトでもあると感じます。

柴田龍平「1994-2002」

レンタルする作品を選ぶ際は、自分で選定することも、プロによって選定してもらうおまかせプランを選ぶこともできるのだそうで、飾るスペース等を伝えればコーディネートの相談に乗ってもらえるのも嬉しいサービスの一つです。

泉達也「キノコ」

アートをきっかけに、お互いを尊重しあえるインクルーシブな社会の実現に一歩近づけると思うと素敵ですね。その想いを循環させながら、共生社会への一歩を踏み出したいと思います。

取材:神田聖ら(ethica編集部)

宮本典子

1980年茨城県生まれ。京都府立大学環境デザイン学科卒業、筑波大学大学院芸術研究科修了、ヘルシンキ工科大学 IAP 修了 (ロータリー財団奨学生)。建築を専攻しつつ、美術に対する憧れを抱きながら学生生活を送る。少し長い学生生活を送った為、同級生と同じように建築設計の仕事に携わるより、以前より興味のあった美術分野に進み、建築と美術をつなぐ仕事を行う方が面白いのではないかと考え、留学から帰国後、大阪の現代美術ギャラリーで約6年間勤務する。ギャラリーでは展覧会企画・運営を行う他、現代美術のアートフェア「ART OSAKA」の事務局担当業務も行う。2011年独立後、ART OSAKA 事務局業務を引き継ぐ他、2015年~大阪府の障がいのある方のアート作品をマーケットに紹介するプロジェクト「capacious」にも取り組む。近年の主なものに、2019年「Exploring -共通するものからくる芸術のかけら」展(文化庁委託事業) 企画担当。

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ethica編集部

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