ボーイズグループBE:FIRSTが4月24日にリリースしたシングル「Masterplan」は、日本の音楽業界が長らく続けてきたCDに依存したビジネスモデルへ、一石を投じました。「Masterplan」が投げかけた、音楽業界における「新しい当たり前」の種をご紹介します。(記事:エシカちゃん)
音楽業界から無駄と無理をなくしたい
BE:FIRSTの生みの親であるSKY-HIさんは、会社(株式会社BMSG)設立当初から「音楽業界から無駄と無理をなくしたい」と声を上げてきました。
現在のCDビジネスでは、売上枚数が絶対視されるが故に、ファンや聴き手の応援したいという気持ちが商売の道具として搾取される構造が築かれています。
沢山買わせることを意図した戦略は、開封されずに捨てられる大量のCDゴミという無駄と、音楽ビジネスを発展させていくこと、続けていくことへの無理を生み出しました。
応援する気持ちがビジネスの思惑に利用され、捻じ曲げられてしまう音楽業界のあり方は、果たして健全であると言えるのでしょうか?
BE:FIRSTの「Masterplan」が起こしたアクション
BE:FIRSTが4月24日にリリースしたシングル「Masterplan」では、SDGsと音楽ビジネスの視点から、下記のような2つの取り組みが試みられました。
・従来はプラスチックを使用していたCDジャケットを紙のジャケットへ刷新
・CDの複数枚購入の要因の一つとなり得る販売店/販売サイトごとに異なる購入者特典(=法人別特典)を廃止
この2つの試みは、驚くべき成果をもたらします。
1つ目の試み「プラスチックから紙のCDジャケットへ刷新」からは、CD製造段階のプラスチック使用量を約10トン削減するという成果が生まれます。(リリース日〜2024年5月22日まで)
プラスチック使用量「約10トン削減」と言われてもピンとこないかもしれませんが、10トンとはティラノサウルス1頭分、CO2の削減量から考えると、約59トン分のCO2排出量に相当します。これは、スマートフォンのフル充電約1200万回分に当たると言いますから、全く大きな成果です。
もう1つの試みである、「販売店/販売サイトごとに異なる購入者特典を廃止」では、沢山の枚数を買わせる戦略から降りたが故、CDの出荷枚数自体は、約7万枚減りました。
しかしながら、特典に代わって販売したグッズの売上が拡大し、結果としては、作品全体にかかる総売上が、前作比で約2倍へと拡大する成果をあげます。
グッズの売り上げが大きくなるということは、アーティストへの分配が増えるということです。ファンや聴き手は、音楽ビジネスにではなく、音楽、そしてアーティストに声援を送っています。その至極ストレートな繋がりが、今回示されることになりました。
応援したい気持ちが、直接アーティストへ届けられる形に近づいたことは、ファンや聴き手にとってもまた、喜ばしいことです。
新しい当たり前を、共に模索していきませんか?
たった1枚のCDが、こんなにも大きな成果を上げたのですから、この取り組みが100枚、1,000枚と続いていけば・・、それこそ社会が変わっていきます。
音楽ビジネスを変えていくという挑戦は、アーティストを支えているファンや聴き手をも巻き込むことになります。もしも、ファンや聴き手を商売相手としてしか見ていなかったのなら、今回のような取り組みには、到底挑戦することが出来なかったように思います。ファンや聴き手を信じていたからこそ、そして、その想いを理解するファンや聴き手がいたからこそ、大きな、大きな成果に繋がりました。
音楽ビジネスを成り立たせることは必要です。ただ、そこに売上枚数を競い合う方法が適しているのか、どうか・・。新しい音楽ビジネスの形、音楽業界の新しい当たり前を、アーティストと共に、ファンや聴き手も模索していく必要がありそうです。
SKY-HIさんが出した、「音楽業界を持続不可能にしないための提言」
これまでにも、今の音楽ビジネスのあり方に首をかしげていた人は数多くいました。それでも、日本の音楽ビジネスは変わることなく、現在まで続いています。
変えていくことの困難さにたじろぎながらも、新しい一歩を模索し続けていくことでしか、変わることが出来ない現実を知っています。
聴き手として、ファンとして、音楽に希望を灯していくことを「続ける」道を選びたいです。
記者:エシカちゃん
白金出身、青山勤務2年目のZ世代です。流行に敏感で、おいしいものに目がなく、フットワークの軽い今ドキの24歳。そんな彼女の視点から、今一度、さまざまな社会課題に目を向け、その解決に向けた取り組みを理解し、誰もが共感しやすい言葉で、個人と世界のサステナビリティーを提案していこうと思います。
私によくて、世界にイイ。~ ethica(エシカ)~
http://www.ethica.jp